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アズール湊
アズール湊
novelistID. 39418
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黒と白の狭間でみつけたもの (12)

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声を掛けてくるトレーナーの数もいたけれど、思った通り数は少なかった。ほとんど、テリムと、ヒヤリンで応戦したが、タッくんが納得いかなそうな顔をするものだから、少しだけタッくんもバトルに参加した。

とりあえず、連勝できたものの、タッくんの動きに切れはなかった。考え事をしているのか、攻撃への反応が遅い。

何度かいつもは当たらないような攻撃をくらってしまったり、危なっかしかった。

少し落ちこんだ様子のタッくんを励ましながら、トウコ達はヤグルマの森を抜け、ゲートにたどりついた。

「タッくん、この先すごいんだから!」

きょとんとしているタッくんの手を引きながら、スカイアローブリッジに入ると、気持ちの良い風が吹いてきた。

少し冷たい風が心地よい。

大きくて、白く綺麗な長い橋が、目の前に続いていた。

「テリムも、ヒヤリンも、一緒に歩きましょ!」

ボールからはなった2匹が嬉しそうに飛び出した。

大きな白い橋を見て驚いている。

その先に見える青い海。

はじめてみるのか、3匹とも海をみるなり固まってしまった。

橋の下にある大きな螺旋状の道路を、トラックが忙しそうに駆け回っていく。

ブオン、ブオンと音を鳴らす車に気づいて、ヒヤリンとテリムが橋の下をのぞきこむ。

それを追いかけるように、タッくんものぞきこんだ。

ものすごいスピードで駆け上がったり、降りたりしている車をみつめて、声を上げる。

ゆっくり歩き始めたトウコを追いかけながら、回り込む道を進むと、先が見えないほど、直線に続いている道にたどりついた。

橋の下に続いていた森林を通り過ぎて、足下には青い海が広がっていく。

海に浮かぶ白い橋。白い影が青にうつり奥まで続く。

長い白の直線は、対岸で街と重なっている。大きな港に囲まれたヒウンシティ。

その街を囲むように、存在する青い海。果てしない青空。

あまりの絶景に、トウコも大きなため息とついた。

真っ白な橋の上を歩いていると、まるで海の上を歩いているような錯覚を覚える。

海は地平線までよく見えた。深い青色が、地平線でわかれて、空の澄み切った水色に変わっていた。

雲もほとんどないせいか、遠くに船が浮かんでいるのまでよく見える。

こんな綺麗な景色は初めてだった。

どこまでもつづく海と空を眺めながら、3匹は楽しそうな声を上げている。

興奮した様子で海を指さすヒヤリン。

その先をみているテリムとタッくんも、いつの間にか笑顔になっていた。

海や空を眺める3匹に混じって、トウコもしばらく飽きずに景色を眺めると、再びゆっくり歩き出した。歩き出したトウコを見て、タッくん達もついてくる。

駆けてきたタッくんが、トウコの手をぎゅっと握った。

反対の手にヒヤリンが手を握る。

足下にはテリムが寄り添う。

みんなでこうやって歩くのは久しぶりだ。なんだかとっても嬉しかった。

有名なスカイアローブリッジ。

絶景とは聞いていたけれど、ここまでとは思わなかった。

他の人も、脇目もふらずに周囲の景色に夢中になっている。

自然とトウコも足取りがゆっくりになった。

橋の中央付近までやってきたかという時、突然、大きな汽笛が鳴った。

低い振動に驚きながら、橋の下をのぞき見ると、大きな乗客船がもくもくと白い煙をあげながら、スカイアローブリッジの下をゆっくりと通り過ぎようとしている所だった。

3匹もひょっこりと、顔を出して船を見る。

どこから来た船だろうか。外国の旅客船かも知れない。

広いイッシュ地方の先にも、いろんな街があるという。シンオウ地方、オーレ地方、ホウエン地方、ジョウト地方、カントー地方……。

どこもここから遠いけれど、いつかは行ってみたい。あんな乗客船でみんなと旅が出来たら、きっと楽しいだろうな。

大きな汽笛を鳴らして通り過ぎていく乗客船。

タッくん、テリム、ヒヤリンと一緒に、橋に寄りかかりながら、船が小さくなるまで見送った。

ふと後ろを振り返ると、元来た道が遠くなっているのに気づく。

ヤグルマの森もあんなに小さい。

シッポウシティももうあんなに小さくなって、すっかり博物館がどこだかわからない。

奥に広く続く野原と森の奥は、カノコタウンの方だろうか。

小さいけれど、遠くまでよく見えた。まるでジオラマみたい。

こうやってみると、随分歩いて旅をしてきたんだと実感して、不思議な気分になった。

橋の下を通るトラックに追いつこうと、走り出しては止まるを繰り返している、テリムと、ヒヤリンを追いかけるように、トウコはタッくんと手をつなぎながら、まっすぐ歩いた。

目の前に徐々に大きなビル群が見えてきた。ヒウンシティだ。

ビジネス街のヒウンシティ。噂通りの大都会。あんなに大きなビルがいくつもある。

灰色に突き立った棟をみて、段々と、上を眺めるようになりながら、大きな坂道を下り、ゲートにたどりついた。

スカイアローブリッジの道がこれで終わると思うと、少し寂しい気がした。

反対側へ続く、大きな海の橋を振り返り、もう一度だけ眺めてから、みんなに声を掛ける。

「また来ようね!」

「デリリィ~!」

「ヒヤヤ~!」

嬉しそうな声を上げて、テリムとヒヤリンが、ボールに戻った。

タッくんは、じっとトウコの目を見て、一瞬、困った表情を浮かべたが、トウコは頭をなでると黙って微笑んだ。

そのまま手を握ると、安心したようにタッくんはにっこりと笑った。

ゲートに入り、ヒウンシティの地図を手に入れると、ゲート内で、まじまじと見つめた。

思っていたよりも、広いかもしれない。

地図が語りかける広さに戸惑いながら、トウコは街中に飛び出した。

ゲートを出ると、橋からみるよりも高くなったビル群が、トウコの前に立ちふさがった。

空まで伸びる灰色のビル。

地図を見ればすぐわかると思ったのに、予想をさらに覆すような広い街。

高いビルの上には、テレビでしか見たことがないような、大きな広告の看板があちらこちらにある。

ビルの上に設置された巨大なスクリーンからは、見たことがあるCMが流れている。

入り組んだビルからは、有名な企業の名前の看板が、階数ごとに横から突き出すように並んでいて、広い道路には、見たことがないような数の人が、せかせかと歩いていた。

ポケモンセンターまでビルの中に入り込んでいるみたいに建っている。

サーッと血の気が引いていくのを感じた。

固まっているトウコの手を、タッくんがくいくいと引っぱる。

どうしたの? と心配そうにトウコをのぞき込んだ。

「すごいねぇ、やっぱり都会って人が多いんだね!」

タッくんに声をかけながら、頭の中は真っ白だった。

あんな地図を見たくらいじゃ、道がよくわからない。せっかく今日は、ゆっくり観光めぐりでもしながら、足を慣らそうと思ったのに、これじゃあ迷子になりかねない。

そんな考えばかり頭を駆けめぐった。

とりあえず歩こう!

そう思って歩き出したはいいのものの、どこへ行っていいやらわからない。

ヒウンシティでは、ヒウンアイスっていう有名なアイスクリーム屋さんがあるとか!