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GO NEXT! -最強魔道士達と最強戦士の珍道中膝栗毛!?

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 彼女の相棒、ガウリイ=ガブリエフ。共に旅を続けてからもう3、4ヶ月である。
 その名を聞くと、盗賊は狼狽し始めた。

「何!!? リナ=インバースだと…!!? まさか…、我らのような盗賊が避けて通れぬ天敵、あの悪名高き最強の"壁女"―」

 それを聞いた途端、リナの顔が急に暗くなり、俯いた。両腕は強く握りしめており、ぶるぶると震えていた。

「か…、"壁女"…? 壁女ですって…?」

 実際彼女の胸は小さく、それに大きなコンプレックスを抱いていた。そのせいで大きなトラウマを抱えるような出来事に何度も遭遇してきた。以来、自分の胸に対して触れると最もキレやすくなっていたのであった。

「どうやら、よっぽどママにすがって泣きたいようね…!! いいわ…、やってやろうじゃないの!!!」

 一度逆鱗に触れたリナはもうだれにも止められない。彼女は頭の真上に両手を上げ、呪文を唱え始めた。

「『黄昏よりも暗き存在、
  血の流れより紅き存在、
  時の流れに埋もれし
  偉大なる汝の名において、
  我今ここに闇に誓わん、
  我等の前に立ち塞がりし
  全ての愚かなるものに
  我と汝の力もて、
  等しく滅びを与えんことを』…!!!」
「ええっ!!? こんなところで!!?」

 リナの両手には徐々に赤い光が大きくなっていった。









 同じころ悟空は空を飛んでいたが、すぐに空気の異変に気付いた。

「ん? なんだ、この強い気は…?」

 悟空はすぐにリナの気を感じ取り、一旦止まった。そして、その気が出ているとされる方向に身体を向けた。

「あっちだな!!」

 先ほどよりもっと速いスピードで駆け付けた。
 悟空が駆け付けて見回すが、何も大した様子は見られなかった。

―あれ…? おっかしいな…? おそらくここなんだけど……ん?

 地上に視線をずらすと、両手に魔力をチャージするリナの姿が目に入った。

―もしかして…!! あの女か…!!

 リナは十分に魔力が溜まったところで、両手を真横に添えた。

「"竜破斬(ドラグ・スレイヴ)"!!!!」

 両手を前に突き出すと、赤いエネルギー波が真っすぐ放たれた。そのままアジトにぶつかり、ドーム状の大爆発を起こした。

「うぉおっ…!!?」

 爆風が強く悟空に押し寄せてくる。それに対して彼は両腕で顔を覆って砂を防いでいる。
 しばらくしてからゆっくりと腕を下した。

「いいいっ!!!?」

 悟空は今の光景を見て驚いた。視線の先には、アジトは一つもなく直径5kmぐらいのクレーターがあるのみであった。穴ぼこから黒煙が黙々と湧き出していた。

―すっげぇ威力だな…!! なんだあのかめはめ波みてぇな技は…!!?

 実際、呪文を唱えるという点を除いては、ほとんどかめはめ波に似ていた。

―気が消えた…。ってぇことは、一気に使い果たしたってことか…。

 一方、リナは貯蔵されていた財宝をかき集め、袋に詰め込んでいた。当然収まりきらずとも、しばらくの間は十分に食費など確保できる量であった。

「おいリナ! そんなに持っていくのか?」

 そんな彼女にガウリイは話しかけた。

「当たり前でしょ? 今懐には何も残ってないし、それに、あんたに耳が腐るほど何度も言ってるけど、悪人には人権なんてこれっぽっちもないの!! こんぐらいあたし達が取っても仕方ないんだから!!」

 『悪人に人権なんてない』…。これが彼女の口癖であり、モットーでもあった。

「いや、そんなに耳は腐ってはないけど…」
「……ああ〜〜っ…!!! このクラゲ頭!!」
「ぐへっ…!!」

 ガウリイはリナに強烈な飛び蹴りを喰らわした。
 彼は剣術については確かに達人並みの実力を持つ。魔術が使えなくとも、それを補えるほどであった。しかし、頭脳はリナ曰く『クラゲ頭』、つまり重度のアホであった。

「ったく…!」

 2人はそのまま次の目的地に旅立とうとした。

「おい、待ってくれ!!」
「ん?」

 2人は呼びかけられたほうに振り向いた。そこには悟空の姿があった。

「い、いつの間に…」
「おめぇが…、あのリナ=インバースってやつか?」
「そうだけど…。あんた、何者?」
「オラ、孫悟空!! さっきからずっとおめぇのこと探してたんだ!! 噂ではめっちゃつえぇ奴らしいからな!!」
「えっ…? そっ、そう…?」
「いやぁ、何だ今の技は? 一発であんなに消し飛んでしまうなんてな!」

―なっ…、何なのこの人…!? 今まで会ってきた中で何だか一番物凄く喜んでるんだけど…!!

 内心焦っていた。むしろ悟空のハイテンションにはまったく追いつけなかった。
 今までリナに会ってきた人達のほとんどは、畏敬の念を払ったり、命乞いをしたりするなど、彼女にとっては好ましくない態度を示すばかりであったからだ。

「てかあいつらが言うほど、そんなわりい気は出てねぇと思うんだけどな…」
「なっ…、どういうことよ!!?」
「いろんなとこでわりい噂ばっか流れてたぞ。なんだっけ? …『いいことばっかしてオラ達を欺いていて、実際には世界を滅ぼそうとしている』とか…、『おでこに触覚が生えていて蠅を捕食する』とか…」
「何ですってぇっ!!!?」

 リナはまた、堪忍袋の緒が切れそうだった。

「ははははは!!! お前やっぱそうとう―」
「笑うな!!!」
「すいません…」

 それを聞いて大笑いするガウリイに一喝した。すると180cmを超えるほどの長身かつ5歳も年上である彼は、150cmにも満たないリナに頭を下げて謝るという、保護者としては情けない行動をとったのであった。

「それで…、このあたしに何か用でもあるというの?」

 リナは腕を組み、悟空に問いかけた。

「ああ、…できればおめぇの力はどんなにつえぇか、この体で感じてぇんだ」
「「はぁぁぁっ!!!?」」

 2人は反射的に驚きの音を上げた。自ら宣戦布告してくる人間に会うのも初めてだった。

「あんた…、今自分がなんて言ったかわかってんの!!? そんなの、ひ弱な草食動物がライオンに自ら身を捧げてることと同じようなもんよ!!?」
「おい、草食動物のみんなに大変失礼じゃねぇか」
「ほっとけぃ!!!」

 自分のつっこみにさらにつっこみを入れられたリナは、悟空の態度は挑戦的に感じられた。

―何なのこの好戦的な人は…? でも…、あまり大した力がない奴が…、このあたし、天才美少女魔道士リナ=インバースに無謀な挑戦状を突きつけてくるとは、言語道断よ!!!

 プライドに傷をつけようとする人はどうしても許せなかった。彼女はいつもそうであった。自分の悪口をいう者はどうしても見逃せなかった。
 徐々に、悟空を懲らしめてやろうという気持ちになっていたのであった。しかし、まだ知らない。悟空には魔力が使えない代わりに、気力をコントロールできるということを。

「…いいわよ!!」
「ええっ!!? お…、おいリナ…。こんな奴をわざわざ相手にすんのか?」

 ガウリイはリナにややあきれた様子で訊いた。