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DRRR  BLOOD!!

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池袋の夜


帝人達と分かれた後、志貴は夜の池袋を見回りしていた。
目的はもちろん首無しライダーに接触する事だ。
昼間から堂々とバイクで池袋を駆けるくらいだから少なくとも今までは姿を隠す必要はなかったのだろう。
しかも、都市伝説として既に池袋に定着しており、庶民に広く知れ渡っている。
少なくとも吸血種であるならばそんな目立つ事はしない、そうアルクェイドは言っていた。
アルクェイド曰く、少なくとも人ではないのは判るが吸血種ではない。らしい。
もちろんシエルにもそれを伝えたが、どっちみち正体を突き止める必要があると言われたので、三咲町にいた頃と同様夜の街を徘徊している。もちろん七ツ夜所持で。
しかし、昼食を食べようと立ち寄ったレストランで正臣に気になる事を言われた。

♂♀

「切り裂き魔?」
「ああ、最近池袋の夜は物騒なんだよ。まあ今に始まった事じゃないけど」
「まあ、だろうね」
「それで、最近何人か被害に遭ってんだ。しかも被害者は全員そろって犯人は日本刀を持っていた、と言っている」
「日本刀?そんなもの持ってたらすぐわかると思うけど」
「全員顔はよく見えなかったらしい。ま、そういう事だからあまり夜は出歩くなよ。俺ですら最近は夜のナンパは自粛してんだ」
「…正臣?」
「ちょ、帝人冗談だって!」

♂♀

切り裂き魔と言えど所詮は一般人だろう。その程度だったら志貴でも余裕で倒せる。特に脅威でもないが、一応気には留めておいた。
それより今は首無しライダーに接触する事が大切だ。
―――シエル先輩やアルクェイドは接触したのか?アルクェイドはともかくシエル先輩は人外には厳しいからな~。

♂♀

尾行されている。
セルティは確かに確信した。相手が何を使っているのかは知らないが、運び屋という仕事を何年もしているとある種の勘が身についてくる。
バイクについてこれるのだから、恐らく車かバイクだろう。
こういう場合は、適当に巻いて逃げるか人気の無いところまで走って戦うかのどちらかだ。幸いなのは今回の取引は終了しているという事。
セルティを乗せた黒いバイクは右方向にあった狭い住宅街の道路に入る。まず車なら入ってこれない。
次はスピードを上げて三十メートル先の分かれ道を左に曲がる。自宅からは離れてしまうが、仕方ない。
―――確かここを抜けると公園だったな。
セルティは一旦公園にバイクを止める。回りを確認すると、誰もいない。気配も感じない。
―――上手く巻けたかな…。
再びバイクに跨ろうとしたその時…。

ガキン!!

地面に何かが刺さった。目を向けると、いや、首の無いセルティには目も無いが、とにかくそこには剣が刺さっていた。
そう思ったのもつかの間、剣は大量の紙になって宙を舞った。

「あなたですか?首無しライダーと言うのは?」

声のした方に視線を向けると、そこには電灯の上に立った、修道服の女がいた。両手には指の間にはさんだ黒い剣が三本ずつ。
状況はよくわからないが、面倒な事になったのはよく分かった。
とりあえず話をしようとPDAを取り出そうとしたところ、また剣がセルティの真横に飛んできた。
「動かないで下さい」
そう言うと、携帯を取り出した。もちろんセルティへの殺る気満々の視線は外さずに。
「あ、もしもしトオノ君?なんでしょうか?」
トオノ君は会話している相手がデュラハンを殺そうとしていると知る由があるのだろうか?
「首無しライダーの事で、ですか?
 でも今首無し捕獲した事なんですよ」
―――おい待て。なんで私捕獲された事になった!?
「え、でも…はい。分かりました」
そう言うと携帯を閉まった。トオノ君相手だと素直らしい。とりあえず私はそのトオノ君と
やらに助けられたらしい。

♂♀

「あ、先輩待ちました?」
トオノ君と思われる少年はまるで逢引のようなノリで登場した。黒縁の眼鏡は今時珍しいな。
だが、もっと問題なのは一緒に金髪の、しかも絶世の美女を連れて来た事だ。おまけに連れて来た女性は明らかに人間ではない。見かけは普通の人間だが、漂ってくるオーラはヤバイ。同じ人外であるセルティにはよくわかった。
「いえ。それより何でアーパーがいるんですか?」
「ん?志貴に来いって言われたから来ただけ」
修道服の女はセルティそっちのけで金髪の女に凄い眼差しを向ける。その視線には嫉妬という七つの大罪の一つであるはずの感情がこれでもか、というほど含まれていた。
「まあまあ。二人とも今はそこの黒いのの方が重要でしょ?」

『黒いのとは何だ失礼な。私はゴキブリか』

二人の女が睨みあってた隙にPDAを取り出すことに成功したので私はトオノ君の前にその文を突き出した。
はあ、すいませんと謝るトオノ君。
「それよりアルクェイド。あの人は一体?」
「んー、人じゃないわね。それに吸血鬼でもないし。けど魔物や使い魔の類でもない。そこまで低レベルではないって言うか。
 あと残ってんのは、精霊?」
「ちょっ、貴女はこの程度が精霊だというんですか!?」
「だって精霊にもピンからキリまであるし。だいいちアンタこいつがホントに弱いと思ってるの?」
その質問に修道服の女は呻く。
「ま、いいや。それで、正体は何か分かる志貴?」
どうやらトオノ君の本名はトオノシキと言うらしい。このまま教えてしまおうか。
「えーと、首が無いんだよね。それで精霊…」
しばらく考え込むトオノ君。見かねたアルクェイドと言うらしい女は言った。
「時間切れ。まったく、エクストラだったら決戦の前にゲームオーバーだわ」
「エクストラ?」
「こっちの話。少し出演したことあるの。答えはデュラハンよ」
「デュラハンて、ゲームのあれか?」
「…これは重傷ね。疎いにも程があるわ。シエル、面倒だから説明して」
目の前に本物がいるというのに。何故そっちに聞かない。
「待ってください!何でデュラハンがバイクなんか乗るんですか!?」
「だって首の無い精霊でそこそこ強いのなんてデュラハンぐらいしかいないじゃない」
結局セルティが一から説明する事になった。

♂♀

『つまり、私はそういう存在だ。わかってくれたかな?』
目の前の黒い影、セルティ・ストゥルルソンはPDAに打ち込んだ文字を志貴達に見せる。
彼女の言う事を要約すると、自分は首を失くした上に記憶も欠けてしまったデュラハンで首を捜して気配を辿ったら日本に行き着き、その際に自分の愛馬であるシューターは首無し馬のままでは運び辛かったのでバイクに憑依させ、自分もバイクに乗りやすいようにライダースーツを着用している、ということだ。
ついでに、デュラハンは女性しかいない、ということもわかった。
「それにしても貴女は教会の存在を知らなかったのですか?
 いくらなんでもこんな都会で爆走してたら騒ぎになるでしょう。まったく上もよく今まで放っときましたね」
シエルはどうやらセルティが人間に危害を加える存在ではない事がわかったらしく、敵意はもうなかった。アルクェイドは興味ありげにセルティを見ている。
教会は知らなかったが、ブリュンスタッドは知っていた。セルティは目の前の少女がブリュンスタッドの出身だと知り、かなり驚いた。
作品名:DRRR  BLOOD!! 作家名:蔦野海夜