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Act.7 「Big Deal」~Kizuna~

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「今すぐ、見てもいいですか?」
「了解。整備室に行こう」
撃の言葉に、ふたりは頷いた。


≪スカーヴィズ様っ?どちらへ行っていらっしゃったのですか?≫
暗闇の中からゆっくりと歩いてきたスカーヴィズに、後方からものすごい勢いでやってきたのは、ヴェルザンディである。
≪なんだ?そんなに慌てて≫
≪慌てているわけではないのですが……さきほどから姿が見えないので心配しておりました≫
≪少しな、散歩だよ≫
そう言うと、地球が浮かぶ窓の外を見た。
≪面白い見世物があったのでね≫
≪見世物?≫
≪おまえも一緒に連れて行けばよかったな。皇帝陛下にご報告したのだが、非常に面白がっておられた≫
≪……≫
ヴェルザンディは、スカーヴィズの顔を見て、押し黙る。何をどう、話しを続ければいいのか。最近、彼には恐怖心すら、抱くこともある。
≪まだまだ……チカラは及ばんな。銀色の戦士よ≫
小さく呟いた言葉を、ヴェルザンディは黙って聞いていることしかできなかった。
 着用していたマントを鮮やかに翻し、スカーヴィズは口元にうっすらと笑みを浮かべると、再び、闇の中へと消えて行く。その後ろ姿も……追いかけることはできなかった。


 整備室でコンバットスーツの確認をして、損傷具合などをチェックする。やはりかなりのダメージを受けているようで、これはしばらく使えるかどうか……セイラはそれらのデータをドルギランに送信する。銀河連邦警察を通じて、向こうの科学技術研究所へも報告しなければならない。手慣れた操作でタッチパネルを操り、それがある程度落ち着くと、彼女は言った。
「そういえば……なんでふたりは地球の傍にいたの?」
飲み物が入ったカップを手渡しながら、シェリーが答える。
「新型宇宙船とコンバットスーツのテストをしていたの」
「え?」
「気づかなかった?この宇宙船は新型なのよ。見ためは、あなたたちが使っているギャバン長官からの「超次元高速機ドルギラン」と同じタイプ」
「新型宇宙船……」
「ジェイス先輩のドルギランが旧式というわけではないけれどね。銀河連邦警察も日々、色々と試しているってわけだ。俺とシェリーは、ギャバン長官からの依頼を受けてテスト航行していたのさ。その終盤になって、本部から連絡が入って、駆けつけてみたら……」
「でも、ふたりとも、まだ候補生なんでしょ?それなのに」
セイラの言葉に、撃とシェリーは少し笑う。それから、撃はゆっくりと言葉を繋ぐ。
「俺が……志願したんだ」
少しだけ、何かを思い出すような……そんな表情で、撃は言った。
「志願?」
「ああ」
カップを手にしたまま、遠くを見つめる。セイラも作業をしていた手を止めて、視線を移す。
「俺、もともとが宇宙飛行士ってやつでね。日本人宇宙飛行士としてNASA・アメリカ航空宇宙局というところに所属していた。でも、謎の事故で俺たちが乗っていたシャトルは大破。俺とほかの乗組員たちは全員、宇宙へ放り出されてしまった」
宇宙船の事故。
 科学が進んだバード星では、今ではそう言ったことはほとんど聞かない。だが、地球ではまだまだ、開発途上にあることをセイラ達は知っている。
 でも、今、撃は「謎の事故」と言っていた。詳細を聞きたいと思ったが、それを聞く前に話は先へと進む。
「自分は、仮死状態で宇宙空間を漂っていたんだ。助けてくれたのは、ギャバン長官とミミーさん」
「長官たちが?」
「そう。もう少しで本当に死んでしまうところだったらしい。仮死状態の俺を長官はバード星へ緊急搬送してくれた。で、今の俺がここにいるわけ」
「……一緒にいた乗組員さんたちは……?」
セイラが思わず聞いてしまう。撃は、その言葉にすぐには返事をしなかった。目を閉じて、少しだけ間をおいてから首を横に振る。まずいことを聞いてしまったかと、セイラは口元に手をあてた。
「その中には、俺と一緒に乗っていた親友もいたんだ」
白い制服の胸元に、キラリと光る、青い星形のペンダントヘッドを大事そうに手で覆う。
 しばらく、何も言わず、セイラは撃を見つめる。
 たったひとり、宇宙に取り残された地球人の青年が、バード星の最新医学によって生命を取り戻し、スペースシェリフ・アカデミーへ進んだというのも、またひとつの選択肢だったのだろう。
 アカデミーには色々な出身の候補生たちが集まってくるが、地球からの候補生というのは決して、多くはない。それは、銀河連邦警察そのものの存在が、未だ地球人にははっきりと明かされていないからというものもあった。
「俺は……亡くなった乗組員や親友の分も生きたいんだ。そうあるべきなんだろうとも思うよ。だから、宇宙刑事になろうと思ったんだ。謎の事故を解明することも含めて」
と、撃が言った。彼の視線は、どこか遠くを見ている。
「今回のテスト航行で地球の傍を通過するということを聞いたからね、それで思わず長官に直訴してしまった。俺は事故以来、地球には戻っていないんだ。公式には、たぶん、行方不明のままで扱われているんじゃないのかな」
少し笑う撃に、セイラは「寂しさ」「影」のようなものも感じ取る。セイラの「能力」が、彼の感情を少しだけ、読み取った。
「シェリーはどうして……?」
「あたしは地球を見てみたかったの。それだけよ」
と、シェリーは笑った。だが、その目は撃を見ているのが、セイラにはわかった。
 宇宙刑事は「ふたり一組」で派遣されることがほとんどである。もちろん、任務によってはひとりで行動することも多い。だが、連絡係、および援護担当ということも含めて、バディを組んでいるのだ。ジェイスは、最初からひとりで地球へ行ったが、のちにセイラのように「特別任務」を背負って地球へ赴き、そのままバディを組む、ということも稀にあるのだ。
 と、シェリーが言った。
「ふたりともいい?ジェイスが目を覚ましたみたい」
「行こう」
撃はセイラの肩を軽く叩く。
 医療用カプセルのところまで戻ると、中にいたジェイスがうっすらと目を開けているのがわかった。
「ジェイス!聞こえる?」
【……セイ、ラ?】
ゆっくりと視線をこちらに向ける。
【ここ、は?】
「銀河連邦警察のテスト用宇宙船の中よ」
【テスト……うちゅうせ、ん……そうか、助かったんだ……】
「撃さんとシェリーがあなたを助けてくれたの」
【……しぇりー?ああ、あのシェリーか……なぜ、彼女、が、地球にいるんだろ……】
小さく聞こえてくるジェイスの「声」は、カプセルの外にある小さなモニターに文字となって表現されている。口元をしっかりと覆われているため、はっきりとしゃべることはできない。カプセルに内蔵された、人間の「意思」を感知する特殊システムを使っている。
【でも、もうひとりの……名前は?僕は……知らない…】
「あなたの後輩。と言っても、ちょっと年齢は年上のお兄さんみたいだけれど」
と、セイラが言うと、撃はくすっと笑う。そこは見抜かれてしまっているんだなと撃は言わんばかりの顔になった。
「俺は十文字撃。一条寺センパイ、初めまして」
【あ……】
ジェイスの目が見開かれる。あの雨の中、自分を抱き上げてくれた青年だと、ジェイスにはすぐにわかったらしい。
作品名:Act.7 「Big Deal」~Kizuna~ 作家名:じゅん