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Fate/Zero ~MAKAISENKI~

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魔術師ならいざ知らず、普通の女ならば一目見た瞬間に落ちてしまうだろう。

「その結構な面構えで、よもや私の剣が鈍るものと期待してはいないだろうな?槍使い」




女であるセイバーもそれには反応したらしい、セイバーの持つAランクの対魔力の前では無力だったようだが。

「そうなっていたら興醒めも甚だしいが、なるほど、セイバーのクラスの対魔力は伊達ではないか。結構、この顔のせいで腰の抜けた女を斬るのでは、俺の面目に関わる。最初の一人が骨のある奴で嬉しいぞ」

「ほう、尋常な勝負を所望であったか。誇り高い英霊と相見えたのは私にとっても幸いだ。」

言葉を交えることは終えたのか、場が剣呑な雰囲気に包まれる

「それでは…いざ」

ランサーが左手に短槍、右手に長槍を持ち鳥のように構える。

セイバーも魔力を走らせスーツ姿から鎧姿へと変える。

「セイバー」

アイリスフィールが声を掛けた。
セイバーを心配しているのだろう。

「…気をつけて。私でも治癒呪文ぐらいのサポートはできるけど、それ以上は…」

「ランサーはお任せをただ、相手のマスターが姿を見せないのが気がかりです」

ランサーのマスターに気をつけろと言うセイバーの言葉にアイリスフィールは頷くと、巻き込まれないよう、セイバーから離れていく。

「妙な策を弄するかもしれない。注意しておいてください。アイリシフィール、私の背中は貴方にお預けします」

「わかったわ。セイバーこの私に勝利を」

「はい、必ずや」

その言葉を皮切りにセイバーはランサーへ駆ける。
今、サーヴァントの闘争が始まった。


一方、そのころシンギは

「何処だ…ここは…」

生まれ持った呪い(方向音痴:B)の性で迷っていた。

―――――――――――

凄まじい、そうとしか言えなかった。
この光景を見た誰もが自分の目を疑うだろう。
二人が武器を振るうたびに突風が起き、一歩踏みしめるたびに地が砕ける。

「くっ」

セイバーが苦悶の声を上げた。
最優とよばれるサーヴァントも2本槍という変則的な戦い方をする相手は慣れていないらしい。。

「どうしたセイバー、攻めが甘いぞ」

「……ッ」

ランサーの言葉にも言い返せなかった。
事実、セイバーは攻め切れていないのだから。
―この男、出来る

一方、ランサーの方も攻め切る事が出来なかった。
セイバーの剣が見えないのだ。
不可視の剣、これほど厄介なものはないだろう、刀身が見えなければ正確な間合いを計れないのだから。

「名乗りもないままの戦いに栄誉も糞もあるまいが」

膠着状態が続く中、互いに距離をとった時にランサーが口を開いた。
そして、その顔は笑みに満ちている。

「ともかく、賞賛を受け取れ。ここにいたって汗一つかかんとは、女だてらに見上げたやつだ」

「無用な謙遜だぞランサー」

セイバーの顔にも笑みが浮かんでいる。

「貴殿の名を知らぬとはいえ、その槍捌きをもってその賛辞…私には誉だ。ありがたく頂戴しよう」

セイバーもランサーも己の待てる力と対等に渡り合える相手に巡り合ったことがうれしいのだ。
ゆえに、相手に賛辞を贈る。

『戯言はそこまでだ。ランサー』

「ランサーの…マスター」

ふと、声が倉庫街に響いた。
ランサーがセイバーを仕留め切れないことに痺れを切らしたようだ。

『これ以上勝負を長引かせるな、そのセイバーは難敵だ。速やかに処理せよ宝具の開帳を許す』

「了解した。我が主よ」

宝具の開放を許されたランサーが短槍を捨て、長槍の呪符が解かれる。
現れ出たのは赤い槍だ。

「そういうわけだ。ここからは殺りに行かせてもらう」

ランサーが動いた。
セイバーに突貫し、鋭い一突きが繰り出される。
セイバーが剣で防ぐが…

「なっ」

セイバーが息を呑む。
槍とぶつかった時、セイバーの剣が見えたのだ。

「晒したな秘蔵の剣を」

「風王結界(インビジブルエア)が解れた!?」

風王結界…それこそがセイバーの剣を隠していたのだろう、だがランサーの槍とぶつかった事で、それが一時的に解かれたのだ。
セイバーはそれに驚愕を隠し切れないようだ。

「フッ」

ランサーが再び動いた。
剣が見えたことで間合いが取れたのか、その動きにためらいが無い。
セイバーもそれを交わし続けるが、やはり交わしきれないものもあるのか、剣で防いでいる。
その度に暴風が吹き荒れ、剣が姿を現す。

「刃渡りも確かに見て取った。もう見えぬ間合いに惑わされることは無い!!」

―だが、この槍の筋ならば、まだ応じようはある。
それは数多の戦場を駆け抜けた英雄の自信。
セイバーも何度も槍使いとは戦っているのだろう、故にその結論を出したのだ。

(甘い一撃を見逃さなければ)

ランサーが槍を構え迫ってくる。
セイバーは槍を鎧で防ぎつつ一撃を与えるつもりでいた。
が…

「ぐっ!?」

斬られたのはセイバーの方だった。ランサーの槍が鎧をすり抜けたかのように、その身を切り裂いたのだ。

「セイバー!!」

アイリスフィールが即座に治癒の魔術をかける。
元々浅い傷だったのか、それは瞬く間にふさがった。

「ありがとう、アイリスフィール。大丈夫、治癒は効いています」

傷は塞がっても、痛みは残る。
セイバーの表情は苦々しげだった。

「やはり易々は取らせてはくれんか」

そう言うランサーは余裕の表情だ。
しかし、どうも鎧を槍がすり抜けた事が気にかかる。
ランサーの槍は風王結界を解き、鎧をすり抜けた。ならば…

「…そうか、その槍の秘密が見えてきたぞ、ランサー」

セイバーは槍が魔力を絶つのだろうという結論を出した。
風王結界も鎧も魔力で編まれた物だ。
そうならば、合点が行く。

「その甲冑の守りを頼りにしていたのなら、諦めるのだなセイバー。俺の槍の前では丸裸も同然だ」

「たかが鎧を剥いたぐらいで、得意になってもらっては困る」

セイバーの鎧が霧散する。
鎧を捨てることで素早さを上げるつもりだ。

「防ぎえぬ槍ならば、防ぐより先に斬るだけの事。覚悟してもらおう、ランサー」

「思い切ったな。乾坤一擲と来たか」

狙うは一撃必殺。
セイバーは剣から魔力を放出しランサーに切りかかる。
魔力放出によりスピードも威力も上がった一撃を受ければランサーとてひとたまりも無いだろう。

―それは失策だったぞ
ランサーが不適に笑うと、その足元から捨てたもう1本の槍を蹴り上げ、手元へと持ってくる。
その槍からも呪符が解かれたのを見るあたり、それも宝具なのだろう。

(宝具は決して単一とは限らない、罠か!!)

気づいたときには遅かった。
何とか槍を避けようとするも、左手が斬られてしまう。
だが、ランサーにも剣は当たったようで、その腕から流血から見られる。

(まずいことに、腱を切られた。親指が動かない)

どうやら、セイバーの方が傷は深刻だったようである。
作品名:Fate/Zero ~MAKAISENKI~ 作家名:魔戒