夜恋病棟・END
「…っはぁっ、あっんッ…」
下界に還ったものの、まず最初に下界の管理人に呼び出された。
本当なら任務放棄のためまた下働きからだが、耀のような戦力を無くすのは痛手だという事で今回の件は免除された。
「…失礼しました。」
裁判の館から出ると当たり前の様に菊が出迎えた。
「よかったですね、免除されて。」
「お前は何時まで我に執着するつもりある、菊。…いや、冥王ハーデス」
「おやおや、その名を口にしてはいけませんよ。バレてしまうではありませんか。」
そう言うと耀の手を取り、一瞬視界が暗闇に包まれたかと思うと気付けば菊の寝室に居た。
二人はベッドに腰をかけている。
所謂瞬間移動というやつだ。
瞬間移動を軽々こなす魔力を持つのは一人、神しか居ない。
「何故あの時アーサーを殺さなかったあるか。菊の魔力なら一撃で天使は死ぬある。」
「貴方の悲しむ顔は見たくありませんので。」
「では、羽は。お前には羽が六つ付いているはずある。どうして二つしか…。」
「あそこで私が冥王だとバレたらどうするんですか。」
微笑む菊の眼は怪しい金色に輝いていた。
暗い寝室にその瞳は恐ろしいほど美しい。
耀は菊の一番の側近である。
事件や祭などあるとハーデスの何時も隣に立っているのである。
しかしハーデスは姿を曝すのを極力避けていた。そのためハーデスの素顔を知る者は僅か数人。
耀もその一人だった。
菊は相当耀の事が気に入っていた。
そのため、普段は普通の悪魔の姿に化け、耀の傍に居るという訳である。
菊の行動はこれ以上で、恋人にならないかとも申し入れをしてきた。しかし耀はその度に断っていたのだ。
耀が逃げ出したのもそれが原因。
菊の側を離れたかったからだ。
しかしあっさりと見つかってしまい、そのまま下界へと引きずり戻された。
するりと菊の指が輪郭をなぞり、そのまま唇を奪われる。
服が徐々に脱がされていくのが嫌でも分かった。
もう逃れられない。
菊は我がアーサーの事を慕っている事を知って尚、こういう行為をしたのだ。
全ては計画。
結局は、菊の、神の思惑通り。
「…あっ、やぁっんッ!!」
もう、アーサーとは逢えない。
耀は初めて、涙を流した。