Fate/10 Bravely 二巻
side:Saber
日が暮れた。
占星宮で、秋理は呟いた。彼女は既にいつもの私服ではなく、群青色のローブと魔術礼装氷河の鉄杖を装備している。
「シュリー!いい加減今日は…うぉう!」
ノックもなしに入ってきたセイバーが、彼女の見事な勝負服に息を呑む。秋理はふわりと振り返る。
「ええ、セイバー。貴方の希望通り、今日は出撃するわ。星も騒いでるしね。」
秋理は、占星宮から星を仰ぐ。セイバーにはわからないが、秋理には、星の瞬きが忙しなく見える。
恐らく、じっとしていても、何かが双月邸に来るだろう。ならば、武装をして出迎えるのみ。あわよくば、脱落させてこの後の展開を有利にする。
『シュリ、ナツカとトウライは所定の位置についたみたいだ。』
「分かった、セイバー。霊体化はそろそろ解いても…来たわね。」
不意に走る一陣の風のような、針の殺気。一瞬にしてその場に現れる白き聖騎士は、油断なく剣の柄に手をかける。彼らの視線の先には、見慣れぬ形をした矛を持つ、中国風の英霊がいた。輝く双眸は理性を宿さず、ただ獲物をじっと見ている。
「■■■…」
殺気に気づいたのか、礼装であろう小さな杖を持った冬麗、両手に大量のナイフを持つ夏華もこの場に集結する。目の前の英霊は更に目をぎらつかせる。
「あれは…恐らくバーサーカーね。」
4対1でにらみ合う。それはほぼ一瞬。雄叫びを撒き散らしながら、中華風の英霊…バーサーカーが迫る。
「みんな下がれ!」
それを迎え撃つように、一歩前に進み出たセイバーが、腰の聖剣を抜き放つ。バーサーカーが力任せに振り下ろした矛と、セイバーの聖剣が激しくぶつかり、火花を散らす。
「■■■■■■■ーー!!!」
「ぐっ、重たい!」
肉薄する矛を掻い潜り、セイバーの横蹴りがバーサーカーの胸板を蹴り飛ばす。
大きく体制を崩したところに、水平に聖剣を構えたセイバーが肉薄する。
無理な体勢からの矛による防御、それでセイバーの衝撃はいなせず、もんどりうって倒れる。セイバーの追撃を体操選手じみた動きで躱すと、密着状態からの左拳を見舞わんと振りかぶる。
「Snow Freezing!」
その瞬間、バーサーカーの握られた拳が、柔らかい氷に包まれる。氷結した拳は見事にセイバーの顔面を捉えるが、柔らかく氷結した氷がグローブの役割を果たす。
「■■■!!・・・■■■!?」
追い討ちをかけようとしたところに、バーサーカーの足元を襲う秋理の氷、冬麗の熱線、そして顔面を襲う夏華のナイフ。それらに気を取られる隙に、セイバーが起き上がった。
それを確認したバーサーカーは、化け物じみたスピードで後ろに飛ぶ。距離を取ったバーサーカーは、矛を前に掲げる。
Side:Berserker
「よし、いいぞバーサーカー。宝具を使え。アウトレンジで戦えば、セイバーと小娘共を封殺できる。」
水晶玉の明かりのみが、ヨハンの工房を照らす。魔力を補う魔法薬を飲みながら、ヨハンは、水晶玉を覗き込む。それには、バーサーカーの宝具の力の一片を見て目を丸くするセイバー陣営が映る。
「思い知れ、小娘共。バーサーカーの真の力を!」
Team Saber VS Barserker
バーサーカーの手の中で、矛が光になって姿を変えていく。目を丸くするセイバー陣営の前で、矛は弓へと姿を変える。
「軍神五兵(ゴッドフォース)」。バーサーカーの持つ武器に付けられた名。かつて無双の強さを誇っていたバーサーカーに、6腕に武器を持つ軍神の姿を見た軍師が作り上げた、五形態に変形する超兵器。
これを得物としたバーサーカーは、更に勇名を馳せ、その首を刎ねられるまで、存分に戦場を駆けたという。
彼の名は、呂布。中国の歴史に伝わりし英霊である。
作品名:Fate/10 Bravely 二巻 作家名:AsllaPiscu