Fate/10 Bravery
剣士の問いかけに、彼は痛む右腕を上げる。小指を失ったその手の甲には、占星術に於ける冥王星の記号が刻まれていた。
「あぁ。誰かの憎しみがお前に届いたのなら…それは、オレだ。オレが、お前のマスターだ!」
「…わかった。ならば私もお前のその憎しみに答えよう。我がクラスはジェミニ。我が名は…」
ジェミニ。それは、仮にセイバーが最強のサーヴァントとし、アヴェンジャーが最悪のサーヴァントとするならば、最凶のサーヴァント。
その名は、世界すら知ることはない。
The Nightmare
セピア色に染まった風景。禍々しき山の山頂には、返り血にまみれた一人の男が立っている。
足元には、自分を貶め、裏切った、親友だった魔術師の死体。その隣には、自分を信じると謳いながらも、親友だった魔術師にそそのかされ、自分を裏切り、魔術師に殉じた、王国の姫。
私がいったい何をしたのか。声なき慟哭は、誰の耳にも聞き届けられず、誰も彼に手を差し伸べようとはしない。
人が、英雄を望むのなら、英雄になろう。だが、人がそれを望まぬならば、英雄の代わりに、魔王を望むのなら。
私は、憎悪へ至る道を駆け上がろう。
そして、一つの世界が、跡形残さず消滅した。
作品名:Fate/10 Bravery 作家名:AsllaPiscu