東方南十字星 the SouthernCross Wars三
「あっ、やっと来ましたか。遅いですよ~。もう地上の奴は追加を除いて一掃しました。報酬僕らの分多くしといて下さいね」
羽田が待ち合わせに遅れた者に対するような口調で言う。
「すまない。それで、小型の円盤というのは?」
井野村がたずねる。
「あれや。あいつは光線みたいなやつを発射して人殺しとった。あらかた撃ち落としたけども、まだ半数近く残っとる。デカイのもまだや」
吉本は、小型で紫色を基調とした中央が黄緑色をし、四本の足(?)を生やしているその名のとおり『円盤』をガトリング砲の先を向けて説明する。
岡島は周囲を見回す。すると一つの死体が目に留まった。
「あ・・・・・」
その状態は、溶かされたような痕、深い傷、岡島が神社で見た患者の怪我とほとんど同じだった。
「なんか見つけたか?」
吉本が駆け寄る。井野村たちもついてくる。
「この死体・・・・・」
井野村が口を開いたが、岡島はまた別の死体のもとへ移動し、また調べた。
次に彼が見つけたのは、貫通し内部が露出している死体だった。まだ早いうちにやられたのか、血が新しい。岡島は改めて円盤を見上げる。
見渡せば、そこは血の海と言っていいほどの惨状だった。
「酷いですね・・・・・」
「来たときから思うてたけども、なんだ?ここは。どっかのゲームの村じゃあるまいし」
吉本は、以前RPGをプレイしたときに見た村を思い出していた。
「よし、俺と岡島は小型円盤および巨大生物の掃討に当たる。吉本と羽田には大型を任せる。いいか?」
「OK!]
「さらに報酬上乗せやな!」
「了解しました」
井野村は満足そうに頷くと、四人が続けて飛び立った・・・・・・・・・。
―――Side紫―――
「驚いたわ・・・・・」
私は今、彼らと交戦している円盤たちの斜め上から、スキマを使って様子を見ている。
相当な戦力になることは知ってて幻想郷へ来てもらったけれど、あの正体不明のバケモノを意図も簡単に殺し、そして今見ている対空戦でもあの大群を相手に、それも余裕そうに着々と数を減らしていっている彼らは・・・・・・・・・
「死神・・・・・?」
ふと思った。だが外の世界にはもう人間以外の種族はもう残ってないはず。
ならあの戦闘力は何?彼らの武器も今まで流れ着いたものとは全く違う。同じような物はいくつかあったけど、威力は桁違いだ。例えるなら、死神の鎌を銃にしたような・・・・・・・・
たとえば井野村がもっている銃は、一発撃つだけで蟻や蜘蛛を殺し、円盤も同様。
たった今撃った岡島の銃も、一回撃てば目の前にいる円盤や蟻の小さい群れをまとめて仕留める。
吉本は肩に担いだ筒のような物は、音が鳴ると少し遅めの弾が発射され、行く先の大きい円盤に当たると
大爆発を起こした。
羽田は手で何かを投げ、地面に当たるとこれまた大きい音とともに大爆発、そして蟻や蜘蛛の断末魔を
響かせた。
当然だが、それを遥かに上回る力を持っている者は幻想郷にもたくさんいる。事実私もそうだ。今まで
は霊力、妖力、魔力、神力を持っている者達である程度の敵は倒すことができた。さすがにスペルカード
は効かなかった。
でも、『あれ』だけは無理だった。こちらの攻撃が全く通用せず、せいぜい砲台を幾つか破壊しただけ。後は一方的。
おそらくそいつのせいで同じ敵がたくさん来るんだと思う。そのせいで人里の人間や妖怪が減っている。だから・・・・・・・・・・・・・
ドォォォォ――――――――ン!!!
たった今、敵の大群を殲滅し、博麗神社に敵を一切入り込ませず、なおかつ被害を最小限に食い止めた
死神の集団とも形容出来る彼らに、すべてを任せようと思った。
―――Side岡島―――
「これで最後だ」
ズバァァァァァン!!
俺は最後に残った円盤に向け、ショットガンをぶっ放した。
近距離だったため全弾命中し、見事に煙を出して墜落した。
「敵は殲滅した。各自敵の調査にあたれ」
井野村が指示する。俺は最後に倒した円盤にしようかな~?
「じゃ、僕円盤やりまーす」
あっ取られた。
「羽田、手伝うぜ!」
吉本、お前は来る必要ないだろ。
「なら、俺は大型の方へ行く」
井野村ー!!俺もー!!
結局、俺はあの気色悪い蟻んこどもの担当になった。
井野村に付いていっても、『ここは一人で十分だ』とか言って意地張られたし。つか、ならなんで吉本には何も言わなかった?
とりあえずは文句を喉の奥へしまっておき、持っていたナイフで敵の残骸を切り裂く。
蟻は黄色い体液のようなものが流れ出た。それがナイフに付くと、刃が焼けるような音と共に、刃が
一瞬でクリームのように溶けた。嘘ぉ!?
次は蜘蛛。ナイフは使い物にならなくなったため、井野村が戦闘中にライトセーバーでザクッとやった
ものを調べる。
体液は、酸ではないようだが、腹の部分からは糸が出てきた。とはいっても大分太い・・・・・・・。
酸を貯めておくと思われる場所も見つかった。ちなみに、目は異様に赤い。それも四つ。いや、六つか?
あと、脚力もハンパないということが分かった。間接?と筋肉?と思われる部分が異様に発達している。
「こんぐらいか?」
とりあえずは持っていたタバコを取り出し、燃料切れかけの普通のライターで火を点ける。吉本のは借りない。またあんな事は起こしたくないからな。
適当に背もたれを見つけ、そこで休む。ちなみに昨日から私服だったりする。当然三人も。
ぼんやりと空を見上げて煙を吐き出す内に、いつの間にか眠っていた。
その後、吉本に叩き起こされた。
―――Side井野村―――
帰った後、俺達は調査報告を済まし、前々から気になっている事を尋ねた。
すると神社の中で話すよう提案され、別に反対する理由も見つからない俺たちは巫女、つまりは霊夢に案内され、現在その一室に通されている。
紫が座るのを確認すると、再び質問する。
「まず、ここはどこで?」
「どこ、と言われても、ここは貴方達の住んでいた世界じゃないわ」
「・・・何?」「は?」「あん?」「へ?(グ~)」
最後に羽田が腹を鳴らしたが、気にしている暇はない。
「具体的には、幻想郷。その名の通り、幻想となったもの、つまりは忘れられたものが流れ着く場所」
そこで紫は区切り、次に羽田が口を開く。
「パラレルワールド・・・・ですか?」
「少し違うわね。あと、みんな敬語じゃなくていいわよ?助けてもらったんだから」
「オレは初めっからやけどな」
「同じく」
「ここは『結界』によって守られてるの。分かりやすく言えば、磁石のようなものかしら」
「磁石?」
「ええ。S極とN極が付いている状態を思い浮かべればいいわ。同じ場所にある。でも交わることも無い。近くとも遠い存在。外の世界からは絶対に知覚することは出来ないわ」
「ならなぜ俺たちをその幻想郷とやらに飛ばした?」
岡島が今更な事を聞く。
「貴方達が出るときにも言ったとおり、依頼よ。私達の力ではなかなか手に負えないバケモノが来たのよ。そいつらのせいでここは滅ぶ寸前。そこで、最後の神頼みとして、外の世界