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雪割草

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ムッとした早苗は許嫁に反撃した。


「あーぁ。俺の兄貴はダメな奴ばかりだ。平太郎といい助三郎といい…。」

しかし、ダメ兄貴は何ともなかった。

「よう!義弟。よろしく頼むな!ハハハハ!」

「はいはい、義兄上殿。」

助三郎は調子に乗りはじめた。

「なぁ、お前れっきとした藩士なら見合い話がたくさん来てるかもな。」

「見合い?」

「そうだ、俺でさえいっぱい来たんだから、お前なんかものすごい量だろな。女にすごくモテるからなぁ。ハハハ!」

本当に腹が立った早苗は渾身の一撃をお見舞いした。

「…じゃあ可愛い娘と見合いして婿に行こうかな。」

これは直で効いたようだった。
笑うのをピタリと止め、必死な表情で訴えてきた。

「やめてくれ!俺の嫁になってくれるんじゃないのか?俺の妻で居てくれないのか?」

あまりにも真剣なので、馬鹿らしくなり、冗談はやめた。

「誰が婿なんか行くか。女の子と結婚なんかしたくない。」

「良かった…。悪かった、ふざけすぎた。謝る。ごめん。」

「もういいよ。」



その後光圀から、早苗は一通の文を渡された。
光圀の前から下がり、一人で縁側の明るい所で文を広げた。
それは父又兵衛直筆の文だった。

……遅くなって大変申し訳ない。
ふくが御老公様の文を勝手に読んでな、激怒して実家に帰ってしまった。
嫌がらせで、使用人を全て引き連れて出ていったせいで男二人の生活に困った。
ふくを説得し、帰宅させるのに時間がかかって文の返事に手を掛けれなんだ。すまんな…

…元に戻れなくなるなど絶対に有り得ん。
古文書を一通り漁ったがそんな事例は一切なかった。
お前の心配性からきた心労だろう。心配するな。
ちなみに解毒剤は今のところない。

…伊賀で巻物もらったらしいが、必ず持って帰れ。わが橋野家の大事な古文書だ。

…平太郎の嫁は良いとこのお嬢様だから、ちとガサツなお前と合うか心配だ。
それと、くれぐれも、助三郎に手を出されないよう気を付けろ。祝言までは一切禁止だ。
最後にこれはかなり重要だ。
同郷の者に見られないよう気を付けろ。水戸に入ったら絶対に姿を見られるな……

なぜか最後に兄からの短い文がくっついていた。

土産頼む。美味い地酒でいいから。



この文を読み終わる頃、近くに来た助三郎に声をかけられた。

「眉間にしわ寄せてどうした?」

「あの、クソ親父にクソ兄貴!」

「なんだ?」

「ひどい文だ。見てみろ。言いたい放題書いてある。」

自分の都合ばかり書き連ね、何が大事で何が要らないのかわけがわからない。
おまけに土産の催促。ふざけ過ぎにもほどがある。

しばらく笑いながら読んでいた助三郎だったが、ひとことぽつりとつぶやいた。

「…秘薬の解毒剤は、無いのか。」

「…そうらしい。昔は有ったらしいが、作り方が不明で無いも同然だってさ。」

早苗は助三郎の反応が少し怖かった。
一生男に変われる女の妻でもいいのか気になった。

しかし、帰ってきた言葉に驚いた。


「…よかった。」

「へ?なんで?」

「…格さんいなくなったら、俺の大事な友達が居なくなったら、イヤだから。」

「いいのか?半分男の女でも?」

「あぁ。俺はお前も早苗も大好きだ。…もっと言うと、二人で一人じゃなくて二人に別れて欲しいくらいだ。」

「なんで?」

「早苗と過ごす時はお前と会えない。お前と過ごす時は早苗と会えない。同時に会えないのが残念だなって。よくばりかも知れんが…。」

「…そうか。ありがとな。」

「また、逢い引き解禁されたら、二人で出かけような。釣りとか、いろいろ。」

「あぁ。」

その約束は、早苗へではなく、格之進に対するもの。
しかし、いつか分からない外出よりももっといいことを助三郎は思いついた。

「そうだ、試合しないか?」

「試合?」

「あぁ、剣術と柔術で勝負しよう。いいだろ?お前はもうどこも悪くない。脇腹も中身も治った。やらないか?」

「おもしろそうだな。やろう!」

「よし。じゃあ、ご隠居に言ってくるな。」



助三郎の姿を見送りながら早苗はふと違和感を覚えた。

なんでかな?
飲みに絶対誘わない。
前は、二言目には『飲みに行こう!』だったのに。
どうかしたのかな…。


しかしいつまでも考え込んでいても仕方がないので、風呂に入るため、由紀とお銀の元へ向かった。


作品名:雪割草 作家名:喜世