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とある魔術の絶対重力‐ブラックホール-

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美琴は少し残念そうな顔をしたがすぐに笑って初春を|労《ねぎら》う。
「そっか、載ってないか。 わざわざごめんねこんなこと調べさせちゃって」
「いえいえ、こんなことぐらいお安いご用ですよ」
二人の会話の最中、白井は美琴が写真を見れなかったことに逆にホッとしていた。
(お姉さまのことですし、写真があれば相手を見つけて戦うに決まっていますの。 今回ばかりは|書庫《バンク》のデータに写真が載っていなくて助かりましたわ)
とりあえず、相手の名前と能力は分かったがそれ以上の成果は無かった。そして、午後にやることもまた無くなってしまったのだった。
「それにしてもまた、やることが無くなっちゃったわね、これからどうする黒子」
「そうですわね、どうしましょうか」
と悩む二人に佐天が声をかけた。
「御坂さんと白井さんこれから暇なんですか? あたしと初春はこれから何かキャンペーンやってるっていう新しいクレープ屋に行くつもりなんですけど一緒にどうですか?」
そう言って佐天はそのクレープ屋のチラシを見せた。
「えーと、なになに、クレープ屋らぶるん第7学区ふれあい広場NEW OPEN先着100名様にゲコ太紳士Verマスコットプレゼント、こんなことをやっているんですの。 せっかくですから行ってみませんお姉さま? ってお姉さま? どうしたんですのぼんやりしたりして」
美琴の目はチラシにくぎ付けになっていた。
「えっ何、なんか言った黒子?」
白井は視線をもう一度チラシに戻し、読みなおす。
「いえ、お姉さまがずいぶん熱心にチラシを読んでいるものですから、お姉さまはクレープ屋さんにご興味が?それとももれなくついてくるプレゼントの方ですの?」
すると美琴は顔を赤くして否定する。
「わ、私はそうクレープに興味があるのよ。 ゲコ太になんて興味ないんだから、だってカエルよ両生類よどこの世界にこんなものもらって喜ぶ女の子が・・・」
そう言った美琴のカバンからゲコ太(通常Ver)のストラップがはみ出しているのを初春と佐天は気が付き思わず口からあ・・・という声が出た。二人の視線に気が付いた美琴は顔を赤くして驚きの表情で固まる、白井はこらえきれずに口を手で押さえながらプププと笑うのだった。



「うわ、すっごい人」
「何でこんなにちっちゃい子が?」
佐天と初春は|尤《もっと》もだった。クレープ屋のある第7学区ふれあい広場は、大勢の子供たちであふれていた。どうやら、学園都市内の学校に入学する子供たちとその保護者が下見のために大型バスで見て回っていたようだ。そして、ちょうどこのふれあい広場で休憩することになったようだ。この人数なのでクレープ屋にも既に列ができている。その最後尾に4人は並ぶのだった。
「休憩は一時間ですー。あまり、遠くに行かないでくださいねー」
とバスのガイドが大きな声で呼びかけている。
それを聞いて初春は白井に話しかける。
「どうも、タイミングが悪かったようですね」
「そうですわね、わたくしは先にベンチを確保してまいりますわ」
これだけの人がいると座る場所の確保は難しくなる。折角クレープを買うのだからゆっくり食べたいのが人情だ。こんな炎天下の中立ちながらクレープを食べるのはあまりいいものではない。そういうわけでの白井の提案だった。
「あ、じゃあ私も、佐天さん私たちの分お願いしますね。」
「お金は後でお支払いしますわー」
二人は4人の中で一番先頭にいた佐天にクレープを頼んだ。
「え、ちょっ・・・」
後ろを佐天が振り向くとすでに初春と白井は座る場所確保に移動してしまっていた。そして、美琴は腕を組んで指でとんとん二の腕を叩いている。ゲコ太(紳士Ver)は限定100個なためかなり焦っているようだ。そんな美琴を気遣って佐天は言う。
「・・・御坂さん、順番換わります?」
そんな佐天の言葉に美琴はパッと一瞬顔を輝かせたが、すぐに表情を戻して取りつくろう。
「べ、別に順番なんて。 私はクレープさえ買えたらそれでいい―――」
一度興味ないと言ったのでプライドのためか断ってしまう。そんな美琴の横を子供たちが駆けていく。
「やった、ゲコ太ゲットー」
「わたしもわたしも」
そんな子供たちを美琴の視線は羨ましそうに追いかけていく。それを見た佐天は苦笑いで溜息をついた。そして佐天の順番が回ってきて注文していたクレープを手渡される。
「お待たせしましたー、はい、どうぞ、最後の一個ですよ」
おまけのゲコ太マスコットもついてきた。
「あ、どうも・・・って、え、最後?」
そう佐天が聞いた瞬間に後ろの美琴が膝をついて崩れ落ちた。
「あ゛~~~~~~~~~~~」
こんな日差しの強い晴れた日だが、美琴の周りだけ暗くなるような負のオーラがまき散らされている。そんな重い空気に耐えきれなくなった佐天は美琴に話しかける。
「・・・あの」
美琴がゆっくりと佐天の方を向く。その目はとても羨ましそうな色をしている。
「よかったら、これ」
と佐天がゲコ太マスコット(紳士Ver)を差し出すと、美琴は今までに見せたことのない俊敏さでゲコ太マスコットを佐天の手ごと握り締める。まるで、カマキリが獲物をとらえるかの如きスピードだった。
「え、いいの、ホントにいいの!?」
すでに手は標的であるゲコ太を掴んでいる。
あまりの勢いに佐天は後ろに若干後ろに下がりつつ答える。
「ええ」
「ありがとーーーーーーー!」
「い、いえ・・・」」
美琴は佐天の手を握りながら、力いっぱい頭を下げる。すでにプライドとやらはどこかに消えてしまったようだった。その後、初春たちのところに戻る美琴はスキップに口笛というとてもふわふわした足取りだった。



「ほら、お姉さま遠慮なさらず」
「いらないって言ってんでしょ! 何よトッピングに納豆と生クリームって!」
そのチョイスする白井も白井だが、売る側も売る側だと言わざるを負えない。
そんな他愛もない話をしていると楽しげな空間をぶち壊す大声が響き渡った。
「おら! 近づくんじゃねえ! それ以上近づいたらこのガキぶっ殺すぞ! ガキぶっ殺されたくなきゃ、金を用意しろ! 今すぐ3000万だ!」
その声と共に爆発音と拳銃の発砲音が聞こえた。4人の座っていたベンチの後ろに通っている道路の真ん中で3人の男が子供を人質に取り拳銃を向けているのだった。
「な、何? なんなの?」
佐天は驚いていたが、白井と初春の行動は迅速だった。二人は即座に|風紀委員《ジャッジメント》の腕章を付ける。白井は残っていたクレープを全部口に押し込むとベンチを乗り越え道に出る。その際、初春への指示も忘れない。
「初春、|警備員《アンチスキル》への連絡と怪我人の有無の確認、急いでくださいな」
それだけ言うとすぐに犯人の指定したラインギリギリまで接近していった。初春はすぐに白井の指示通り|警備員《アンチスキル》への連絡を始めた。
「はい、そうです。 第7学区ふれあい広場前の道路で子供を人質にとった身代金要求事件発生|警備員《アンチスキル》の出動を要請します。」
それらを見ていた美琴は自分もと白井の方に走って行ってしまった。
美琴が犯人の指定したラインのところにつくと、子供たちの親とバスのガイドがいた。