ギャグマンガ日和をいい話にしてみた
あれから二年が経ち、うさみたちはもうすぐ卒業という事になった。
うさみの進路はそこそこの私立中学だ。
親友のニャン美、同業者のペン助などが同じ学校に行く者だ。
クマ吉は今頃どうしているだろうか?
まともな人になっていてほしい。
クマ吉をまともじゃ無くしたのは自分だろう?
まただ。
こういったクマ吉関連の事を考えた時、必ず嫌な事が頭に浮かぶ。
いや、
そもそもクマ吉はまともだったのではないか?
そのクマ吉をまともじゃなくしたのは自分で、
いや、それともクマ吉に知らず知らずのうちに、まともじゃない人間をやらせていたのではないか?
そんな事ばかり浮かぶのに、ばかばかしいとわかっているのに、クマ吉のことを考えるのは止めなかった。
クマ吉のことは、忘れたほうがいいとわかっているのに。
おそらくクマ吉は、自分のことを憎んでいることもわかっているのに。
当たり前だ。
自分がクマ吉のことが好きだったのはもうわかっていた。
だから事件を起こすたび構ったのだ。
周りにほっとけといわれてもほっとかなかったのだ。
気付いたのは丁度、クマ吉が少年院行きになった三日後だった。
何故そんな時期に気付いたのだろう。
自分が通報しなければクマ吉は逮捕される事はなかったのだ。
そう考えると余計にツライ。
誰にも相談できなかった。
彼のことを考えて泣いたことなどしょっちゅうだ。
何でもっとましな言葉かけてやれなかったのか。
なぜ、彼の「反省する」という言葉を、もう少しだけ信じてやれなかったのか。
後悔ばかりが浮かんだ。
あの日以来、警察に通報するのはやめてしまった。
怖くなったからだ。
二年後、彼は自分にどんな表情を見せるのかはわからない。
だが、早く帰ってきてほしい。
そして、そのままうさみは卒業した。
彼女の名は、動物小に永遠に残る事となった。
私立動物中学校にうさみは進学した。
自分の名は意外と外部に知れ渡っていた。
「よろしく!じゃあお近づきの印にサイン頂戴」
「うさみちゃん話聞かせて!」
「まあ、よろしくな。
ところで俺とメアド交換しね?」
「目見せて!」
こんな言葉ばっかりだった。
おかげで友は早く出来たが。
ある日の帰り道、雨だった。
キツネの女子が話しかけてきた。
「ねえねえ。ちょっと聞きたいことがあるの」
「なにかしら?」
「クマ吉っていう人のこと」
一瞬言葉に詰まった。
女子は遠慮なく続ける。
「だって、全く反省せずに何度も犯罪繰り返したんでしょ?
それも、ヤラシーやつ関連ばっかり。
そんなのろくでもないクズはどんな奴かと思って。」
うさみは何かが吹っ切れた。
「あいつはクズじゃないっ!!!!!!!!!!!!」
女子は驚いて硬直した。
うさみは我に返ったが、かまわず言った。
「ごめん。でもかなりイラッてきたから帰ってくんない」
女子は駆け足で帰っていった。
翌日からその女子が話しかけてくることはなかった。
作品名:ギャグマンガ日和をいい話にしてみた 作家名:蔦野海夜