ACⅤ-全てを焼き尽くす暴力-
《・・・合流のタイムリミットをすぎました。》
レオンが残念そうに報告する。それにつられるように、残存部隊も撤退を開始した。
「ま、待ってください! 後10分、5分でもかまいません!」
私は叫んだ。父さんを置いて逃げるなど、できる事ではない。
だが、私がいくら叫んでも、誰も止まらない。物資や人員を乗せたトラックが次々とトンネルの奥へと進んでいく。私が乗っているトラックも、続いて走り始めた。
後続車両に乗っているレオンが諭すように言ってきた。
《リーダーは時間に間に合わなかったら見捨てろと、我々に命令しました。》
「それは分かってます! でも!」
私は食い下がる。父さんがこんな所で死ぬわけがない、死ぬわけが・・・
《あなたはこそ、こんな所で死ぬ気ですかッ!?》
レオンが突然声を荒げる。無線機越しに怒りが伝わってきた。
《あなたはまだ子供です。人間としても、兵士としても。しかし、あなたの我がままを聞いていられるほど、我々に余裕がないのは分かっているはずです!》
そんなことは分かってるんだ・・・分かって・・・
《代表に敗れ、それでも次の戦いのためにリーダーが稼いだ時間を、ここで無駄にするのですか!?》
そう、一刻も早くシティから脱出せねば、追っ手に補足されるのだ。でも・・・
《・・・リーダーが死んだとなれば、部隊の士気の低下は免れません。》
「・・・」
父さんが死んだ前提で話を進めるな、と言いたかったが、うまく声がでなかった。
《しかし、移動指揮車が破壊され、部隊の動かし方を知っているものは、私とあなただけになりました。》
父さんが死んだとは思えないが、部隊の中でで父さんに次ぐ指揮能力を持っているレオンが生き残ったのは不幸中の幸いだろう。無論、リーダーはレオンに・・・
《・・・私は、あなたをリーダーに推薦しようと考えています》
「え・・・?」
私が耳を疑ったその時、
《シティ側のトンネルから、ACと思われる機体が1機こちらへ向かってきます!》
最後尾の車両からの通信、父さんだ!
《識別信号は!?》
レオンがすかさず確認する。出ているに決まっている!父さんに間違いない!
《識別信号は確認できません!》
「嘘・・!?」
《機体が見えました!ヴェンデッタではありません!》
父さんの機体じゃない・・・そうか、父さんは敵の機体を奪って・・・
「俺は敵じゃない、レジスタンスの指揮官と話がしたい」
突然トンネル内に響き渡った男の声。拡声器かなにかを通した声だ。父さんの声じゃない?
《あのACからです!》
報告に対してレオンは、
《分かってる。・・・ACは丸腰か?》
《は、はい》
《よし、この先のポイントで一旦部隊を止める。各機に通達!》
《了解》
このときの私は知らなかった。彼と私と出会いの瞬間が、迫っていた。
作品名:ACⅤ-全てを焼き尽くす暴力- 作家名:バズーカ部長