二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」

風香の七日間戦争

INDEX|12ページ/16ページ|

次のページ前のページ
 

六日目 「迷子」


 朝がきて、風香は珍しく目覚ましが鳴る前に起きた。
外を見るといい天気である。
「暑くなりそう」
今日はジャンボの車でちょっと離れた渓谷まで行き、バーベキューをするのである。
恵那とみうらも来る予定だが、あさぎが用事で来られないと聞いてジャンボはがっかりしていた。

 朝食を食べ、片付けが終わると、みんなで出かける支度を始めた。
よつばははしゃいでおとなしくしていない。
「小岩井さん、着替えとか持っていった方がいいですよね」
「そうだな。汗かくだろうし。川で洗濯すればすぐ乾くだろう」
「あはは、それいいですね」
「でも風香ちゃんが着替えるところがないんじゃないかな」
「んー、ジャンボさんの車の中で着替えるから大丈夫です」
「そうだ、この間の水着持っていったらどうだ」
「いやですよぉ。恥ずかしい」
「とーちゃん、きょうおよぐ?」
「ジャンボは何も言ってなかったから、泳げないと思うぞ」
「よつばおよげるぞ? およげないのはとーちゃんとふーか」
「いや、そうじゃなくてもう、あー!」
「あー!」

 いつのまにか出発時間になっていた。
玄関のチャイムが鳴り、ジャンボが現れた。
「うーす。今日もあちいなあ」
「ジャンボきたー」
「ジャンボさんこんにちはー」
「恵那ちゃんとみうらもう来てるから早く行こうぜ」
三人も車に乗り込み出発した。
恵那がうれしそうに言う。
「私バーベキューって初めて。みうらちゃんは?」
「私も初めてだよ」
「よつばもはじめてー。ふーかはあるか?」
「私は中学のとき学校行事でやったなー」
「ふーん。ぎゃっきょーぎょーじゅかー」
風香がふと後ろを見ると、食材やらの荷物でいっぱいである。
「ジャンボさんすごい食材ですね」
「ああ、こんだけ人がいるとな」
「あー! 着替え用の丸いカーテンがある!」
「風香ちゃんが使うかと思って買っておいたんだが、ちゃんと水着持ってきたか?」
「持ってきてません! とに、このおっさんたちはー」

 そして車は目的地に着き、みんなで荷物を持ち河原まで降りていく。
小岩井とジャンボが用意をしている間、風香は水遊びを始めた子供たちをみていた。
「うわー、冷たーい」
「よつばー、それっ」
「ぶはっ、みうらはてきだー」
三人は水のかけ合いを始めた。
「三人ともー、遠くに行っちゃだめだからねー」
「うん、わかってるー」
「風香ねーちゃんも来なよー」
「私はだめだよー。Tシャツ濡れると透けちゃうから」
みうらとよつばは顔を見合わせ、風香に水をかけ始めた。
「こらー、やめなさーい!」
風香の白いTシャツが、水に濡れて透けてしまった。

 そこに小岩井とジャンボがやって来た。
「おーい、準備できたぞー」
「きゃー! こっち来ないでー!」
風香は丸まって動けない。
「ああ、Tシャツが透けちゃったのか」
「小岩井さん、見ないでー」
「やれやれ、結局あれ使うんじゃないか。風香ちゃんは着替え持ってきたのか」
「Tシャツ持ってきたけど、それも白なんです」
「それじゃ同じじゃねーか」
「風香ちゃん、俺が紺のTシャツ持って来たんで、よかったら貸そうか?」
「お願いしますー」
小岩井が車から持ってきた簡易脱衣用の丸いカーテンの中で、風香は着替えた。
(わあ、小岩井さんのTシャツ大きい)
風香はやっと動けるようになった。

 バーベキューの用意ができているのでみんなで移動する。
鉄板の上でまず野菜を焼き始める。
「ジャンボ、にくー、にくはー」
「野菜が焼けたら肉焼いてやるから待ってろ」
「でも野菜もおいしい」
「恵那ちゃんは野菜好きか」
「うん、好きー」
「いいぞー。肉ばっかり食って野菜食わないと肌がきれいにならないからな」
「えっ、そうなんですか。私もまだ間に合いますかね」
「あれ? 風香ちゃんて肉ばかり食べてたっけ」
「そんなことないですけど、お肌がすべすべになるんならもっと野菜食べようかなと」
「風香ちゃんの年ならバランスよく食べた方がいいと思うよ」
「それじゃー肉を焼くぞー」
「にくだー、にくだー」
「みうらは肉好きか」
「うん、好きだよ」
「じゃあいっぱい食べろよー」
子供たちは肉が大好きなので、あっという間に平らげる。
仕上げの焼きそばも全部なくなった。
「お腹いっぱいー」
「こういうとこで、みんなで食べるとおいしいな」
「えな、みうら、かわであそぼー」
「うん、行こうか」
「風香ちゃん、俺らで片付けるから、またあの三人みててくれ」
「はい、じゃあ片付けお願いします」

 子供たちは川に入って行った。
今度は風香も入ってみる。
「わー、ほんとに冷たいねー」
「さかなだ、さかながいたー」
「風香ねーちゃん、この川って魚いっぱいいるの?」
「私もよく知らないけど、あっちで釣りしてる人がいるから魚いるんだろうね」
そして三人はまた水のかけ合いを始めた。
「よーし、さっきのお返しー」
風香は三人に水をかけた。
「きゃ、お姉ちゃん冷たーい」
「ひどいよ。水飲んじゃったよ」
「さあ、かかってきなさい」
もう四人ともびしょぬれである。
風香がふと自分の胸元を見ると、Tシャツが肌に張り付き、胸の形が浮きでている。
(げっ、これはちょっとまずい)
風香が胸を隠しどうしようか迷っていると、小岩井とジャンボが来るのが見えた。
「小岩井さん、ジャンボさん、私ちょっと向こう行ってますので、三人を見ててくださーい」
「ふーか、どこいく?」
「私は向こうで遊んでくるから」
「よつばもいくー」

 しばらく行くと、誰もいない場所があった。
風香はそこで横になる。
太陽がまぶしい。
「ふーか、なにしてる?」
「お日さまに当たって服を乾かすの」
「ふーん」
よつばも横になる。
「よつばちゃん、よつばちゃんのお父さんて誰か好きな人いるのかな」
「……よつば、とーちゃんすきだよ」
「うーん、この質問は無理か。じゃあ、よつばちゃんの家に女の人来たことある?」
「ふーかとあさぎ! えなはこどもだ!」
風香はあきらめた。

 横になって服を乾かしていると風が心地よい。
風香はついうとうとしてしまった。
しばらくして目を覚ます。
気がつくと横にいるはずのよつばがいない。
「よつばちゃん? ……よつばちゃん!?」
風香が寝ている間に、よつばはどこかへ行ってしまった。
あたりを懸命に探すが、よつばはどこにもいない。
「だめ。見つからない。小岩井さんに知らせなきゃ!」

 風香はみんなのところに戻った。
「小岩井さん! 小岩井さん!」
「どうしたの、風香ちゃん」
「ごめんなさい! 私寝ちゃって、その間によつばちゃんがいなくなっちゃったの!」
「わかった。とりあえずいなくなったあたりに行こう」
二人でよつばを探す。
「よつばー!」
「よつばちゃーん!」
しかし返事はない。
「どうしよう。このまま見つからなかったら……」
「大丈夫だ。ひょっこり帰ってくるさ」
「私ついうとうとしちゃって、よつばちゃんのこと見てなかったんです。よつばちゃんに何かあったら私……ごめん……なさい」
風香は泣き出してしまった。
「あいつはいろんなところに一人で行って一人で帰ってくる。今回もきっと戻ってくるから」
小岩井は風香の頭をなでながらそう話した。
作品名:風香の七日間戦争 作家名:malta