魔法少女リリカルウィッチーズvol.3
「落ち着いて聞いてください。先程リィン空曹長から……八神部隊長が、ネウロイに拐われたという報告がありました」
「えっ!?」
「な…に…?」
「嘘…」
隊長陣は突然の出来事に言葉を失う。
「何だよ、それ…。おい、レーダーの誤動作じゃねぇのか!」
「私たちも、最初はそうだと思っていました。ですが、いつまで経ってもレーダーは回復せず、そこへ同行していたリィン空曹長からの連絡が入って…」
「でも、ネウロイはどうやってはやてを拐ったの?そう簡単にはやてがやられるはずはないと思うんだけど…」
「それが、その大型ネウロイは姿を消せるらしく…不意を突かれてしまったそうです」
「姿を消せるネウロイか…。最初から主はやてを狙っていたと見るべきだろうな」
「ロングアーチ、私達はそのネウロイを追います」
なのはが告げる。
「了解。よろしくお願いします」
「それからリィンをこっちに呼んでくれ」
「了解しました」
管制官はなのは達に今現在のはやてを拐った大型ネウロイの場所を伝える。その後、リィンが合流して隊長陣ははやて救出へと向かう。
スバル達フォワード陣は陸戦型ネウロイを次々に撃滅し、概ね順調に首都へと歩を進めていた。
「航空隊が敵の空戦型を惹き付けてくれているおかげで戦いやすいですね」
一人の管理局の武装隊隊長が言う。
「はい。ですが、油断は禁物です。相手はネウロイ。何を仕掛けてくるかわから…」
言いかけたティアナが、はっと上空を見上げる。他の管理局員も同じようにそれを見上げた。
「ティアナさん、あれは…」
フリードリヒに乗って上空を哨戒していたエリオがティアナに通信を入れる。
「ネウロイね。けど、一機だけなんて…」
不審に思うティアナ。しかし、そのネウロイはやけに大きい。
「偵察機でしょうか?それにしてはサイズが…」
エリオが言いかける。すると大型ネウロイ後部のハッチのようなものが開き、中から小型の陸戦型ネウロイが降下してきた。
「こちら坂本だ。応答願う」
その時、美緒から通信が入る。
「こちらスターズ4。どうぞ」
「済まない。輸送機型ネウロイを一機取り逃がした」
「今しがたこちらに来ました。他に敵の増援はありますか?」
「いや、他にはない。取り逃がしたのはそいつだけだ」
「了解しました。こちらは陸戦型ネウロイの掃討に入ります」
「こちらのミスで済まないな。武運を祈る」
通信を終えるとティアナは即座にフォワード陣に指示を送る。しかし、他の地上部隊はそうもいっていなかった。何せ今回の敵は30機と先の二倍。その上奇襲に近い形のため、指揮系統が若干混乱ぎみだ。その混乱を突いてネウロイは地上部隊を攻撃していく。
「このままじゃマズいわ…。スバルはそのまま敵の侵攻を食い止めて。その間にエリオは特に苦戦している他の班の援護、キャロはスバルとエリオの補助をお願い」
ティアナは三人に指示を送るとルーテシアを見る。
「ルーテシア。あなた今、召喚魔法は使えるの?」
ティアナの問いに頷き返すルーテシア。
「ただ、究極召喚は使えない…」
「十分よ。地雷王を召喚してもらえる?」
「了解」
ティアナに言われ、ルーテシアは地雷王を数匹召喚する。
「地雷王の持つ重力操作の魔法なら、ネウロイを押さえ付けることも十分に可能なはず。ルーテシア、お願い」
「うん」
ルーテシアの指示で地雷王は重力魔法を使ってネウロイを上方から押さえ付ける。ミシミシと悲鳴を上げながらネウロイは地面に押さえつけられていく。そして、遂には行動出来なくなった。
「狙い通りね。スバル、アンタはエリオとキャロを連れて残ってるネウロイの掃討をお願い。私達は他の管理局員と一緒に動けなくなったネウロイの対処にあたるわ」
「了解!」
五人はそれぞれ行動を開始する。
爆撃機、輸送機隊を撃破した坂本班はミーナ班と合流すべく、合流地点へ向かおうとしていた。
「まずいな…」
「シャーリー、どうした?」
「残りの弾薬が少ない。それに燃料も心配だ」
ここまで想定以上の激戦になったため、補給が必要な程度に損耗していた。
「そうだな…。この近くに補給基地がある。そこへ向かおう」
そう言うと美緒はミーナへ通信を入れる。
「少佐、どうしたの?」
「我々は一旦補給のためにヘロン基地へ立ち寄る」
「了解。こちらも陸士部隊を送り次第、向かうわ」
「了解した」
通信を終えると坂本班はヘロン基地へと向かう。
基地へ到着すると坂本班の面々はそれぞれ弾薬・燃料等を補給する。また、簡単なメンテナンスも行う。
それらをしている最中にミーナ班もやってきた。彼女らもまた、補給を受ける。
「後はクラナガンを目指すだけだな」
「ええ、そうね」
「そうだ、なのは達はどうしてるのかな?」
美緒とミーナが会話していたところへエーリカが加わってそう訊いた。
「さっき通信を入れたら、ネウロイに拐われた八神さんを救出に向かうと言っていたわ」
「何?八神がネウロイに拐われたのか」
「そうらしいの」
「それってもしかしなくてもピンチだよね」
「ええ。けれど、人を拐うネウロイなんて…」
「スオムスに続いて2例目か…」
「けど、どうして拐ったんだろ?」
「そうね。スオムスの時は自分達の戦力にしていたみたいだけれど…」
「まさか…それが狙いではないか?八神の持つ魔力量は莫大だと聞いた。それに多種多様な魔法攻撃も出来るそうだ」
「……かなりヤバイんじゃない?」
「フォワードの隊長達が向かってくれているわけだけど、不安もあるわね」
「今は信じて待つよりないだろう。地上部隊にはこの事は?」
「まだ伝えてはいないそうよ。混乱を避けるためらしいわ」
美緒の問いかけにミーナが答えると整備員から補給完了の報せが入る。
「了解。ストライクウィッチーズ、首都へ向けて出立します!」
ミーナの号令でウィッチーズは再び大空へ飛び立った。
15分ほど前。
陸士108部隊は無事、管理局の本隊と合流を果たした。
「ナカジマ三佐、お疲れさまです」
敬礼をして、管理局地上部隊本隊の指揮官が声をかける。
「おう、御苦労。こっちの戦況はどうなっている?」
その指揮官にゲンヤは訊く。
「敵ネウロイの先鋒隊から第三陣までを撃退し終えたところです。ただネウロイの攻撃で予想以上に部隊の消耗が激しく、このままでは下手をすれば…」
「そうか、わかった。負傷した隊員は一旦全員下げろ。出来るだけ回復するんだ。その間はうちの隊員を主に前線に回す」
皆まで言わせずゲンヤは指示を送る。指揮官は了解と返すと指示通りに伝達を行った。
「ギン姉、また一緒に戦えるね!」
「ふふ、そうね。ここからは私達が先陣を切るわよ」
「うん!」
スバルとギンガの会話を聞いていたティアナは再び考えを巡らせる。
『スバルとギンガさんのツートップのおかげで、エリオをより自由に動かせる…。それにルーテシアの地雷王のお陰で陸戦型ネウロイも格段に仕留めやすくなった。……順調すぎて怖いくらいね』
「ティア、難しい顔してるけど大丈夫?」
スバルが心配げに訊く。
「何でもないわ。ちょっと考え事してただけ」
「そう?なら良いけど」
「エリオ君、何か見える?」
キャロがフリードリヒに乗って上空哨戒しているエリオに訊く。
作品名:魔法少女リリカルウィッチーズvol.3 作家名:Dakuto