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十七物語

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クラスの片隅に、いつも眠ってばかりいる変な男子がいる。
女は気になってちょっかいを出してみた。
「あんた、いつも眠ってるのね。なんでそんな一日中眠ってるの?」
すると男は眠そうな眼で女を一瞥し、
「眠いからだ」
と答えた。
そしてまた目を閉じる。
その後は女が話しかけてもうんともすんとも、無反応だった。
(……こいつは面白い奴がいたぞ!)
女は内心、新しいおもちゃを手に入れた子供のように喜んだ。
それからよく、眠ってる男にちょっかいを入れるようになった。



そうこうしている内に男のことが少しずつわかってくる。
男は無愛想な見た目と違って、基本的にはいい奴。音楽が好きで、趣味でギターをやっているとか。
でも眠い時はホントにダメらしく、眠っている男の鼻をこちょこちょくすぐってやったりすると本気で不機嫌そうな顔になる。
それがかわいらしく、おもしろくもあったので、女は男をからかうのをやめなかった。



二人の関係に変化が訪れたのは、文化祭のことだった。
男はバンドを組んでいて、バンドのメンバーと体育館で演奏するのだという。
クラスメートたちは仲間がライブをやるというので、当然みんなして見に行く。
女も友達と一緒に見に行った。

いつも見慣れていた体育館――――それが、まるで別世界のようだった。
むせ返るような熱気。館内は大勢の観衆で溢れかえって。壁や床に反響する大音量の演奏――――激しいドラム音、美しいキーボードの旋律、ボーカルの声、そしてあいつのギター…………。
それは、いつも眠っているばかりの男からは、想像もつかない姿だった。

信じられない速さで動く左手の指。リズミカルに弦を弾く右手の指。全身から大量の汗を飛び散らせて。
必死にギターを奏でるあいつの姿。Yシャツのはだけた胸元がセクシーで……。
演奏の途中で、あいつは笑った。バンドの仲間と目配せして。普段の男が決して見せることのない――――――そんな笑顔だった。



曲が終わると、館内は大歓声に包まれた。バンドのメンバーもあいつも、手を振って応えた。
(なんだよ…………ちょっと、カッコいいじゃん……)
その日から少しずつ、女の男を見る目は変わっていった。







二人が付き合い出したのは、高校二年がもう終わりに近づいた頃だった。
言い出したのは男の方からだったらしい。
女は相変わらず、男子たちからの不動の人気を持っていたが、この頃になるとさすがに二人の関係が誰の目から見ても明らかだったので、男子たちもみんな覚悟はできていた。
むしろそんな大方の予想から、大分遅れての交際スタートだった。

作品名:十七物語 作家名:sting