二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」

少年純情物語中沢くん

INDEX|3ページ/10ページ|

次のページ前のページ
 

第二話 交流


「お、俺はいったいどうしちまったんだ? ここは一体どこなんだ……?」
鋭いハサミの音と、ちょびヒゲ妖精の、呪いの歌声が強く響く。
恐怖、絶望が心身すべてに染み込んでいく。
中沢は座り込んで頭を抱え、必死に叫んだ。
「助けてくれ! 助けてくれ!」
その時、上から黄色い人影が舞い降りた。

目の前にいるのは、優しい笑みを浮かべた美女。
縦ロール状に巻かれた金髪ツインテールの上に、羽飾りつきの小さな帽子を被っている。
黄色いスカートからむっちりとした太ももを覗かせ、その美脚をニーソックスで覆い、
膝まで伸びた黄色と黒のブーツを履いている。
さらに腰は黒いコルセットで巻かれ、体のライン、
特に溢れんばかりの胸を一層際立たせていた。
その可憐さと美しさに、中沢はすっかり虜になった。
(な、なんてキレイな人なんだ……)

美女が高くジャンプして右手を掲げると、無数の銃が出現した。
その銃口がちょびヒゲたちに向けられ、弾丸の雨が放たれる。
ズドドドドドドドドドドドド!!
ちょびヒゲたちが瞬く間に虚無へと帰していった。

勝ち誇った美女は、中沢に笑顔を向けた。

強さ、美しさ、優しさ。全てを兼ねた少女。
その魅力に、恐怖心など時空の彼方に吹っ飛んでしまった。
「あ、あなたは……!?」
「私は魔法少女。見滝原を守る正義の味方よ」
正義の魔法少女……ああ、なんて美しい響きなんだ。
中沢は我を忘れ美女に飛びついた。
そしてそのまま美女に抱きしめられ、心身ともに極楽状態に……!!
「中沢くん、もう大丈夫よ」
「わあい! ははははは……」

「ぐー……ぐー……(ははは……魔法少女……きれいだな……かっこいいな……)」
至高の世界を満喫中の中沢。掛け布団は剥がれ、手足を開きながらへそを覗かせ、
口からヨダレまで垂らしている。
間もなくその世界を終焉に導く者が迫っていることなど、中沢が気づくはずもなかった。
「こら! いつまで寝てんだい!」
「ひゃっ!?」
目の前に立っていたのは魔法少女でも何でもなく、怒りをあらわにした母親だった。
「あわわっ!お、おはよう母ちゃん……」
慌てて身支度して食卓へ向かっていった。

食事中、母の怒りは未だ治まっていなかった。
(まだ怒ってるのか……昨日も大変だったしな……)

昨日は一時間の大説教を喰らった。家に帰れば玄関に立ちはだかり、
「こんな時間までどこほっつき歩いてたんだい!」
フライパンを荘厳に構える母に、中沢は尻込みするしかなかった。
危惧した通り、晩飯は抜きとなり、泣く泣く自室でコンビニで買ったパンを食べたのである。

いつもの教室。早乙女先生が勢い良く教鞭を振るう。
「副詞とは、動作を詳しく表現するために用いられます」
「例えば、quickly 素早く、slowly ゆっくり、soft 柔らかく、などがあります」
「実際に使ってみますと、He walked slowly to his home.」
先生の説明をよそに、中沢は授業中マミのことをずっと考えていた。
(巴さん……本当にキレイな人だ……そういえばうちの制服着てたなあ……)
そこへ、先生の当てが入る。
「この文を和訳してみましょう。はい、中沢くん!」
「ええっ!」
説明など全く聞いてなかったから、何て答えていいかわからない。
「ええと……すみませんもう一度!」
「He walked slowly to his homeを和訳しなさい」
「か、彼は……家に歩いた?」
「どうやって歩きました?」
「んんとんんと……ゆっくり」
「そうです。『彼はゆっくりと家に歩いた』となります」
何とか無事答えて、ほっとする中沢だった。

昼休みになると、中沢はまどかとさやかに聞いた。
「なあ、巴さんのクラス知らないか?」
「ええと……三年生だよ」
「教室はちょうどこの上だったねたしか」
「先輩か……美樹、鹿目さん、ありがと!」
中沢は嬉しくなって、教室を飛び出した。

もうすぐ巴先輩に会える……
期待を胸に、中沢は階段を上がっていく。

そして、自分のクラスの真上の教室の前に来た。
(この中に、巴先輩が……)
教室をガラス越しに覗いて、ひと通り見回す。
いた! 真ん中でお弁当を食べてる縦ロールの女子生徒が!
(あ、あれこそまさに、巴先輩!!)

他の生徒が騒ぐ中、マミは一人静かにお弁当を食べていた。
その表情は、何かに思いふけっているようだった。
周囲に影響されず、ただ自分の好きなことを想像する。
その姿を、中沢はずっと目に焼き付けた。

しばらくすると、マミがこちらを振り返った。
「うふふ、こんにちは」
「と、巴先輩……」
全身が震え固まり、口調もおぼつかない。
「そんなに震えてどうしたの?」
マミが笑顔でこちらに向かってくる。
目の前までくると、中沢の心臓はもう破裂寸前になった。
(巴さんが、俺の目の前に……俺の目の前に……!!)
じっと中沢を見つめるマミ。緊張しすぎて、何を言えばいいかもわからない。
失礼のない、思いつく言葉を必死に絞りだした。
「こ……こんにちは……い、一緒に……お……お弁当……」
恥ずかしくて、これ以上声が出ない中沢。震える中沢に、マミは笑顔で返事する。
「お弁当? いいわよ。」
!!!!!!!
あっさりとしたマミの返事に、ますます動揺する。
しばらくして何とか落ち着き、
「じゃ、じゃあ、お弁当取ってきますね!」
勢い良く廊下へ飛び出し、そのまま自分の教室へ。

教室では、まどか、さやか、仁美が仲良くお弁当を食べている。
「あら、中沢さんどうしたのでしょう?」
「なんつーか、すんごく喜んでない?」
「とてもいいことあったみたいだね」
もちろん中沢は彼女たちなど眼中になく、弁当を取り出し、またマミの教室へ急いだ。

「どうぞ座って」
中沢がお弁当を持ってくると、
マミはすでに自分の向かい側に余った椅子を用意していた。
「し、失礼します……」
ドキドキしながら中沢は座る。

自分の向かい側に、憧れの先輩が座っている。
夢のようだ。でもこれは夢じゃない、現実なんだ……

すました笑顔のマミに対し、俯きがちな中沢。
お弁当を食べながら、中沢は自己紹介する。
「は、初めまして……中沢です。あ、アナゲー部に入ってます……」
「アナゲー部? ああ、トランプや双六やるところね」
「はい……」
中沢の所属するアナゲー部。アナログ・ゲーム部の略である。
「私も、トランプとか好きなのよ」
その時中沢は『しまった!』と思った。部活で使うトランプを持ってくればよかったと。
今更トランプ持ってきましょうかと言うのもかっこ悪いし……
とりあえず、今日はおしゃべりだけにしておこう。
「あの……昨日は、どうもありがとうございました」
「いえいえ、私もあなたが無事で、よかったわ」
「俺、昨日本当にヤバかったんですよ……変な幻見て倒れて……」
ハサミの音、ちょびヒゲの歌声。それを思い出すだけで、恐怖が蘇る。
マミは笑顔をやめ、真剣そうに話した。
「そうね。あのままいれば、ずっと倒れたままだったでしょうね」
「ええっ!」
「あなたもご存知でしょう。ここ見滝原では原因不明の行方不明が多いこと」
「それは、知っていますが……」
作品名:少年純情物語中沢くん 作家名:おがぽん