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雪割草

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「はい。私は、まだまだ未熟者です。世間知らずです。だから、旅をして見聞を広めたいんです。勉強したいんです!」

「ほぅ。若いのに感心じゃな…… のう? 助さん、格さん」

「はい」

「え? あ、はい……」

 振られて、早苗は素直に返事をした。
彼と同じような気持ちを出立前に抱いていたので、共感できたのだ。
 しかし、助三郎は少しばかり違った。
どうしても旅に出たいという強い思いは無かった。
 出来るなら、早く帰りたいと思っていた。 
 残してきた人が水戸にいる故に……

「御老公様、どうかお願いします!」
 
 新助の熱意に打たれた光圀は、女将に窺った。

「女将さん、どうですかな? わしは構いませんが」

「……本当でございますか? では、よろしくお願いいたします。ただし、邪魔になったらどこへなり放り出してやってください」

 女将の許可が出た新助は大喜び。

「女将さん! ありがとうございます!」

「こら、私より、御老公様に礼を言いなさい」

「御老公様、ありがとうございます! よろしくお願いいたします!」


 こうして新助は一行の仲間に加わった。


 

「良かったの。新助さん」

「はい。ありがとうございます。御老…… ご隠居様のおかげです」

 助三郎は同年代の仲間が増えて嬉しいようだった。

「よろしくな! 新助!」

「よろしくお願いします!」

 楽しそうな一行の顔が見られて、嬉しくなる早苗だった。




 由紀も早速新助とおしゃべりに興じた。

「そういえば、新助さんって、あまり背が大きくないわね」

 男にとっては言われたくない言葉を由紀は言ってしまった。

「……小さいですよね。」

 シュンとしてしまった彼に気付き、慌てて彼を元気づけた。

「あっ……変な事言ってごめんなさい。でも、話しやすいからいいわ。あの二人は大きすぎるから」

 早苗は仲良く並んで歩く、許婚同士を見やった。

「長い間話すと、首が痛くなるの」

 冗談交じりで言ったが、彼はそんな二人に羨望の眼差しを投げかけていた。

「でも、かっこいいから羨ましいな……」

 途端に由紀は、対抗心を燃やして新助にふきこんだ。

「いいえ、わたしの許婚の与兵衛さまの方が数段上!」

「え? そうなんですか?」





「一人分宿代が増えたな。どうする?」

 助三郎と早苗は少し真面目な話をしていた。
一人同行者が増えた事で、変えなければならない事が多々出てくる。
 その一つが旅費だった。
 早苗は経費節約の案を即座に提示した。

「簡単だ。酒を飲まなければいい」

 途端に助三郎は焦り始めた。

「頼む、酒無しは勘弁してくれ!」

 早苗はさらっと受け流した。

「飲まなくても、死にはしない。酒は当分抜きだ」

「そんな…… たまには酒が必要なんだ。それに、酒は百薬の長……」

 早苗は笑顔でイヤミたっぷりに言った。

「その言葉、助さんを見る限り、到底当てはまらない気がするんだが。気のせいかな?」

「うっ…… 酷い…… その笑顔が怖い……」

 がっくりとうなだれる助三郎を見て、光圀は笑った、しかし早苗は注意された。

「これ、格さん、助さんをあんまりいじめるでないぞ」

 主から庇ってもらえたことが嬉しいのか、ニヤニヤ顔を向けてくる助三郎にムッとした早苗は、
経費節約案を強化した。

「いじめてません…… やっぱ水戸に帰るまで禁酒だ!」

 途端に助三郎と光圀から、懇願された。

「おい、それだけはやめてくれ! 頼むから……」

「格さん、頼む。完全禁酒は、勘弁してくれんかの?」

 困った早苗は、苦し紛れに譲歩策を出した。

「では、ごくごくたまに飲むならば……」

 すぐに調子付いた二人は、もう酒の話しをしていた。

「やった! ご隠居、やりましたね! 早速新助歓迎会に一杯いきましょうか」

「そうじゃな、良い考えじゃ」

 早苗は己の甘さを反省していた。
そして、次こそは二人の懇願に屈さないと心の中で誓っていた。


作品名:雪割草 作家名:喜世