花に想いを
『名前:オダマキ(赤)・花言葉:必ず手に入れる・育て方……』
瞬きをして顔を上げて、首を傾げてウォルターを見る。
「……これがどうかしたの?」
「『どうかした』っておまえ……」
ウォルターがピクリと軽く眉をはね上げて、カードの花言葉の部分を指でピシピシと叩く。
「花言葉!! わざわざこんなこと書いてある花を寄越したんだぞ。何か意味があるんだろうが。っていうか、そういうことじゃん!!」
「考えすぎじゃない?」
考えすぎっていうか、気にしすぎっていうか、心配しすぎっていうか。
軽くあしらって、アンディはこっそりとため息を吐く。
脳裏に花を渡してきた相手を思い浮かべて。
(ああ、なるほど、そういうことか……)
急に花なんか渡してきてなんだと思っていたら、花言葉か。
『必ず手に入れる』……。
(あー……)
やっぱり受け取らなきゃよかったな、いや受け取るつもりはなかったんだけど、そんなことよりこの花をどうしようか。
誰か他人にあげるのがいいか。
頭はすぐに『誰に渡そうか……』という考えに移る。
まぁ、もらったものだけど、向こうだって育てろとは言ってないんだし、『やる』とは言われたけれど『もらう』とはこっちは言ってないんだし。
突っ返すのが一番だけど、わざわざ学校に持っていくのもめんどくさいし、相手が素直に受け取るとは思えないしで。
暗くなり始めた道で突っ立って自分を待っていた相手のニヤけ面を思い出す。
そしてまたひっそり『フゥ』と小さく息を吐く。
(ボクが気付くはずないじゃないか……)
花言葉なんて。
(バカみたい……)
ウォルターに指摘されなければ、そのまま誰か他人の手に……そうだ、寮の管理人さんにあげようか……渡るだけで、なんの意味もなかった。
まぁ、ウォルターが気付くということまで考えに入れていたのなら、大したものだけれど。
そのウォルターは、早くも明日の朝管理人に渡してしまおうと考えているアンディの横で、手に持った花をしかめっ面で、まるで敵でも見るような目で、上から下から横からジロジロと眺めている。
「……なんかヤな感じすんな……」
さっきは『可愛い』って言ってたのに。
アンディは横目でそれを見る。
(ほら、贈るならこういう人にしなくっちゃ……)
花言葉を気にするようなところがなければ、知っても別にどうとも思わない。
つくづくと花を眺め終わったウォルターが、それを机の上に戻して、仏頂面で見ていたアンディの方を振り向く。