Fate/10 Bravery
「こちらハリー・ヤズマッド、6時間前に森宮入りしました。ええ、サーヴァントの召喚もつつがなく終了し、現在情報収集を行なっております。はい。では失礼します。」
そういって、ハリー・ヤズマッド神父は電話を切る。受話器を少しばかり乱暴に戻すと、伸びと欠伸をしてベッドに寝っ転がった。
「あぁ~あ。やっぱ教会のお偉いさんと話すのは気ぃ使うわ。もっとこうさ、気楽にやれたらいいのにさぁ~」
そういってハリーは両手を頭の後ろに回して枕にしつつうたた寝を始める。昨日のサーヴァントの召喚で疲れた。とりあえず適当にコンビニで栄養ドリンクなるものを飲んでみたが、体に良さそうな味ではなかった。日本の医薬品というのも底が知れているんだろうな、と、頭のどこかで考えて、眠りにつく。
現在寝ているこのハリー神父、聖杯の真贋を見極めるために聖堂協会から直々に、それも単身で派遣されているだけあって、只者ではない。彼は、代行者と呼ばれる異端の処刑人、その中でもトップクラスの実力者であったりする。ただ一つの問題を抱えてはいるが。
ハリー神父は、信仰心がからっきしないのである。
代行者としてあるまじき事態である。「別に神様の奇跡でパンが降ってくるわけじゃねぇだろ~?」と教会のお偉方に正面向かって言ったのも一度や二度ではない。
しかし埋葬機関にも所属できるほどの腕、概念武装「十字聖典」との相性の良さ、そして代行者という職的には極めて稀な魔術回路を持ち、魔術を行使するという戦闘スタイル。この3つの特徴により、代行者として教会に飼われている。
しかし、教会としても厄介者あることに間違いはなく、こうしてよく戦死前提の単身で任務を遂行させられている。ハリーも「仕事だから仕方ない」ということで割り切り、聖堂教会との妥協点としている。
故に、こうして寝ている。こうして寝ていれば彼の召喚したサーヴァントアサシンが斥候から戻り、情報を持ってきてくれるからだ!
「…マスター、もう帰ってますよ~?夜ですよ~?起きてくださいよぉ~…」
…結局熟睡して、アサシンが半泣きでハリーを起こす羽目になったとさ。
大丈夫か?
作品名:Fate/10 Bravery 作家名:AsllaPiscu