千日紅
なのに、女になったら喜んで近寄って来た。
「そんなことないわ。助三郎さまは良い兄上よ。強いし、格好いいし。何より優しい」
「でも、この子、いつもよりずっと生き生きしてた…」
「それはね、女の子は姉上が欲しいからじゃない?わたしも姉上が欲しかったから」
「そう?」
「兄上は、たまにうっとおしいけど。いなかったらいなかったで悲しいと思う。だから、心配しないで」
「……ありがと早苗」
ふっと、妻に触れたくなった。
身体は姿かたちは女でも、妻が本当に愛おしい。
その気持ちがもしもなくなってしまったら、恐怖のどん底に陥るに違いない。
まだ、大丈夫。
「早く戻れるといいね……助三郎さま」
「戻りたい……早苗…」
夫婦の夜が過ごせない。
少しさびしい夜がその日も更けていった。