雪割草
「あのねぇ…その格好でくよくよなよなよしてるとすっごく、変よ!」
「…」
「はい、男なんだからビシっとする!」
「俺は男じゃない…女だ。」
「その姿と声でどこが女なの!?格さん!しっかりするの!
そのまま部屋に行ったら助さんにバレるわよ!」
「わかったよ…はぁ…」
まだ思い出すとドキドキする。
死ぬほど恥ずかしかったけど、助三郎さま逞しかった…
ギュって抱き締めてもらいたいな…またいつか…
楽しみ…
「助三郎…。かっこいいなぁ。フフッ…」
「…早苗さん、にやけてるわよ。」
「…えっ?」
「悪いけど…変よ。男の名前呟いてにやついてるの…。」
「…」
「ごめん、辛いわよね…傍にいるのに、我慢しないといけないから。」
「…仕方ない、今、男だから。」
「そうだ!早苗、我慢しなくてもいい方法があるわ。」
「なんだ?。バレるのは無しだぞ。」
「聞いて来てあげる、助さんにそっちの趣味があるか。」
「やめなさい、由紀さん。下品よ、そんなこと聞くの。」
「良いじゃないですか。知りたくないですか?」
「そう?でも、そっちだったらちょっと引くわ。」
「まぁ、ないと思いますけどね。女にあれだけ目がないんですから。
お銀さんはどうです?両方大丈夫な男の人って?」
「どうかしらね?寛大な人って思うわね。」
「へぇ…」
「なぁ、そっちってなんだ?」
「そっちよ。わからない?」
「あぁ。わからん。」
「まぁいいわ…」
「なんで?」
「…あら、愛しの助三郎さまがいらっしゃったわよ。格之進さま。」
「由紀、声が大きい!」
「格さん。風邪じゃないよな?」
「あぁ。大丈夫だ…」
「まだ顔赤いぞ?どれ…熱はないな。」
おでこに触れられた…
助三郎さまの手が…
どうしよう…ドキドキする…止まらない…
「どうした?」
「…なんでもない。」
「何かあったら言えよ。いいな?」
「うん。わかった。ありがとね。」
「は?やっぱり変だな。話し方が…」
「気にするな!なんでもないから!はははは。」
「そうか。じゃあ。仕事の邪魔になるからな。頑張れよ。」
「はぁ…怖かった。」
「さっき少しだけ話し方が女の子になったわね。」
「そうだな…気をつけないと。」
「いっそ、バレちゃえばおもしろいのに。」
由紀、絶対にわたしのこと面白がってる。
昔からちょっと変わってるところがあるって気がしてたけど…
いつか何かされそうで怖い。
「ダメだ!仕事にさしつかえる。わかるだろ?」
「心配しないで。口が裂けても言わないから。」
「約束だぞ。」
…はぁ。
わかってるのに。あの人の前ではわたしは男。仕事仲間。
恋愛感情を出してはダメ。早苗とバレたら危ない。
とにかく我慢、我慢…