雪割草
「ううん。もう起きてたから。」
「助さん、早苗も、うるさい…。」
由紀の半分寝言の文句が近くで聞こえた。
まだ部屋は薄暗かった。
「…大丈夫?うなされてたけど。」
「あぁ、心配ない。」
寝不足が祟ったか。でも、寝てはいられない。
変な奴らがまた来るかもしれない。
「…助三郎さま。ちゃんと寝て。眠ってないでしょ?」
「…お前、今、なんて?」
懐かしい言葉を聞いた気がした。
「…へ?」
「…もう一度、言ってくれないか?」
「助三郎さま?」
名を呼んでくれた。
俺の名を…。
「…なんで泣くの?」
「…何でもない。もうちょっと寝よう。」
「…うん。」
やっと俺の名前を呼んでくれた。
生き返った心地がした。
早苗を早く治さないと。生きてもらわないと。