雪割草
すぐに助三郎も来て報告になった。
「助さん、どうじゃった?」
「はい。月に二三回遊びに来るそうです。必ず番を家来にさせて。仇が怖いとか何とか言っていたそうで。格さんは?」
「誠太郎さんは田村が来るとあの子のとこに行くらしい。やっぱり狙ってたみたいだ。」
「ということですが、いかがで?」
「わかった。後から策を練ろう。茜さんに知らせに祇園に行かねばな。…それより。」
「なんです?」
「どうじゃった?|敵娼《あいかた》の方は?」
「は?えぇ、あえていうなら、ちょっとやっかいでしたね。なかなかのものでしたけど。」
「格さんはどうじゃった?」
「……。」
言いたくない。
「もしかして、お前…。」
「……。」
絶対言わない!
「可愛そうに、無理やり襲われたか?」
「……。」
図星?
「すまんな、悪かった。弥七が判断間違えたか。」
「助さん…。」
心配してくれた。
ちょっとうれしい。
「だがな、これでお前の男に磨きがかかったに違いない。そう思え!」
イヤ!最低!
三人は気付かなかったが、彼らのやり取りを盗み聞きしている者がいた。
にやりとすると、どこへともなく姿を消した。
宿に戻った早苗は昨晩の疲れもあって縁側でボーっと座っていた。
「ねぇ。どうだった?」
由紀ががばっと抱きついてきた。
「うわっ。…近寄るな!」
よりによってこんな時に…。
おみねの手つきを思い出し鳥肌が立った。
「なによ。わたしが怖いの?」
「当分近寄らないでくれ…。」
「あっ。いちゃいちゃしすぎて気持ちよくて骨抜きにされたのね?」
「違う!」
「過剰に反応しちゃって。」
まだ抱きついてくる。
でも、柔らかい。
普段気付かなかったけど、女の子ってこんなに柔らかいんだ。
よし、仕返ししよう。
「早苗、どうしたの?」
「…気持ちいい。」
「え?」
「お前、柔らかいな。まぁ、おみねちゃんの方が良かったけどな。」
「キャー!変態!!」
由紀は、走って逃げてしまった。
やっと離れてくれた。
当分近づいてこないよね。
一人でボーっとしていたい。