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ベン・トー~if story~ vol.1

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3部 部室での日々


それからまたしばらくの時が過ぎた。俺はすっかりHP同好会に馴染み、今日も今日とて部室へと足を運ぶ。
今日も部室には先輩の姿があった。
軽い挨拶を交わしていつものように椅子に座る。
「すっかりここに居着くようになったな」
「前にも言いましたけどここ、居心地いいですからね」
「ふふ、そうか」
俺は先輩と他愛もない会話をして過ごす。佐藤達が来るまでの、俺にとっての貴重で幸福な時間だ。

「先輩、オセロしませんか?」
「いいだろう。だが、今日こそ圧勝させてもらうぞ」
俺がオセロ盤を取り出しながら訊くと、先輩はニヤリとしながら答えてきた。

それから数時間。夕方になる。
「……佐藤と白粉、来ませんね?」
そう。夕方になったというのにHP同好会の後輩二人は揃って顔を見せていないのだ。
「今日は二人は来ない。今日は別の部活の見学に行っているからな」
「え、そうなんですか?」
「あぁ。猟犬群の所だ」
猟犬群…?初めて耳にする単語に俺は首を傾げる。
「うちの学校の国語教師、壇堂健治が組織している剣道部の生徒による集団だ」
「でも、今更どうして佐藤達がそこへ?」
「その猟犬群のリーダー格の男、山原に声をかけられたそうだ」
それで見学だけでも、か…。なるほどね。
「じゃあ、私はそろそろ行くぞ」
「あ、はい。先輩、また明日」
「ああ、またな」
そう言って先輩は部室を出て行った。

次の日。放課後になると俺は、いつものように部室へと向かう。
今日も先輩と二人、トランプなどして過ごす。そして今日も佐藤達が来ることはなかった。そんな日が数日続いたある日。
いつものように先輩は夕方になるとスーパーへ出向いていった。それを見送ってから少し部室で椅子に座りながらボーッとしていた。

「……ん…」
俺はどうやら寝てしまっていたらしい。目を開けると部室は真っ暗だった。
「え、先輩…?」
見ると、目の前に先輩がいた。どうやら今日の戦利品が入っているらしいレジ袋を机の上に置いて、それをまだ食べずに、じっと椅子に座っていた。
「起きたか」
「はい。それが、今日の戦利品ですか?」
「そうだ」
言いながら先輩は弁当を取り出すと備え付けのレンジに入れて温め始める。程なくして温め終えるとレンジから弁当を取り出して机まで持ってきて座る。
「…?」
弁当の蓋に付いた半額シールを見て、俺はふと疑問を抱いた。
「先輩、そのシールって…」
「ん?あぁ、これは月桂冠というんだ」
「月桂冠?」
「そうだ。このシールの付いた弁当は、その店の半額神が自信を持って薦める商品で、これを手にした者はそのフィールドにおいて絶対的勝者になれるんだ」
「つまり…この月桂冠が付いている弁当は特別美味いってことですか?」
「そういうことだ」
説明を終えると先輩は「いただきます」と言って弁当を食べ始める。
俺はそれを見ている。と、グゥ~……とお腹が鳴った。
「一口、食べてみるか?」
「良いんですか?えと、じゃあお言葉に甘えて…」
それを聞いた先輩は、おかずを一口大に割り箸で割くと、それを持って俺の口の前まで運んできた。
「ほら、あーん」
「あ…は、はい。あーん…」
正直、あーんは少し恥ずかしかった。でも、先輩だし嬉しくもあった。そして口に入ってきたおかずを噛み締める。
「もぐもぐ…」
「どうだ?」
「…!すごく、美味しいです…」
これが月桂冠と呼ばれる弁当の味なのか、と心の中で強く思った。そのくらい美味しかったのだ。
「そうだろう」
「こんなに美味しいものを食べれるなんて、そりゃ半額弁当争奪戦に熱も入りますよね」
「ああ。それに、自分で苦労して手にした弁当の味は何にも代えがたいものがあるぞ」
そう話す先輩はどこか楽しそうで、本当にこの戦いが楽しくてしょうがないんだなと改めて思わされた。

そうして先輩の食事が終わると、俺と先輩は揃って部室を出る。そして玄関へと向かう。
靴を履き替え、校門前までくる。
「じゃあ、藤島。また明日」
「はい、また明日」
そう言って俺は先輩と別れた。

晩飯は、家に帰ってから食べた。俺は実家通いだから用意しておいてもらえるのだ。その日は風呂に入るなどしてから眠った。

翌日の放課後は佐藤達もやってきた。ただ、佐藤はずっと何事かを考えているようだった。そのうちあいつは一人で猟犬群の所へ行くようになっていた。白粉はというと、何かぶつぶつ呟きながらノートパソコンに向かっている。もう猟犬群には飽きたのだろうか。

さらに数日立つと、佐藤がバーチャファイターの二つ名がどうのと話し始め、何か吹っ切れたように猟犬群の所へ向かっていった。
「何かあったんですか?」
「さぁな」
先輩に聞いても何となくはぐらかされた。が、先輩はどこか嬉しそうな表情だった。それを問い質してもやはりはぐらかされた。

その翌日。佐藤はHP同好会に復帰することとなった。昨日、やはり何かあったようだった。
「結局、何があったんだ?」
「ん?あぁ、やっぱり俺にはこっちの方が合ってるって気付いただけだよ」
佐藤に訊くと、そう答えてきた。俺には何のことかよく解らなかったが、
「ようやく狼らしくなってきたな」
先輩が、佐藤にそう話しかけていた。

作品名:ベン・トー~if story~ vol.1 作家名:Dakuto