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たとえばこんな間桐の話

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「ごめんね桜ちゃん!!何か色々酷い事言っちゃって!!蟲に食わせるとかぜってーさせねー!!チクショーあんな事言いたくなかったのにぃー!!」
「ううん、大丈夫だよ、おじさん」
 抱き締めてすりすりしてくる雁夜に、頬を染めながら、楽しそうに桜が言う。
 擦り合わされるほっぺたがくすぐったいが、幸せだ。
「しかし濃厚だったなー。体液交換は、魔術師なら普通に受け入れられる魔力供給の方法とは言うけど……」
「モロ見せられるとか親としては耐えられないだろうなー。しかも、魔術師としても育てる気無い上使い捨てのひでー扱い確定の間桐ですよ、と」
「あそこまで煽れば流石に動きますよね。狙い通り間桐邸焼き尽くして下さった様ですし」
 画面には、一般人が撮影したらしい火柱を上げる某屋敷が映し出されている。そのテレビの前では茶など啜りつつ、間桐の面々がのんびりと。
 そしてその傍らには、雁夜の知り合いの魔術師達と、関係者達が居た。
「……貴様等は鬼か」
「鬼よ。決まってるじゃないの、ケイネス」
「……ノーコメントで」
「……父親としては……何て言うか、こう……」
「でも蟲漬けになる所だったのよ?切嗣。それに比べれば軽いなんてものじゃないわ」
「本人が良いと言っているのだから良いのでしょう。あ、このお菓子は実に美味ですね」
「セイバー、食べかすがついてますよ」
 ケイネス・エルメロイ・アーチボルトを初めとするランサー陣営と、衛宮切嗣含めたセイバー陣営だ。
 更に。
「それは雁夜君お勧めのお菓子なのよ。気に入ってくれて、私も嬉しいわ」
 にこにことセイバーに答えるのは、遠坂葵だ。
 一同が集まるこの場所は、禅城家の客間。葵の実家である。
「葵さん、大人数で押し掛けちゃってごめんね」
「いいえ。久し振りに桜に会えて嬉しいわ」
 にっこりと笑い合う雁夜と葵。
 因みに時臣へのビデオレターの内容はこの場に居る全員が知っている。と言うか、アレを撮ったのもこの場所だし、台本を練ったのもこの場の面子である。
 葵など、間桐の実情やら何やらを雁夜から聞いて、一歩間違えればその台本通りになっていたかもしれない事を知って、場所提供や必要経費等、諸々全面的に協力した。その内容にどういう事なの時臣ィ……とか呟きつつ禍々しいオーラを纏い、凛を怯えさせたりしたのはご愛嬌である。
 その凛は、今頃自室のベッドで夢の中だ。色々と疲れているのだ、きっと。母親に怯えて夢の中に逃げた訳ではない、多分。
「でもあれで蟲爺死ぬかー?って、あ!!これから毎日蟲倉焼こうぜが出来ないっ!?」
「普通に焼いても意味無いから遠坂使おうって話になったんだろ。でも家焼けたけどどーすんの?別に僕は余生のつもりだしこの辺で死んでも構わないけど」
「構えよ息子ぉぉ!!お前死んだら私も死ぬからなぁ!?」
「冗談だよ」
「なんつー話してんだよ兄貴も慎二君も!!」
「行く所が無いなら、うちにいてくれても構わないわ!!」
 時臣に文句は言わせない!!と何やら燃えている葵。
 多分時臣と再会した時は修羅場だろう。
「それにしても桜、お前最初おじさま呼びしてたのに、結局おじさん呼びになっちゃったな」
「あう……」
 話をビデオレターの内容に戻した慎二の言葉に桜が呻く。人形っぽくな!!との指示には従っていたものの、最中には度々忘れてしまっていた。
「まぁ仕方ないけどなー」
 苦笑しながら桜の頭を撫でる。寧ろ途中の遠坂へ向けた台詞が、台本通りに、発音の面からしてもしっかりしていたのが驚きだった。兄より優れた妹が存在しないというのは嘘だろうと、そう思う。
「でも演技うまかったよなー。最初の無表情とか!!その後なんかエロくなるのが生々しくてイイ!!私の娘は最高なんだ!!」
「お、お父さん!!」
 はしゃぐ鶴野の言葉に、桜が頬を染める。なんか恥ずかしい。でも嬉しい気もして、わたわたする。
「あ、桜ちゃん照れてる?可愛いなぁ」
 そしてその様子に雁夜が頬を緩める。のほほんと言ってはいるが、当事者である。周りから向けられるのは、呆れを多大に含んだ半目のジト目が殆どだ。
「ていうかおじさんも結構ノリノリだったよね。べろちゅーとかしてさー」
「え、いやだって、桜ちゃんの初めては俺が貰ったんだし、何かすっごいの求められてるみたいだったし、いいかなぁって」
 その発言に、間桐を除いた一同が固まった。
 だが間桐である慎二は平然と、
「ああ、ファーストキスの話だよね。蟲入れて調整する時に桜がかわいそうだからって」
「こんなおじさんでも、蟲よりはマシだからねえ。間桐に馴染む為には、俺の魔力渡して慣らしてからの方が良いと思ったし」
 でもやっぱり嫌だったかな、ごめんね、としょんぼりしながら雁夜が謝る。桜はその言葉にぶんぶん頭を振った。
「おじさんから手を出してくれて、嬉しかったよ!?」
「桜ちゃん……」
 ぎゅうっ、と手を握りながらそう言う桜に何やら感激している雁夜。しかし一同にとっては突っ込み所しか無かった。
「ほんと、手ぇ出したのそれ一回だったもんなぁ」
 鶴野が苦笑と共に言う。え、それ手を出したって言うんですか……そんな困惑した空気が満ちたが、間桐の面々は気にしない。
 そしてもう一人、気にするとか気にしないとかを飛び越えて、
「まぁまぁ、桜が女の顔に!!雁夜君、責任取ってね!!」
 実の母親である葵が嬉々としてそう言ってきた。
 雁夜はその発言に逡巡する。
 実際の所、体液交換の様子を見せ付けるなんていうあの内容には、雁夜は乗り気では無かったのだ。
 だって桜ちゃん大切だからね!!でも桜ちゃんの為になるっていうなら……あの爺の脅威を取り除けるというのなら!!
 と、そんな具合で吹っ切って、結局あの内容になった訳だが。
 一度吹っ切ると雁夜はどうしようもなく突っ走る人間であり、精神的にも少々壊れ気味という事もあって、際限が無くなる。
 それと同時に、やたらと強固な覚悟を持つ人間だった。例えば、そう。
「……桜ちゃんがそれで良いなら。俺を選んでくれるなら、俺は桜ちゃんの為に生きるよ」
「おじさん……桜、嬉しい!!」
 ……幼女に本気でこんな事を宣言し、誓ってしまう程度には。
「まぁ、こんな場面が見られるなんて!!素敵ね、切嗣!!」
「………あ、あぁ、うん………そうだね、アイリ………」
「すいません、この菓子のおかわりはありますか?」
「貴女はぶれませんね……」
「………雁夜………それは犯罪ではないのかね?」
「あら、良いのではなくて?両思いの様だし」
「………ノーコメントで」
「カオスってるなー。取り敢えず私の娘と弟マジ天使!!」
「親父は恥ずかしいオッサンだけどな」
「私の息子辛辣!!」
 そんなどうしようもないカオスを内包する禅城家は、いつまでも賑やかだった。




 その頃、マッケンジー夫妻の家では。
「……隠蔽大変だな、これ」
「はっはっはっ!!実に豪快よのう!!」
 凡その事情を知るウェイバー・ベルベットとそのサーヴァント、征服王イスカンダルが、ニュース画面を眺めながら、各々らしい感想を零していた。