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Fate/10 Bravery

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Side:Lancer

青花城。森宮の中興の祖と呼ばれた武将が居を構えていたとされる古城である。森宮の著名な観光名所だけあり、現在のような丑三つ時でもない限りは警備が厳しい場所である。

そんな古城の敷地内には、森宮市内全体を見わたすことができる展望スペースのような場所があり、そこには全国的に有名な武将の騎馬像がある。そして、この真夜中にこの場所で刀を帯びた男が佇んでいると、まるでその武将が現代に蘇ったかのようだ。

まぁ、彼の隣には、見えないだけでその武将よりさらに古い侍が現界しているわけだが。

『ふむ、これが、現在の森宮…ワシが昔、主と駆け抜けた頃とは、まるで変わっておるのう…』

霊体化したその古き侍…ランサーに、現代の侍といっても過言ではなさそうな男、ハルヒサが佇み、森宮の夜景を見渡し、英霊に声をかける。

「だろうな。卿の頃には、こんな夜景はなかったであろうからな。で、卿の望み通りにこんな場所に連れ出してきたのだからな。卿が聖杯に望むことを、聞かせてくれるのだろうな。」

恋人同士でもあるまいに、とハルヒサがくつくつと笑う。空気とエーテルが渦巻き、彼の隣に薙刀を持った大男が現れる。僧帽をかぶった大男は、少し困った顔をして、口を開く。

「まぁ、我が主も男色は嫌いであったからな。ワシもそんな気があって連れてきたわけではないわ。それに…」

そう言うと、ランサーは感慨深げに目を閉じた。まるで、生前の思い出を思い出すかのように。

「…ここに来た時点で、半分位はワシの望みは達成されておるのだからな。」

へっ、とハルヒサが言葉を漏らす。ランサーは、彼の阿呆面を横目でチラと見ると、ガハハと豪快に笑った。

「意外か?であろうなぁ!ワシ含め英霊なんてものは、魔術師の尖兵なんぞに甘んじるならば、それ相応の対価、収穫がないとやってられんだろうからな。それが、ここに来たらだいたい満足じゃ、なんて言ったら、そりゃぁその阿呆面もしたくなるわな!」

ひとしきり笑ったランサーは、ハルヒサから目線を移し、森宮の夜景を見やる。まるで黒い大地に散りばめられたダイアモンドのような夜景を、彼はまぶしそうに眺める。

「主が死んだにしろ生き延びたにしろ、ワシの死に意味はあったのか…ワシの死んだ後の世は…あの弟殺しのクソ将軍が作った世はどうなったのか!…いやぁ、頼朝に対する恨みなぞもうない。この現世を眺め、そして主の足跡を懐かしむことができれば…この武蔵坊弁慶は本望よ!」

その後は貴様の尖兵にでも捨て駒にでもなんでもなってやるわいと、ランサーは豪快に笑い飛ばした。ハルヒサは圧倒されて言葉を失い、目の前の男の大きさに目を開くばかりであった。
その時。

「さて、次は貴様の願いを…ん!?」

一陣の風、吹く。鮮烈な殺意が二人の肌を刺す。豪快に笑っていたランサーの顔から笑が消え、長薙刀を軽く振り回し、構える。ハルヒサも腰の刀に手を伸ばし、篭手に包まれた左手を握る。

果たして、二人の視線の先には、ランサーのそれよりも細いものの、変わった形状の穂先を持つ矛を持った武者がいた。武者といっても、あれは古城の主人であった武将や、ランサーのような日本のものではない。見る限り、大陸のモノか?



Lancer VS Barserkar

「あれは…サーヴァント?」

「であろうのう…あれは…バーサーカーか?」

ランサーの言うとおり、彼らの前に現れたのは、ヨハン・メイゼルフェルドのサーヴァント、バーサーカーである。狂化の呪いによって濁る双眸が、目の前の敵を捉えた。

「マスター、奴の能力値は?」

「…かなり高い。しかし妙だ、あれだけの能力を誇るサーヴァントに何故狂化を…?!来るぞ!!」

狂戦士が大地を踏みしめ、突撃してくる。ランサーも瞬時のうちに薙刀を構え、矛の一撃を打ち返さんと猛る!


ガシィィィィィィイン!!


凡そこれは武器のぶつかり合いによる衝撃波か?そう思えるほどの衝撃に、ハルヒサの脚が宙に浮いて、吹き飛んだ。地面に尻餅を付き、二人の猛者の打ち合いを見守るしかない。既に、刀からは手が離れている。

「ぬぅおぉぉぉぉぉぉおおおお!!!」

「■■■■■■■■ーーー!!!」

槍兵の裂錦の咆哮、狂戦士の名状しがたき雄叫びが混ざり合い、英霊にしか成し得ない剣戟を実現する。その戦いに他者の介入は許されず、近寄ることすら許さない気迫を撒き散らす。


しかし、それに水を差そうという不届き者がいるとは、この場の誰もが思わぬことであった。

作品名:Fate/10 Bravery 作家名:AsllaPiscu