君影
「…………」
ぬくもりを感じながら、関羽はふっと目を開けた。今見ていた夢の内容が、頭の中でぐるぐると回る。自分と同じ顔、同じ名前の少女。同じだけれど、違う。
少し目線を上げれば、すぐ隣に見知った顔。穏やかに瞼を閉じているその顔は、関羽が好きな曹操の表情だ。普段は腹の立つほどに隙のない彼が見せる、無防備な顔。心を許されているのだと、一瞬で感じることが出来るから。
「曹操……」
腕を伸ばし、そっとその白皙の頬に触れる。起こしたくはないけれど、もう少しだけ強くそのぬくもりを感じたくて、関羽はそっと指を滑らせた。こんな風に自分から触れるなんていつ以来かしら、そんなことを思っていると、手首をそっと掴まれた。驚きに、一瞬体が強ばる。ふ、と小さな笑い声がした。
「……どうした?」
「起こしてしまったかしら、ごめんなさい」
「いいや。それにしても珍しいな、お前の方が早く目覚めるとは」
「貴方がいつも早すぎるのよ。それに、わたしが起きると、すぐに出てしまうでしょう? もう少しゆっくりしたら良いのに」
「ゆっくりしていたら、いつまでもここに居てしまいたくなるからな」
優しい目、優しい顔。優しい手つきで、曹操の手が関羽の髪を滑る。それがとても心地よくて、関羽はうっとりと目を閉じた。同時に夢の中で感じた恐怖がじわりじわりとせり上がってきて、思わず関羽は曹操に身を寄せた。肩を抱いてくれる腕が心地いい