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雪割草

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〈51〉島原の一夜



「あの二人ですね。」

弥七があらかじめ仇の田村と茜の兄、誠太郎の馴染みを調べ、金は払っておいたらしい。
御丁寧なことで…。

その目的の女の子二人は仲良さそうにおしゃべりしていた。
同じような年頃なのに、こんなとこで仕事なんて、かわいそう。
遊廓なんて…。
売られたのかな?
可哀想な身の上の子を買って遊ぶ男の気持ちが全く分からない。


「…楽な方を格さんに回したほうがいい?どっちだ?」

「小柄な女のほうですかね。誠太郎さんの馴染みです。」

「わかった、ありがとな。弥七、ご隠居頼むぞ。」

「へい。また様子見に来ますんで。」
そう言うと弥七は姿を消した。


「格さん、お前はあの小柄な子の方担当だ。いいな?」

「やっぱり怖い…。」

「おい…怖くはないから。刀持って襲ってくるわけじゃない。
そんなに心配するな。」

「だって…。」

「今日はイヤだったら何もしなくていいが、将来結婚したらどうする気だ?」

「……。」

「何もしないで兄弟みたいに一生すごすのか?それもそれで、相手が可哀想だぞ。」

「……。」

怖いけど、将来助三郎さまを拒み続けたら、赤ちゃんできない。
赤ちゃんできないと、離縁させられる。
それはイヤ。

「…悪い、私事と仕事じゃ違うな。どうしてもダメだったら無理するなよ。
俺が格さんの分までちゃんとやるから。」

「…やる。迷惑かけられない。」

「明日の朝、門の外で落ち合おう。いいな?」

「え!一晩いなきゃいけないのか?」

「当たり前だろ?気が向いたら遊んでけ。じゃあな!」

「……。」

そう言うと助三郎は田村の馴染みの女の方へ歩いて行き、連れだって奥に消えた。
やっぱり、見たくない。
普通の子と歩いてるのはまだ我慢できる。
でも、遊女は…。

ダメ。我慢しないと。
男はそういう生き物だってみんなが言ってた。
あきらめるしかない。
今は仕事。大事な仕事。
やらなきゃダメ。

早苗は覚悟を決めて、遊女と部屋に入った。
お銀に何をしたらそれ相応になるか教えてもらったが、緊張と恐ろしさのあまり
頭が真っ白になり固まっていた。

その様子に気付いた遊女はそっと聞いてきた。
「…兄さん、こういう場所嫌い?」

「……。」

「図星やった?こんなに良い男なのに珍しいわぁ。」

「……。」

「まぁ、えぇし。うちに何の用事?」

「…聞きたい事が。」

「わかった。…たまにいるんよ、そういうお客はん。」

なぜかうれしそうにしていた。

「そうか…。」

「まぁ、床入り無しで楽でえぇけど。…うちはそういうお客はん好きや。」

やっぱりつらいんだ。
好きでもない見ず知らずの男と寝るなんて、わたしだったら絶対できない。

「的場清太郎知ってるか?」

「あの人?好い人よ。内緒やけど、わたしの|間夫《まぶ》やから。」

「まぶ?」

「知らん?うちのいい人ってことや。まぁうちが勝手に思てるだけやけど。」

そういう意味か。なんて書くのかな?

「よく来るのか?」

「来てくれへん。おようちゃんの馴染みが来る時だけや。」

「おようちゃんって?」

「うちの姉さんみたいな人。」

「さっき貴女の隣にいた?」

「そう。ねぇ、貴女言うのやめて。そんな大した女やないから…。」

「じゃあ、なんて呼べば?」

「うち、みねっていうん。」

「じあ、おみねちゃん、おようちゃんの馴染みってどんな人だ?」

「お武家様。その人が来ると、清太郎はん表で用心棒やめて、うちのとこ来てくれるん。
で、睨むんよその人を。」

「睨む?」

「そう、なんでかしらんけど毎回。一辺刀持ち出しはって怖かったわ。」

「理由は?」

「わからへん。恨んでるってだけ教えてくれた。」

「そうか。ありがとう。」

やっぱり誠太郎さんは仇を狙っている。
隙を見て刺し違えようとして機をうかがっているに違いない。

「これで全部話したわ。満足した?」

「ありがとう。じゃあ…帰るかな。」

「なんで?」
ちょっとさみしそうな顔をされた。

「え?ダメか?」

「寝ても行かへんの?もう夜中で遅いし。」

確かにもう夜中だ。
一人で帰るのもなんだし…。

「じゃあ、寝るだけなら…。」

「よかった。うちも今夜はゆっくりできる。」

おとなしい娘でよかった。
疲れたから寝ちゃおう。

おみねに背を向けてうとうとし始めたとき、背後から手が伸びてきた。

「兄さん…。」

「へ?」
身体を密着させてるらしく、肌のぬくもりが伝わってきた。

「良い身体…。」

ちょっと!変なところ触らないで!
なんでいきなりこうなるの!?

「…なぁ、抱いて。」

「え!?」

さっきまで何ともなかったのに…。
どうして?

「お願い…。」

仕方がない。襲われる前に、眠らせよう。
あれ?眠り薬どこに入れたかな?

「フフッ。やっぱり格好えぇし。」

眠り薬を用意するのに手間取っているあいだに、帯を解かれ、半裸にされていた。

いや!何で脱がすの!?
あっ。薬こんなとこにあった!

「なにしてん?早く!」

とうとう早苗はおみねに押し倒された。

仕方ない、やるしかない!

身体を入れ換え、女を組み敷いた。

「やっとその気になってくれた。うれしいわぁ。」

目がおかしかった。
完全に男を見る目、さらにその上のひどい目になっていた。

「ごめんな。お前のこと嫌いじゃないんだが。」

「なら。はよう。な?」

「こういうことはほかの男にしてもらえ。本当にごめん!」

薬を嗅がせて少しすると、効き目が表れたのか、眠ってしまった。

「はぁ…。怖かった。」

なんでいきなりおかしくなったんだろ?
なんで?

「…格さん。」
頭の上から声が聞こえた。
不審に思って天井を見上げた。

「あっ弥七。どこまで見てた!?」

「何にも見てやせんぜ。それより、着物着た方が…。」

え?着物?
身なりを見て驚いた。
ほとんど裸だった…。
イヤ!

「見るな!!スケベ!」
急いで身を隠した。

「…見てません。ではこれにて。」

どっと疲れが出てきた。
もう、寝よう。
明日の朝、早く帰ろう。

間もなく早苗は眠りに落ちた。






なんか、柔らかい…。
なんだろ?温かいし。
気持ちいいかも…。

べしっと顔に何かが当たった。

なんだろ?
手か…。
でも、誰の手?

不審に思い、身を起してみると、すぐ隣でおみねが寝ていた。

ひっ!
ここ遊郭だった!
この子に襲われそうになったんだ。


「…兄さん?」

「起きたか?」

「うち、晩にとんでもないことせえへんかった?」

「…した。」

「すんまへん!うちも何が何だかわからんようになって…。こんな経験初めてや…。」

やっぱりこの子が悪いんじゃない。
わたしの変な忍びの血が悪かった。
女を引き寄せるわけのわからない特性が原因だった。

「気にしないで。俺は何ともないから。」

「ほんま堪忍え?」

「いいから、気にしてないから。」

「ほんま?」

「あぁ。じゃあ、俺はもう行く、仕事辛いかも知れんが、がんばって。」

「…おおきに。」

店を出て門を出るとすでに光圀が立っていた。
作品名:雪割草 作家名:喜世