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IS  バニシングトルーパー α 001

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 頭を横に振って、クリスは苦笑しながらチェルシーの提案を断った。一口コーヒーを飲んで、少し遠い目で窓ガラスの向こうに視線を向けた。

 「毎日に自由の時間くらいは欲しいよ」
 「こうしてお嬢様の仕事に手伝っているというのに?」
 「気分の問題です。今の俺は、恩を売ってるつもりですよ」
 問いかけるチェルシーの目を見て、クリスは意地悪そうに微笑み返すと、チェルシーは口元にやや意味深な笑顔を浮かべた。

 「そうでしたか。私はてっきり、クリス様が正式契約をなさらないのはセシリアお嬢様と主従関係ではなく、恋人関係になりたいのではないかと思っておりましたが」
 「「ぷぅぅっ――!!」
 いきなりの爆弾発言に、当事者二人は盛大に吹いた。

 「そそそ、そんな、困ります! わたくしはその、いつかはオルコット家のために、その……!」
 ハンカチで口元を拭きながら、セシリアは激しく動揺した様子で顔を赤らめた。

 「落ち着いてください、お嬢様。このオルコット家はお嬢様の恋愛自由を奪うほど、落魄れてはいませんよ」
 「で、ですが……」
 頬が真っ赤に染まり、セシリアの声が段々小さくなっていく。やがて体をもじもじさせながら深く頭を伏せて、チラチラとクリスの反応を窺う。
 確かにチェルシーの言う通り、このオルコット家の経営はセシリアが自己犠牲するほど切羽詰っていない。むしろ好調と言える。そして本家のことに親戚たちは意見ができても、直接干渉はできない。
 だから将来の伴侶くらい、自分で決めても別に何の問題はない。

 「でもね、チェルシーさん。俺にも一応選択権があるのでは?」
 今度は、比較的に落ち着いているクリスの方が声を上げた。

 「あら、セシリアお嬢様に何かご不満でも?」
 「不満というか、“歩くわがまま”みたいなのはちょっとな。俺はもっと大人しくて包容力のある子がいいです」
 「あ、歩くわがままですって!?」
 怒りを滲ませた声を上げて、セシリアは逆三角形に吊り上げた瞳で睨んでくる。

 「あ、あなたみたいな字が汚くて、模型ばっかり作って、礼儀を知らない音痴男なんて、こっちこそ願い下げですわ!」
 「夜中にこっそりおやつを食べて、袋をベッドの下に捨てるやつよりマシだろう?」
 「な、なぜ知ってますの?!」
 「まあまあ、少し落ち着いてください、お二人とも」
 また口喧嘩に発展しそうな二人の間に、チェルシーは割り込んだ。クリスの机の側まで歩いて、その一番上の引き出しを開けて、一枚の紙を取り出した。

 「おい、ちょっと待て」
 「見てください、お嬢様。昨日に届いた、お嬢様への撮影依頼のFAXです」
 クリスの抗議を無視して、チェルシーはその紙をセシリアの机に置く。
 話題作りとイメージアップの一環として、セシリアは時々ファッション雑誌のモデルとしての撮影依頼を受けている。だから、この要請書自体は別に珍しくない。
 問題は、当人のセシリアはまったく見覚えがないという所にある。

 「そんなの、わたくしは知りませんわよ」
 「当然です。何しろ最初にそれを発見したクリス様は勝手に隠して、さらにお断りのメールまで出したのですから」
 「クリスが? どうしてです?」
 チェルシーを説明を聞いて、セシリアはクリスの方を見て訝しげな表情を浮かべると、彼はまるで回答することを拒否しているように、顔がそっぽを向いてしまった。

 「わかりませんか、お嬢様。あれはお嬢様の写真が誰でも買える雑誌に載って欲しくないという、男の独占欲ですよ」
 「ど、独占? 何を?」
 「何をって、お嬢様に決まってるではありませんか。それに意識した異性を悪く言うのは思春期の男性がよくなさることであり、言わば子供じみた愛情表現です。それを余裕な態度で受け止めるのが、大人の包容力というものですよ」
 「へぇ……」
 片肘を机について頬杖して、セシリアは思いっきりにやけた顔でクリスの方を眺める。
 普段からムカついたことばっかり言うけど、今は不思議と凄く子供っぽく見えて中々に可愛い。
 依然と顔を見せないままだが、そのすくんだ銀色の髪の隙間から見える耳は今。真っ赤に染まっていた。それが見れただけで、上機嫌になったセシリアは思わず鼻歌を口ずさんでしまう。
 図星を突かれると、意外と脆いヤツだ。

 「何だよその目。勝手に勘違いするなよ。あれはお前が忙しそうだから、断るべきと判断しただけだ」
 「はいはい、そういうことにして差し上げますわよ」
 「ツンデレ発言ですね」
 「信じろよ!」
 クリスの些細な弁解も、セシリアとチェルシーの前では虚しくなり、結局は勝手にツンデレで子供っぽいヤツだという烙印を刻まされてしまった。

 「ところでお嬢様。お嬢様のIS専用機は既にロールアウトしたため、受け取りに来て欲しいという研究所からの電話がありましたが」
 微笑ましい二人を見て満足そうに頷いた後、チェルシーは別の話題を切り出した。

 「そうですか。では来週の……」
 机の上にあったカレンダーを手にとって、セシリアは自分のスケジュールを確かめながら日付を決め、それをチェルシーに伝えた。

 「向こうにも、そう伝えて頂戴」
 「畏まりました、お嬢様。それと、当日の同行者はどう致します?」
 「……あっ、俺も一緒に行って、いいか?」
 かなり真剣な目でセシリアを見て、クリスはそう言った。

 「クリスが?」
 セシリアは不思議そうな表情を浮かべて、彼の目を見る。
 イギリスの国家研究所が今回セシリアのために用意したのは、新しく開発した実験的武装を搭載した完全新規の第三世代ISであり、世界中にも注目を浴びている。
 加えてその機体の運用はイギリスを代表して勝利することだけでなく、次世代機の開発にも繋がっているため、政府もかなりの期待を寄せられている。
 けれど、普段からあまりISに興味を示さなかったクリスがいきなりそんなことを言い出すなんて、ちょっと意外だった。
 思わず、変な方向へ勘繰ってしまう。

 「ダメか?」
 「べ、別に、構いませんわよ? どうしても一緒に行きたいのでしたら」
 顔を伏せてクリスから目を逸らしつつ、セシリアをそう返事したのと同時に、ファイト!と、チェルシーは心の中で二人に応援を送ったのだった。