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とある魔術の絶対重力‐ブラックホール-

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「お願いです、息子を、息子をどうか返してください!」
「うちの娘もです、返して下さい!」
「子供たちを返して!」
ラインギリギリから犯人に向かって悲痛な叫びが投げかけられる。
「うるせえ! 返してほしけりゃ金寄越せって言ってんだろーが!」
「っ!」
(何、あいつら・・・子供を盾にしてまで! 許せない!)
美琴は今のやりとりで頭に血がのぼってしまう。そんな美琴の体の周りでバチバチと電気が渦巻く。聞き覚えのある電気の奏でる音で美琴に気が付いた白井はすぐに美琴を止めに入る。
「お姉さまなんでここに来ているんですの! まあ今はそのことはいいですわ。 とりあえず落ち着いてくださいませ。 迂闊に攻撃したりはしてはいけませんわ。」
「子供たちが捕まってんのよ! 眺めてるなんてできないに決まってんでしょ。」
「駄目です、お姉さま。 お姉さまも見えるでしょう、犯人は子供の頭に銃を向けているんですの、攻撃したりしたら子供たちの命が危険なんですのよ。 仮に犯人を3人とも倒せてもお姉さまの電撃で銃が暴発しないとも限らないんですの。 だから、今は堪えて下さいですの」
美琴は分かってしまった。今の自分にできることはないと。自分の出る幕ではないのだと。
「っ、なんで、なんで見ていることしかできないの。 私は超能力者《レベル5》なのに。 なんでこんなに無力なの? こんなときに使えない能力じゃ意味ないじゃない・・・」
「お姉さま・・・」
白井は美琴の言葉を否定することも美琴を励ますこともできずに、ただ言葉をかけたい相手の名前を呟くことしかできなかった。



犯人の様子と子供の親の様子・そして何もできないことに苦しんでいる少女たちの姿をひろばとは道を挟んで反対側にいた2人の少年が見ていた。一人は170cmくらいの身長に黒髪をツンツンと立たせた少年。もう一人は170cmくらいの身長にオレンジみがかった茶髪を少し長めにしたような少年だった。そのうちの茶髪の少年が黒髪の少年に問いかける。
「なあ、当麻。 俺はあの子供たちを助けようと思うんだけどさ、お前はどうする?」
聞いて少年は聞く必要は無かったなと思った。なぜなら、黒髪の少年の目にはすでに火が点いていたからだ。
(やる気満々だな、といっても俺も人のことは言えないか)
「どうするも何も助けるに決まってんだろ」
「言うと思ったぜ、じゃあ銃口が次に子供の頭とは違う方向を向いたら俺が一番手前の男と左奥の男をブッ飛ばす。 当麻は右奥の男を頼む」
「ああ、まかせろ」
そうして二人の段取りは決まりそのときを待つばかりになった。



「おい、さっさと金を用意しねーか!」
あれから10分ほどが経ち犯人たちはしびれを切らせていた。たった10分と思うかもしれないが、犯罪を現在行っている人間の10分は1時間に匹敵するほど長く感じられる。周りからの視線やどこかから攻撃されやしないかという不安、今自分たちの行っていることへの恐怖からとても長く感じられるのだ。そんなとき、犯人の一人は自分たちが決めたラインのすぐ近くに白井のすがたを見つけた。正確には、|風紀委員《ジャッジメント》の腕章を付けた白井の姿を発見したのだった。|風紀委員《ジャッジメント》は、自ら志願して学園の治安を維持する学生だ。この学園都市での治安維持は|風紀委員《ジャッジメント》の学生と|警備員《アンチスキル》の教師で成り立っている。そのうちの片方が現場にいたのだ。犯人にしたらこれ以上の恐怖は無い。しかも、|警備員《アンチスキル》は武装はしていても普通の大人、しかし|風紀委員《ジャッジメント》で前線に出てくるものは基本的にかなりの高レベルの能力者、単独なら注意しなければいけないのは完全に後者だ。
「おい、そこのお前|風紀委員《ジャッジメント》だな! 一番前に出てこい!」
白井は自分のことを呼ばれたのだと気が付くと犯人の方へ顔を向ける。そんな白井に美琴は声をかける。
「黒子!」
「大丈夫ですわ、お姉さま、黒子はちゃんと仕事を終わらせて帰ってきますの」
そういって白井は犯人の定めたラインの一番前に立ち、宣言する。
「|風紀委員《ジャッジメント》ですの、おとなしく子供たちを解放してくださいですの。そうすれば罪も軽くて済みますわよ」
「馬鹿がそんなこと言われたからって引きさがれるかよ、先に言っとくぞ変な動きを少しでもしたらガキの命はねえからな。 おとなしくしてるならガキには手を出さない、だが、お前は厄介そうだ、お前は先に片付ける」
そういって男は銃口を白井にむける。銃口を向けられても白井はまだ余裕があった。
(大丈夫ですの、銃弾をテレポートでかわして、犯人の銃を|金属矢《ダーツ》によって近距離から正確に撃ち抜く銃さえなくなれば子供たちを助けられますの)
さっきまで、|金属矢《ダーツ》で銃を撃ち抜かなかったのは予想以上に犯人が銃を同じ位置に固定しないからだった。誤って子供に|金属矢《ダーツ》が刺さるのだけは避けたかったのでいままで攻撃しなかったが、近距離まで近づけば確実に当てられる。だが、そこでテレポートしようとしていた白井は違和感を感じ、その違和感はすぐに確信へと変わる。
(わたくしがテレポートしたら銃弾はわたくしの後ろの方々に当たる!? まさか彼らはこれも見越して!? これでは避けられないじゃありませんの! まずいですわ、このままでは|殺《や》られるしかないじゃありませんの)
黒子の今の状態に気が付いた美琴は大声を上げる。
「黒子―――!」
美琴の声が白井に届いた。そして、銃をもつ男の顔が泣き笑いのような歪んだ顔になり銃弾が発射された。白井の目には銃弾が自分に向かって飛んでくるのが見える。
(ああこれが死ぬ間際のスローな世界ってやつですのね。 ああ、もっとお姉さまと一緒にいたかった。 まあ、お姉さまたちも盾になって死ねたのなら本望ですわ)
白井があきらめかけたときその声は響いた。
「なーにあきらめたような顔してんだよ! こんなことくらいで人生投げ出してんじゃねえ!」
白井の目の前にオレンジみがかった茶髪の少年が勢いよく横から飛んできた。
そんな|銃弾《こと》くらいどうにでもなると、だから安心して後ろにいろと言うように、その少年はまさに|英雄《ヒーロー》のように現れた。
白井は気が付いた、銃弾が遅く見えていたのは死ぬ間際だったからじゃない。世界の動くスピードが極端に遅くなっていることに。犯人も美琴も白井自身もほとんど動くことができない。そんなスローの世界の中をただ一人の少年だけが普通の速度で動く。銃弾すら1秒に5mmも動かないような世界を。その遅くなった銃弾を少年は素手でつかみ取り地面に叩きつける。そして、犯人たちにだけ聞こえるように呟いた。
「なあ、知ってるか? 時間っていうのはな必ず一定じゃないんだぜ。 強力な重力の前では時間すら歪んで遅くなる。 そんなにのろのろしてたら100年たっても俺には追いつけねえ。 少しはまともに動いてみろよ」