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気まぐれ天使の異世界記録

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 治安の良いことはとても良い事なんだけど、不謹慎な言い方だが正直オレからしたら悪い方が良かったよ…。でも生きるためなんだから仕方ないんだよ。

 さて、若干怪しまれてしまうであろう程にはポケットを膨らませ店を出る。


 しかしいくら慣れていると言ってもやっぱり悪い事をしていると気持ちが落ち着かない。
 店の外に出れたからか心拍数の上がった心臓が落ち着くにつれ気分も次第に落ち着いていく。

 が、この時油断したのがいけなかったんだろう。

 店を出てすぐ近くの何も無い所で躓いてしまい物がいっぱいに詰まったポケットから携帯食料が1つ落ちてしまう。
 慌てて拾いポケットに戻すが、敏感なこの身体が1つの視線によって見られていることを教えてくれる。―――しくじった!!

 ゆっくりドア越しに視線の先の、店の店員の方を見てみる。するとお互いの眼が合う。

 オレは固まり、店員は携帯のボタンを3回プッシュすると何処かに電話し始めた。


 ―――ふぅ…。さて、逃げるか。

 さぁ、人生を賭けた鬼ごっこの始まりだ。





  ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆





 今オレの後ろには日本の治安を支えてる警察官様が走ってきていらっしゃる。

 つかこの人面倒臭い。いや、職業が職業だし当たり前なんだろうけどここまで仕事熱心なのはこっちが辛いんだけど。


「……っ!………!!」


 なんか後ろで叫んでるけど顔が真っ赤だしどうせ碌でもないことを叫んでいるんだろう。正直、風の音で聞こえない。
 でもゴメンねー。こっちにも事情って物があるのよ。立場的にも身体的な意味でも。


「ふっ、ふっ、ふっ……。…そろそろ暇つぶしにもなったし、撒くかな」


 腹も減ったし偶にはこんな運動も良いかもしれない。

 オレは敢えて行き止まりの路地に入る。
 たしかこっちに曲がったら行き止まりだったはず。

 後ろを見てみると警察官がニヤリとした笑みを浮かべていた。恐らくこの警察官もこの辺の地理に詳しいのだろう。

 でもそういう人に限って予想外の出来事に面白い反応をするんだよなー。最後に少し遊んで終わるか。

 オレはそのまま走って行くと予想通り行き止まりだった。
 そして走るのを止め、暫く待つと警察官が漸く追いついてくる。


「はぁ…はぁ……。残、念だっ、たな。ふぅ…。見てのとおり、この道は行き止まりだ、ぁ……。…もうこれで逃げられんぞ…」


 オレの後ろには高さ2~3m程の塀があって、道は軽自動車二台分ぐらいの幅しかない。この状況では|普通は(・・・)詰んでしまっているのであろう。

 それにしてもこの警察官、汗だくで息が絶え絶えである。


「うーん、そうですね。確かに行き止まりですねぇ…」


 オレがそう言うと警察官はもう終わったという顔でノロノロとした……というか脚が痙攣を起こしているから脱水症状か脚が攣ったのだろう動きで此方に近寄ってくる。


「でもまぁ、元々逃げ切るつもりで此処に来たんですから別にいいんですけどね」

「何を……?」


 警察官が何を言っているといいたそうな顔で見てくる。
 オレは後ろを向き、脚に力を入れ2~3mの|塀の上(・・・)に跳び移る。

 もう一度塀の上から警察官を見下ろすと警察官はポカンと口を開けて信じられないものを見たような目で見ている。


「あっはっはっはっは!いやぁー、その反応が見たかったんですよ。まぁ、残念だったのは貴方だったということで、さようならです!」


 最後にそう言って塀の向こう側に降りようとするも真下がゴミ捨て場だったので慌てて道路に向かって軌道修正する。
 ぅおおっと……、危なかった。気づかずに降りてたらこの小さい身体がゴミん中に埋もれるところだった…。

 最後の最後が締まらないな……。
 空中に浮いているときそう思っていると、さっきまで聞こえなかったブロロロロとした音が聞こえた。

 身体が道路に出てもうすぐ着地しそうな時にその音の方を見てみると、スピードを出したトラックがこっちに向かって走ってきていた。


「―――――ぇ」


 ―――あ、無理だ、と思った瞬間。ドンッ!と音を立てながら自分の身体が頭から撥ね飛ばされる。





 あ、そういえばまだ皆さんに言い忘れてたことがありました。


 オレ、人間じゃなくて天使(?)らしいです。それも身体だけじゃなくて魂レベルから。



 撥ね飛ばされた衝撃で身体が地面にかなり引き摺ってからゴロゴロと何回転も転がってから漸く止まる。


「―――――ぅグ、ゴホッゲホッ、ォオェッ!!」

 込み上げてくる嘔吐感に身を任せ、その場で血反吐を吐く。


「ッ痛!…あー……、滅茶苦茶いでぇーー……」


 身体に走るとんでもなく痛みを我慢しながら立ってあたりを見回す。どうやら近くにいた人はいないようだ。


「って、うわぁ……。これはグロい…」


 事故の惨事を見ると、オレは思わず身体の痛みを一瞬忘れて率直な感想を口に出していた。

 だってトラックと衝突したであろう場所には熟れたトマトを思いっきり地面に投げつけたような飛び散った血の跡に、そこから5m程一直線に引かれた血の道の先にまた小さな血の池が1箇所。そして頭と鼻から血が出て右半身は引き摺ったせいで服も腕もズタボロで中身はもっと酷い事になっている半死人が1人。これをグロいと言わずして何と言う?

 ……しかし事故の惨事を見ている場合ではなく早くいつもの寝床に行こう。さっきの警察官が来ないとは限らないしこれは放っておこう…。





  ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆





 ところでさっきまで言い忘れてたオレは天使云々の話についてだが。
 先に言ったようにオレは神様によってこの世界に来たというのは覚えてるよね?
 それとオレが後天性色素欠乏症になる切欠の『力の盤』というよく分からない物をオレの魂に混ぜた・・・というのも言ったよな。

 この『力の盤』なるものは一部の神様達が"力"を持て余すことの無いように皆で暇つぶしに『力の盤』にその余った"力"を注いでいたらしい。それも永い年月も。


 では、その永い年月をかけて神様(・・)が"力"を注いだ物の破片がオレの魂と混ざっている。詰まるところこれの意味することは?

 答えは無双!……になるのだが、そのままでは人間の身体が一瞬にして壊れるみたいだからそうにはならない。
 そこでオレを跳ばした神様は考えた訳だ。

 天使の肉体にすればそう簡単には壊れまい、と。


 以上がオレが神様から引き出した情報から推察した結果だ。一応一通り筋は通っていると思う。この引き出した情報の中に虚偽が混ざっていなければだけど。
 故にオレは人間の肉体ではなく天使の肉体で、トラック程度に撥ねられても死にはしないよという訳だ。

 オレからすればもうこれ以上勝手に人の人生を弄くるなっていう話なんだがな。


 …実は以前、この世界に来たばっかりの頃にも一度これくらいの怪我をしたんだ。