雪割草
「そのことか、心配せんでもよい。ただの料理屋の用心棒じゃ。斬り合いなど起こらん。」
「…そうですか?」
「もちろん。料理屋がやるなら、包丁で菜っ葉の根元を切り落とすか、魚の首をおとすくらいじゃ。」
「…お上手ですね。」
案外上手いことをおっしゃる。
「そうか?ところで、お前さん魚料理は出来るか?」
「はい、一応は。」
「由紀と、美味い物でも作ってくれんかの?腹が減った。せっかくいい魚が手に入ったようだしの。」
「わかりました。少々お待ちください。」
由紀と二人で魚料理を作ることにした。
台所が狭いの何の文句を言われたが、無視して準備をした。
どうしても手伝いたいと言って聞かずに、中に入ってきた助三郎に魚を捌いてもらい、なんとか料理を作った。
早苗は、助三郎の様子を見るうちにふと思いついた。
お守り、持たせれば良いかも。
自分の代わりについて行かせれば少しは不安が安らぐ。
そう思った早苗は夕食後、裁縫道具を持って人目のつかない部屋に籠った。
自分の荷物をひっくり返し、何か使えないかと物色した。
でてきたのは、水戸の神社でもらったお守りと、護身用に使える銀製の|簪《かんざし》、帯
だった。
考えた末、帯を少し切り取って得た布の中に簪とお守りを入れることにした。
ついでに、願掛けのつもりで直筆で文言を記し、すべてを布に入れ完全に縫い閉じた。
効果は出るはず。いや、絶対に効いてほしい。
あの人が行く前に渡そう。



