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デンタルラプソディ

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「で、僕のところに来たって?」
 静雄の同窓生かつ、セルティの同居人は、いくらかむすっとした顔で応対した。常日頃愛想のよい闇医者であるが、何故か非常に機嫌が悪い。手にしたペンでかつかつとメモ用紙にぐるぐると円を描いている。
 セルティは手持ちのPDAに素早く文字を入力する。ただそんなことをせずとも、新羅には通じているようだ。静雄はそんな様子を眺め、時々羨ましいように思う。
『静雄は困ってるんだ。友人が困ってる時に助けるのは当然だろ』
「僕は静雄”君”のことを友人だと思っているけど、静雄”君”はそうじゃないからねえ…。小学生の頃からそうだ。僕は君のことをよぉっく知りたいと思ったけど、検査もさせてくれなかったじゃないか。せめて採血だけでもってお願いしたよね。でも君は無下に断った。僕の友情を」
「……」
 ぐずぐずと昔のことを、連ねる”友人”新羅に、ぴくぴくと額がふるえるのを感じたが、ぐっと耐えた。おもわず奥歯を噛みしめてしまい、痛みが走ったが。
『どうしたんだ新羅。お前らしくない』
「僕はいつだって僕だよ。いや…違うな。愛のために人はいつだって、豹変するのさ。愛執染着さ。わかるかいセルティ? ああわかってくれ」
『新羅、何が…』
「気付かないのかい? 僕がこんなに傷付いてるのにッ」
 眼鏡の奥がいくらか潤んでいる。新羅はがばっとすがるようにセルティを抱きしめた。とつぜんのことにセルティは呆気にとられて動けなくなってしまった。
「なんでセルティは静雄の手を握ってたんだい? 僕の手だって握ってくれたことがないじゃないかッ」
『そそそそそそんなこと言ってる場合じゃないだろ?』
 あたふたと慌てるセルティと新羅の、じゃれあいもとい押し問答をしばらく眺めていた静雄だったが、歯の奥がずくずくと痛みだしはじめて、とうとう我慢の限界を迎えた。
「……いい加減にしねえか」
 静雄は地獄の底から響くような声で唸り、セルティの背にまわされていた新羅の手首をぐいっと掴んだ。ぐぐっと力を込める。
「や、やめて、静雄ッ。僕医者だから、ほらこれ、僕の商売道具だからッ。明日から、仕事ができなくなっちゃうだろ?」
「関係ねえ。ごちゃごちゃ言ってんじゃねえよ」
「き、君の手術だってできなくなるだろ?」
『そうだ、そうだ』
 セルティが止めるといくらか冷静に戻り、静雄はぱっと手を離した。
『で、やってくれるのか?』
「君たちは勘違いしてるけど、さ。そもそも、医師免許と歯科医師免許ってのは違うんだよ。医者は歯科診療できないんだよ。僕は医者だからね、歯の治療はできないんだ。口腔外科って分野はあるけど、厳密に言うと歯科治療はできないし。君のことは調べ…いや、治療したいのはやまやまだけど、ね」
「…そうか」
 静雄はちいさくつぶやいた。歯は痛い。こんな俺を治療してくれる歯医者はあるのだろうか。中学の頃はあの程度の被害で済んだが、今となっては、歯医者一軒壊滅しかねない。今後痛みに耐えていかねばならぬのか…いっそ自分で抜いちまったらどうか。ぐるぐると悩み、しょぼんと項垂れる静雄を哀れみをもって見つめていたセルティであったが、ふと思いつき、PDAに打ち込み、新羅に向ける。
『というか、お前は、闇医者なんだから。医師免許も歯科医師免許も関係ないんじゃないか?』
「あ…」
作品名:デンタルラプソディ 作家名:松**