ACⅤ-全てを焼き尽くす暴力-
俺は機体を加速させた。敵機へ。
ライフルで弾幕を張って牽制しつつ突撃する。
敵はこちらの反応に動揺することなく、狙いを絞ろうとしているのが分かる。
しかしスロットルは緩めない。ここで緩めたら敵に狙いをつける時間を与えてしまうからだ。
恐らく奴にはここまでの俺の対応は読めていただろう・・・だが、これなら読めるか!?
《何ッ!?》
奴のACの右肩から火花が散る。俺は左腕に持たせていたパルスマシンガンのトリガーを引いたままロックして投げつけたのだ。
通常、レーザーやパルス兵器はよほど高出力のものでない限りACの内部に致命的なダメージを与えるのは難しい。しかし、それはライフルなどと同じ距離で撃った場合の事。
ましてや装甲の薄い脇下にでもゼロ距離射撃されれば、パイロットはともかく右腕は使えなくなったはず。
俺は機体をさらに加速させる。
「止めっ!」
俺が右腕のブレードを敵機のコックピットに突きたてようとしたとき、激しい衝撃が俺を襲った。機体が無理やり静止させられている!?
《引き分け・・・といいたいが私の勝ちだな》
俺は衝撃のわけを悟って愕然とした。俺の機体に関節技が決められている。右腕を脇に挟まれ、右腕どころか機体すら身動きできない。
ダメージインジケーターが右肘、右肩の損傷をけたけましく教えてきても、とても信じられない。あまりにも衝撃的だった。
《だが、強い・・・貴様のようなのがいてくれれば・・・》
なんだ?何故こいつは俺を殺さない? 俺に何を言おうとしているんだ?
《・・・全ては過ぎた事か・・・》
唐突に右腕が開放される。俺の機体は無様に投げ捨てられ、倒れこんだ。
ディスプレーに映るのは建物の間から覗く雨雲。奴の跳んだ跡だろうか、パラパラと砂が降ってきた気がした。
作品名:ACⅤ-全てを焼き尽くす暴力- 作家名:バズーカ部長