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Act.7 「Big Deal」~Kizuna~

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【やっぱり、まだ諦めていないんでしょうね、依月さん……ねぇ、ジェイス、やっぱり撃さんに伝えようよ。私、同じ女性として彼女を放っておけないよ】
「いや……この間も言ったけれど、撃くんに対しては、僕に任せてくれないか」
【でも】
「たぶん……撃くんは近くにいると思うんだ。もしかしたら、僕たちが依月さんと話しをしていることも知っているかもしれないからね」
そう言うと、肩にセイラを乗せたまま、再び正門に向かって歩き出す。
「ドルギランにシェリーがいるから、戻ろう。あいつも撃くんの行方を知りたがってるからさ」
【わかった……】
「ほら、ジャケットの下に入れ。今、ヘルメットはひとつしか持ってないからうしろに乗せられん」
真が軽くジャケットの胸元を開けると、するっと白猫はその中へ入り、アタマだけを出した。
 ファイアーブレードに戻り、ヘルメットを手にして、真は今来た道をもう一度見てから、ファイアーブレードに乗った。
 真たちが去っていくと、雑木林の奥で人影が動いた。

≪銀色の戦士、やはり姿を現しましたね……これは面白いことになりそうです≫



 その日の夜半過ぎ。
 静まり返った相模原キャンパス研究棟 の裏口のドアが開いた。
「ふぅ……」
白衣を着たままの依月だ。ずっとパソコンを見ていたら、目も痛いし、肩も凝ってくる。少し外の空気を吸おうと思って出てきたようである。
 職員用駐車場にはまだ数台、クルマが置かれているのがわかった。自分もまだ今日は帰れそうもない。この施設は「年中無休」。食堂の隣にある売店の上が「宿泊棟」になっていて、そこで寝泊まりすることもある。そういえば、自分がいる部署の男性職員も、さっき、宿泊棟に戻っていったなぁ。ぐぐっと背伸びをして、ふと空を見上げれば……
「あら、こんなに今日は星が見えていたのね」
施設の周囲は雑木林に囲まれていて、光が遮られているせいか、星も見える。相模原という地域柄、郊外へ出れば、もっと星が見えるところもある。
「あ、流れ星」
すうっと夜空を横切っていく光。あれは人工衛星ではなく、流れ星だということもすぐにわかった。あ、そういえば、もうすぐISS(国際宇宙ステーション)がこの相模原上空を通過していくのが見える時期じゃなかったっけ?
 しばらく空を見上げてから、部署に戻ろうと振り向いて、再びドアをくぐろうとしたときだった。
「うわっ?!」
入ろうとしたドアの前に立っていたのは同僚の男性、浅沼だ。
「ど、どうしたの、浅沼くん?!」
「え?自分も外の空気を吸おうかと思って……河井さんがいるとは思わなくてさ」
「びっくりしたぁ」
「ごめんごめん。驚かせるつもりはなかったんだ」
そう言うと、浅沼はポケットから煙草と携帯灰皿を取り出す。基本、建物の中は禁煙だ。タバコを取り出し、1本、くわえると慣れた手つきでライターで火をつけた。
「河井さん、ここにきて、もう何年になるっけ?」
「えーっと2年くらいになるかな。撃や遠矢たちが旅立つ前だったから……2年ね。つくばから異動してきて」
「そっか。そうだよなぁ……」
ふぅっと煙が闇に消えて行く。
 浅沼は、また別のチームの仕事に携わっているが、依月にとっては年齢も近いということもあり、よく話しをしているひとりでもある。
「あいつらのこと、自分もよく知っているけれど……」
「そっか、浅沼くんも遠矢たちと仕事、したことあるんだっけ」
「あるよー。やつらの発想は昔からとんでもねーものもあったけれど、面白かったなぁ」
もう一度、煙を吐き出すと、浅沼は笑った。
「まぁ、そういう発想を持っているからこそ、宇宙飛行士になれたんだろうけれどさ……」
「そうね」
ドアから少し離れたところまで歩を進めると、空を見上げる。
「今日はよく星が見えるな。あいつらも今頃、大好きだった宇宙を飛んでいるかな」
「だといいな。ケンカしながら飛んでるかも」
「あー、わかるわかる」
ふたりで顔を見合わせて大笑いした。
 ぐうぅっと両手を伸ばして背伸びしてから、依月は言った。
「さーて、もう少し頑張ろうかな」
「お、行きますか」
「うん。浅沼くんも適当なところで切り上げないと、キリがないよ?」
「ありがとよ。もう1本、吸ってから戻るわ。河井さんも無理するなよ」
「ありがとう」
と、互いに手を振って、依月はドアをくぐった。
 建物の中は経費節減ということもあって薄暗い個所が多いが、慣れた場所でもあるので、そのまま自分が在籍している部署へと戻った。壁にかかっていた電波時計を見て、少し考える。このまま仕事を続けても、効率が悪いかな?今日はこれで帰宅しよう。明日は休みだからとあんまり無理をするのもよくない。
「あー、でも、西原さんに何か言われちゃかな……ま、いいか。メール出しておこう」
パソコンを立ち上げてメールを手早く打ち込み、送信させると再びシャットダウンさせると、着替えてから灯りを消して、再び部署を出た。
 人気のない廊下を歩き、裏口へ戻った依月は、ふっと足を止めた。
「ドア……開けっ放し?」
開放厳禁と書かれたドアが、開きっぱなしになっている。まだ浅沼が外にいるのだろうかと思い、そのままドアをくぐって周囲を見渡す。ふと足元を見ると、携帯灰皿とライター、タバコが地面に無造作に放り出されていた。確かにこれは浅沼のものだ。それらを手にして依月は首を傾げた。
「どうしたのかしら?」
あたりを見回しても浅沼の姿はない。
 ザワザワ……と、風が周囲の雑木林を吹き抜けていく音が聞こえる。
「浅沼くん?」
暗闇に向かって声をかけてみる。だが、返事はない。裏口のドアのすぐそばに自転車やバイクなどが置かれている屋根付きのスペースがあるが、照明がチカチカと落ち着きなく瞬いている。さっきまでは切れていなかったはずだが?
「こんな時に、嫌だわ…」
恐る恐る周囲を見回すと、自分のクルマまで急ぎ足で駆け寄る。が、カバンの中にあるはずのキーが、この暗闇の中では見当たらない。近づいてもクルマのドアが解除されない!焦る、気持ちが焦ってくる。
 慌ててカバンを地面に落としてしまい、それを拾い上げようとしたとき、カバンに何か汚れがついていることに気づいた。
「なに、これ……?」
そっと触ってみると、なにか粘ついた液体状のものが手につく。掌を広げると……
「血?」
顔を上げる。暗闇に目が慣れてきて、ようやく周囲の状況がなんとなく見てとれた。自分のクルマの後ろに停まっていたのは、軽自動車。確かこれは、浅沼のものだ。そう思ってゆっくりと立ち上がり……目の前に現れた「光景」は……
 フロントガラスに、まるで「磔」にされたような状態で、両目を見開いたまま、真っ赤な液体を流した人が。
「い、や……浅沼くん?!」
それは、確かに浅沼だった。全身が血まみれであり、身体に無数の傷も見えた。そこから流れる真っ赤な血がみるみるうちに彼のクルマを覆っていく!
「きゃあああああああぁぁぁぁぁっ!」
なに、これ!なぜ、なんで浅沼くんが!
作品名:Act.7 「Big Deal」~Kizuna~ 作家名:じゅん