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図書館戦争 堂x郁 郁記憶喪失(堂上視点)

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翌朝、共同ロビーに行くと手塚が待っていた
「堂上一正、おはようございます」
「ああ。おはよう。昨日は休めたか?」
朝の挨拶をやり取りしていると、女子寮の廊下から柴崎の声が聞こえた

「大丈夫よ!あんたは背が高いけどいい脚してるんだから!
 唯一自慢のおみ足を出さないでどうするのよ!」
「・・だって・・・なんだか自分じゃないみたいで・・やっぱり着替える!」
「もう!時間無いんだからね。教官達を待たせる気?」
「うーーー」

郁が柴崎の後に隠れながら歩いてきた
「堂上教官、手塚、おはようございまぁ〜す。お待たせしちゃいましたか?」
「堂上一正も先ほど来られたばかりだ」
「堂上教官、どうですか?今日の笠原は、渾身の作なんですけどぉ〜」

柴崎は郁の腕を取り堂上の前に押し出した
淡いピンクのAラインワンピース、丈は膝上で胸の下あたりにリボンが付いている
大きく開いた首元には、堂上が以前プレゼントしたネックレスが身につけられていた
髪は少しカールされており、化粧も普段の郁よりも少し濃いめ

堂上は郁の姿をじっと見つめたままだった

何も言わない堂上に不安があったのだろうか
郁は「・・あのぉ〜・・堂上さん? やっぱり似合わないですよね?着替えてきます」
と言って女子寮に向かおうとしたところで、堂上の金縛りが解けた
「いや・・似合ってる」堂上は郁の左腕を掴み伝えると、郁が頬を染め「ありがとうございます」と微笑み返した

「そろそろ行かないと、遅れるわよ?」と言って柴崎は堂上の掴んでいた郁の左腕を軽く押しのけ
自分の腕を絡ませ玄関に向かった
「堂上一正?」
手塚に声を掛けられ「ああ。行こう」と伝え、小牧の待っている駅前に向かった

武蔵境の駅前には、小牧と彼女の毬絵が待っていた
「笠原さん、今日はとても綺麗だね?」などと堂上に耳打ちしてくる
堂上は仏頂面のまま、何も答えない
「昨日、毬絵ちゃんには、笠原さんのこと話しておいたよ
 もちろん箝口令のこともね」
そう言うと、小牧は少し前を歩く女性三人を見つめた
「ああ。すまんな」堂上は一言小牧に伝えると、小牧はクスッと笑い目線はそのままで堂上に話しかけた
「何かあったの?昨日?」
「・・別に何もない」
「進展もないの?柴崎さんのことだから、気を使って途中で笠原さんと二人っきりになれたんじゃないの?」
「・・・柴崎がコンビニに寄ると言ったからな。公園で待ってた」
「で?」
「別に何もない。笠原は柴崎が戻ってくる直前まで寝てた」
「寝込み襲ったりしなかったの?」
「するか!アホウ!」
堂上は少し顔を赤くし隣を歩く小牧を見上げた
小牧は「はいはい」と軽く手を振り、「ほら、お姫様達を見失っちゃうよ?」と言って
堂上を手塚に促し、女性達のところに近づいて行った



午前中のショッピングが終わり、そろそろお昼に丁度いい時間になった
近くのレストランで軽く昼食をとる
デザートのケーキが運ばれてくると、郁は目を輝かせながら美味しいと言って食べていた
堂上はコーヒーを飲みながら柴崎に「この後どうするんだ?」と聞いた
柴崎は「この後は夕飯まで自由行動ってことにしませんか?」と提案してきた
「ハァ?自由行動ってなんだ?」
手塚呆れたように言うと
「折角の公休なのに二人っきりになれないなんて、小牧教官と毬絵ちゃん可哀そうじゃない?
 だから、夕飯までの間はそれぞれ自由にしましょう!ってことよ」
「それは有難いね。毬絵ちゃんとの時間が持てるのは嬉しいよ」
と言って小牧は毬絵を見つめる
毬絵も頬を赤く染め、コクリと頷く

「夕飯まで自由って、俺達4人はどうするんだ?」
手塚が最もらしい質問を投げかける
堂上も「そうだな」と頷き、柴崎の言葉を待つ
「このあと、三正昇任のお祝いに手塚にプレゼントを買ってもらう予定なんです」
「ハァ?俺いつそんな約束したんだよ!」
「何言ってるのよ。この柴崎朝子様が唐変木の弟子に貢いでもらっても良いって言ってるのよ?
 ありがたく思いなさい」 
「なんだよ・・唐変木の弟子って・・」
「あらやだ。つっこむところはそこなの?分からないなら隣にいる仏頂面の師匠に聞いてみなさい」
そう言うと、柴崎は少し氷の解けたアイスティーを優雅に飲み干した
堂上は「俺が師匠なのか?」と眉間に皺を寄せ、手塚は「すみません、堂上一正」と頭を下げた
「だったら、堂上は笠原さんと映画でも見に行けば?」
笠原さんもいいよね?と言って小牧は郁の返事を待つ
郁も「・・・ご迷惑でないのなら・・」と俯きながら答える
堂上は小牧と柴崎を交互に見た後、深いため息を吐き「分かった」と答えた