雪割草
「辰二さん。そろそろ子どもたち、帰る時間なんですが…」
彼女は子どもたちを背後に従え、辰二の指示を待っていた。
「おっと、もうそんな時間か。みんな、しっかり遊ぶんだぞ」
子どもたちに笑顔で言うと、素直な返事が返って来た。
「はい! でも、宿題してからだよね?」
にこっと男の子が笑った。
「偉いじゃないか、よく分かっているな」
辰二も上機嫌で笑い返した。
その傍で、お供二人は光圀の傍に戻って来ていた。
「ご苦労だったの。どうじゃった?」
「面白かったです。な?」
「はい。みんな覚えが良くて、教え甲斐が有りました」
二人の楽しげな表情を見て、光圀は明日の予定を勝手に決めた。
「では、明日も頼むぞ」
「え!?」
お供二人は声を揃えた。
明日には出立と思い込んでいた二人には驚きだった。
そんなお供の驚き顔を物ともせず、光圀は突き進んだ。
「辰二さん、お光さん、明日もこの二人を使ってくださいな」
「え? よろしいのですか?」
「もちろん。では、今日はこの辺で失礼しますよ」
上機嫌な光圀の後に、若干疲れを見せた早苗と助三郎が続いた。