DRRR BLOOD!!
プロローグ弐
「ダラーズ?何だそれ?」
志貴《しき》は目の前の赤毛の親友、乾有彦に向かって返事を返す。
「え、志貴知らないのか!?
今すっげー話題になってんだぜ!
ルールとか特に無いから凄い気軽に入れるし」
「秋葉《あきは》がうるさいから金かかるのは入れないんだ」
「お前の妹相変わらず厳しいなぁ。
その点は心配すんな、無料だから。
ケータイあるだろ?URL送るから早く登録してくれよ」
志貴は有彦の言葉を信じ、送られてきたURLからサイトに入り必要事項を入力してさっさと登録を済ませた。
ハンドルネームは“獅貴《しき》”にしておいた。
「俺のハンドルネームは“イヌイダケ”だからよろしく」
有彦のその言葉で志貴は思い出した。
有彦が起こした事件はいまや三咲高の黒歴史だ。
♂♀
「シエル先輩ってダラーズ知ってます?」
志貴は昼休みに目の前に座る蒼髪のショートカットで眼鏡をかけた先輩に訊いてみる。
「ええ、一週間ほど前に乾君の誘いで入りましたよ。
ハンドルネームは“セブン”です」
―――有彦の奴・・・。
志貴が呆れていたそのときにシエルは重要な発言をする。
「そういえば、遠野君来良学園に行くって本当ですか?」
志貴は口に含んだ水を噴出しそうになった。
「来良学園ってなんですか?」
志貴は色々訊きたい事があったが、まずそれが第一だ。
「池袋にある私立です。
うちなんかよりずっと偏差高いですね。
昔は来神学園て名前だったらしいですけど。
たしか、昔かなり仲の悪い二人組みが居て、色々やらかしてたとか。
まあ、変な噂は立ちまくりですね」
シエルはカレーを食べながら黙々と説明する。
志貴は訳がわからなかった。
「詳しいですね・・・。
ていうかなんで俺がそんな所に?」
「実は、生徒会の友達が言ってたんですけど今年度から国内留学制度みたいなものが始まったらしいです。
それで模試の成績が優秀だった遠野君が選ばれたそうです。
保護者の許可はとったらしいですよ」
―――秋葉のヤツ・・・。
志貴は呆然としていた。
幸いな事に最近は死徒など全く現れていないからアルクェイドやシエルに任せても三咲町の平和は守られるが。
「で、その学校って寮とかあるんですか?」
三咲町は都会だが東京都ではない。
池袋まで通学するのはかなり大変だ。
「ありませんよ。
だから、しばらく一人暮らしって事になりそうですね」
「まあ、秋葉が費用とか何とかしてくれそうだけど」
「裏の目的もあるでしょうね」
「裏の目的?まさかこっちの世界の話ですか?」
「はい、実は教会から調査を頼まれているんで私も行くんですけど」
シエルはカレーをおかわりした後続けた。
「実は、池袋に吸血鬼がいるかもしれないんですよ。
もっとも、都市伝説になるまで定着してますが。
池袋では黒バイクと呼ばれているらしいです」
「黒バイク?」
「はい、能力とかもまだハッキリしていません。
昼も活動しているので吸血鬼だとしたら真祖ですね」
「じゃあ、アルクェイドも連れてくか」
その時、シエルの手の中でスプーンがピキッと音を立てた。
見ると、少しヒビが入っている。
「遠野君、あのアーパー吸血鬼と同棲する気ですか?」
「いや、まあ、一応一線は越えてるし今更問題は無いだろうし、
もし真祖だったらアルクェイドもすぐにわかるだろうし。
それに・・・」
志貴は一呼吸置いてから周りに聞こえないよう小声で呟いた。
「俺がバイトしてるのも、あいつとデートする資金稼ぐためなんですよね」
その台詞に加え、志貴のその顔が爽やかな笑顔だった事が災いしてシエルに業火の火をつけた。
その夜、アルクェイドとシエルの激戦が繰り広げられたのは言うまでも無い。
作品名:DRRR BLOOD!! 作家名:蔦野海夜