二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」

図書館戦争 堂x郁 郁記憶喪失(堂上視点)

INDEX|6ページ/19ページ|

次のページ前のページ
 



郁の病室を出てから基地へ戻る最中
堂上を含め皆が無言で歩いていた

堂上は考えていた
つい先日思い出していたことだ

俺と出会わなければ、危険な道を選ぶことは無かっただろう
俺と出会わなければ、郁は実業団のアスリートになっていたかもしれない
俺と出会わなければ、記憶を飛ばす程の苦痛に見舞われることもなかったかもしれない
俺と出会わなければ・・・・・

もう一度、郁が過去に関係なく図書隊員になりたいと思うなら
俺は全力で郁を守る
だが、逆の場合はどうだろうか・・・
過去の経緯があったから、郁は図書隊員になりたいと思ったのではないか?
あの時の三正に憧れたから、今ここに郁が居るのではないか?

そんな考えをしながら歩いていると、あっと言う間に基地に到着した
足を止め、後を振り返る
小牧、手塚、柴崎は立ち止った堂上を見据えていた

「玄田隊長と緒方副隊長に報告する
 小会議室に集合してくれ」
そう言い、携帯を操作しながら、堂上は基地内に入って行った



小会議室には、玄田、緒方、小牧、手塚、柴崎が集まり
郁の今後について話がされていた

郁の休職願いは堂上が連絡した際に玄田によって、即業務部へ回され処理されていた
現在入院中だが、意識を取り戻した為、そう長くかからず退院するだろう
実家に戻るか、寮に戻るか
休職中ではあるが、記憶喪失ということもあり、寮室の使用も許可されている

復帰したとしても、すぐに訓練やリファレンスは無理だろう
図書館内には郁を知っている利用者も多い
他人と接触の少ない書庫業務に回した方がいいと、緒方は説明した

どちらにせよ、郁または克宏からの連絡が無い限り進展はなさそうだ
このまま今日は解散するぞ!と言う玄田に待ったを掛けたのは堂上だった

「俺と笠原が付き合っていたことは、本人に伝えないでください」
「なんだ?また箝口令発動か?」
堂上は腰かけいた椅子から立ち上がり、玄田の方へ身体の向きを変え深く腰を曲げた
「申し訳ありませんが、よろしくお願します」
そんな堂上を見て、玄田は「お前いいのか?ようやっと娘っ子手に入れたのによぉ」と
言うと「はい。」と顔を上げて答えた

小牧、柴崎は何も言わず、ただ玄田と堂上のやり取りを見ていた
緒方は肩肘をつきながら「考え直せよ」と呟き、手塚は茫然としていた

玄田は「仕方ねぇ〜なぁ〜」と頭をガシガシ掻きながら立ち上がり
堂上の背中を思いっきり叩いた
「娘っ子、泣かしてんじゃないぞ!」そう言いながら、小会議室を後にした
緒方も玄田に続いて退室していった

残された小牧、柴崎、手塚は堂上が何か言うのを待っていた
「・・・そういうことだ」
ポツリと堂上が言うと、堰を切ったように小牧と柴崎が話しだした
「堂上!何が”そういうことだ”なの?
 今笠原さんの傍に必要なのは堂上じゃないの?」
「堂上教官!いくらなんでも酷いです。
 笠原が記憶無くしたからって、付き合っていた事実を隠す必要ないと思います」
「堂上さぁ・・・
 笠原さんが図書隊員になったのは自分のせいだって思ってるんでしょ?
 あの時、見計らいしなければ良かったって思ってるの?
 違うでしょ?きっかけは見計らいかもしれないけど、決めたのは笠原さんだよ?
 そんな笠原さんの気持ちも否定するの?」
「笠原は堂上教官ことすごく大切に思っているですよ?
 憧れの上官として、追いかけたい、追いつきたいと一生懸命頑張っていて
 プライベートでは、教官の彼女として相応しくなれるように努力して
 公私共にいつでも堂上教官大好きっ子なんですよ?
 ちょっとぐらい記憶を飛ばしたからって、笠原の気持ちまで否定しないでください!」

小牧と柴崎の怒涛の攻撃を受けながら、堂上は静かに眼を閉じ聞いていた
暫くして、二人が黙った
堂上は眼を開け、小牧と柴崎を見た 
「・・・笠原の気持ちを否定する訳ではない
 ただ、過去に戻れるなら、もう一度笠原に選ばせたいと思う。
 今度は”憧れの三正”は登場せず、笠原自身で図書隊員になりたいか決めさせる
 ”本を守りたい”のであれば、図書隊員になるだけが方法ではない
 笠原が判断を出す際に、”俺と付き合っていた”という事実が彼女の気持ちを惑わせる可能性がある
 俺は・・・・もう一度・・・郁に選ばせたいんだ」
「・・・そんなの自分勝手です!
 過去なんて関係ないじゃないですか?
 笠原は”ここ”に居るんです。笠原の居場所は堂上教官の隣なんですよ!」
「堂上・・・お前本当にいいの?
 取り返しつかないかもよ?
 もし仮に笠原さんが自分の意思で図書隊員になったとして
 その時、彼女の隣にいるのは堂上以外の男かもよ?」
「ああ・・・分かってる」
「本当に分かってるんですか?!」
柴崎は堂上の上着を掴み、グイグイ引っ張ると、手塚が「やめろ!柴崎!落ち着け!」と
言って柴崎を堂上から引離した

「堂上が決めたなら、もう俺からは言わないよ。
 でもね。覚えておいてね。
 笠原さんは俺にとっても大切な部下なんだよ」
そう言うと、小牧は「じゃ俺部屋に戻るね」と言って出て行った

「柴崎・・・すまんな」
まだ少し興奮気味の柴崎は、それでも冷静になろうと手塚の袖を掴みながら
ゆっくりと堂上を振り返った
「謝る相手は私ではありません。
 笠原とのことは・・・これ以上口出しはしません」
堂上は柴崎をじっと見つめ、その後に手塚を見た
殆ど黙って聞いていた手塚であったが、堂上と目が合うとポツリと話し出した
「堂上一正。もし笠原の記憶が戻った場合はどうされるのでしょうか?
 今までの会話から、記憶が戻らない可能性ばかり懸念されているようですが・・
 もしかすると明日記憶が戻っているかもしれません」
「ああ・・そうだな
 その場合は、笠原本人に俺から話す」
手塚は「話すって何をですか?」と聞き返した

「記憶の無い笠原に対して、俺がしようとしていた事、今話していたこと全てだ」

全て話せば郁と別れてしまうかもしれない
自分勝手な、傲慢な考えを他人に押し付け
郁自身の気持ちも無視し
俺自身の自己満足の為に周囲を振り回す
こんな俺を知ったら、郁は幻滅するだろう
そして俺の元から離れていくだろう

それでも・・・
それでも、郁にはもう一度、選ばせたかった