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Act.7 「Big Deal」~Kizuna~

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くすっと笑う。自分も最初はマーベラスを見てちょっと怖いと思ったことを思い出したからだ。
「あ、うん……」
シェリーは弱く返事をする。なんか元気がないな?
「なにかあったの?」
「ううん、なんにもないよ。ごめんね」
にこっと笑うシェリー。そっか……と、小さく返事をすると、セイラは仕事の続きに取り掛かった。
 入口のシューターが何やら音をたてる。ジェイスと撃が戻ってきたようだ。
「あ、おかえりなさい」
ふたりともあまり言葉がない。それを特に咎めることもなく、セイラとシェリーもふたりを迎えた。
 しばらく重苦しい空気が4人の間を流れていく。何を話していいのか、どこから切り出していいのか。ただでさえ、ここのところ、4人ともそれぞれがそれぞれの考えを巡らせているというのに……
 静寂を破るように、セイラはあえて明るく言った。
「ジェイス、そろそろ最上さんのところに戻らないと。パパさんたちに心配かけるわけにはいかないわ」
「あ、そうか……もうこんな時間か。撃くんも少し休まないとダメだぞ。シェリーもね」
と、ジェイスが注意を促すと、ふたりは小さく返事をした。
 ジェイスとセイラは、最上家に戻ることにした。話しをするのはあとでもできる、と踏んだからだ。
 ふたりがいなくなったコクピット。撃は着ていたジャケットを取って、片隅にあった椅子に座って深く息をする。確かに、気を張り詰めていたからか、身体が思っているよりも疲れているようだ。
「……シェリー」
「え?な、なに?」
「わりぃ、少し眠らせてくれ…なにかあったら……声、かけて」
が、次にシェリーが撃に返事をしないうちに、彼は背もたれに身体を預け、寝息をたててしまった。よほど疲れているのだろう。地球に来てから、いや、正しくはギャバンからの通信を受け取ってから、ひとりで行動していることはわかっている。なにか思いつめているような感じだ。
 相模原キャンパスの出来事が、彼自身を追い詰めているような気がしないでもない。だけど、自分には何もできない、手伝うことが出来ないとシェリーは歯痒く思ってるのだが。
 彼の胸元に光るペンダントヘッドを見て、彼女は少し顔を歪ませる。
「やっぱり同じものだよね……」
さっき、依月を介抱した時にも、彼女の胸元に光るペンダントヘッドを見た時、それが撃がしているものと同じだとすぐにわかった。なぜ同じものを持っているのかと思ったけれど、特にその時は彼女に聞くこともしなかった。そのうちにわかるだろうとも思っていたけれど、今、撃の胸元のペンダントヘッドを見て、やはり聞きたいという気持ちも強くなっている。
「あー、もう!あたし、どうしちゃったんだろ!しっかりしろ、自分!」
と、シェリーは軽く自分の頬をつねった。思いのほか、強くつねってしまったのか、直後に慌てて頬を抑える。自分の行動が少しおかしくて、苦笑いしたあとに、静かに眠っている撃の顔を見て。
「自分の気持ちを素直に言わないのは……もう、これは撃の性格なんだろうな」
と小さく呟いた。




 窓から見える青い惑星を眺めていたヴェルザンディは、自分の後方から何者かが現れる「気配」を感じた。
≪joker……?≫
不意に口にした直後、目の前に現れたjokerは軽く跪き、頭を下げる。
≪久しぶりね。元気だったの?≫
≪はい、おかげさまで。先日はお会いできなかったので、今日、改めてごあいさつをと思いまして伺いました≫
≪スカーヴィズ様から聞いたわ≫
そう言うと、ヴェルザンディは身体を起こし、ソファから足を下す。
≪しばらく姿を見ないと思っていたけれど……おまえも気まぐれな男よね≫
≪褒め言葉としてお受けします≫
表情を変えずに返答する。彼の言動には慣れている。彼女は少し苦笑しながら相手を見た。
≪まだ手に入らないの?例のモノは……≫
≪またひとり、邪魔者が現れました。銀色の戦士とは違う、もうひとりの地球人です≫
≪地球人?≫
≪この男がまた面白いと……思いましてね≫
≪面白い?≫
ニッと笑ったjokerは顔を挙げて言った。
≪過去からやってきた男……とでも言うのでしょうか。まさか生きているとは思ってもみませんでしたが≫
≪過去から……どういうこと?≫
≪まだ確定はできませんがね、過去の生き残り……だと思いますよ?≫
ヴェルザンディは、jokerの顔を見て、少し訝しげな顔をした。彼が何を言わんとしているのか、すぐにはわからなかったからだ。
≪あの時、仕留め損ねたひとりが、まだ生きているとは≫
≪まさか、あの1年半前の地球の宇宙船を標的にしたゲームのことを言っているの?≫
なんとなく思い出してきた。jokerが「気まぐれ」で提案した「ゲーム」。標的になったのは地球から飛び立ったある「物体」。自分たちにとっては、非常に興味深い部分でもあったのだ。
≪はっきりとは言いきれませんが、たぶん、そうかと≫
≪なるほど……≫
≪あの研究施設にも関係していたようで、もう少しで例のモノがあるところへ案内してもらえるかと思ったのですが……一歩手前で≫
≪おまえがそこまで言うのであれば、よほどの力の持ち主なのかしら?≫
ヴェルザンディの問いに、jokerは答えなかった。軽く顔を歪ませると、ヴェルザンディは再び窓の向こうへ視線を移す。その瞳に映るのは、青い惑星……
 何とも言えない、奇妙な「思い」。
≪joker≫
≪はい?≫
≪例のモノはかならず手に入れること。わかっているわね?≫
≪仰せの通りに≫
フッとjokerの姿が消える。
 目の前に浮かぶ地球を見つめたまま、彼女は言った。
≪私にはわからないわ……この地球が、それほど価値のあるものなのか…≫



 真っ暗な中を自分だけが漂っている。
 特殊なゴーグルを通して、遠くに見えるのは、漆黒の闇に浮かぶ青い惑星。
 左肩に痛みが走る。だが、自分がどうなっているのか、確認できない。
 かろうじて首だけを動かして、遠くに見える惑星を見ることができるだけ……
 もう、帰れないのか……あの場所に。
 滲んでくる、青い惑星。
 最後の力を振り絞り、右手を伸ばす。
 帰りたい……
 その時、手の平に何かが当たった感触があった。
 キラリと光るもの。
 だが、それを確認しようとして……



「またか……」
フッと眼が覚める。自分の周囲を見回し、ここがジェイスのドルギランの中だと再確認すると、身体を起こした。ズキンと左腕のあたりが疼いた。いつものように。あの夢を見ると、いつも。少し頭を軽く振る。あの夢を見ると、どうしても頭が重いのだ。仕方ないのかもしれないが。
 自分が居眠りをしていたコクピットには誰もいなかった。
 少し考えてからゆっくりと立ち上がると、ドアの向こうへと歩いていく。ある程度、この中の構造は把握している。もしかしたら、整備室にセイラが戻っているかもしれないし、シェリーもいるかもしれない。
 とある部屋の前に来たとき、ドアが少しだけ開いているのがわかった。思わず部屋の中を覗いてみると、シェリーの姿が確かにあった。
「おーい、シェ……」
と言いかけた撃は、聞こえてきた声に思わず息をのむ。慌てて身体を壁につけて、姿を隠すようにしてしまった。
作品名:Act.7 「Big Deal」~Kizuna~ 作家名:じゅん