ACⅤ-全てを焼き尽くす暴力-
次第に強くなる赤い酸の雨に打たれながら、俺は機体の応急修理を行っていた。
通常の兵士とは違い、フリーのAC乗りは限定された補給所以外で補給、修理を受けることができない。
これは使い捨ての兵士である傭兵にまわす余裕はないという意味であるが、今回の<企業>ほどの規模にもなればACの予備パーツくらいまわせそうな物を・・・
つい10分ほど前のことだ。
俺が「奴」にやられて呆然としていたとき、唐突に通信が入った。
《・・・取り逃がしましたか・・・まぁいいでしょう》
この声はたしか、キャロル・ドーリーとかいう企業のオペレーターか。
《ともかく作戦目的は達成しています。おつかれさまでした》
ふと思い出した。そういえば脱出用ヘリは撃破している。もうこの戦場は企業のものになったのだ。
と、俺が帰還ルートの確認を行っていたとき、
《キャロり〜ん、聞こえる?》
突然通信に割り込んできたこの男は?
《主任?いまどちらに?》
どうやらこの男が警備隊長が言っていた<主任>らしい。
《敵のACが逃げちゃってさ〜 地下のゴミ虫共のリーダー。そのルーキー、そいつ向かわせて、今すぐー!》
主任という人間がどういう人物か大体分かった気がした。
《現状のダメージでは危険かと》
キャロルが感情を一切こめずに心配してくれているが、たぶん無駄だろう
《あ、そうなんだ・・・で? それが何か問題?》
ほらな
《了解しました。地下道までのルートを表示します。敵ACを追撃してください。》
・・・とさっきまでのやり取りを思い出しているうちに、どうにか修理は終わった。
とはいっても時間もパーツもなかったため、右腕は肘が動かず、左腕は投げつけたパルスマシンガンが銃身から破損していて使い物にならなかったため武装すら持っていない。
こんな状況で奴を追うのか・・・しかし奴のACもダメージは大きい。
俺は自分自身を奮い立たせて奴の追撃を開始した。
この時点で「何故俺にやらせるのか」を疑うべきだったのだが・・・
作品名:ACⅤ-全てを焼き尽くす暴力- 作家名:バズーカ部長