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Act.7 「Big Deal」~Kizuna~

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『ジェイスが今回、戦った相手、つまり、彼に大怪我を負わせた敵というのが、前にも地球に現れた謎の物体、謎の人物と行動パターンやその他のモノが似ているらしい。まだこちらもはっきりしたことは言いきれないのだが、シャトル爆破事故のときにあった「反応」によく似ているという分析が出ている』
「……」
視線を床に落とした撃を、ジェイスははっきりと見た。唇を軽く噛みしめているのもわかる。なにか言葉を探しているのか。
 ジェイスは画面の向こうにいるギャバンに言った。
「長官、しばらく……撃くんとシェリーをこちらで預かります。自分も今回の敵についてはもう少し探りを入れないとならないと考えていますので、なにか関連があれば」
『頼んだぞ』


 しばらく必要なことを話してから、ギャバンの姿が消えてからも、撃は顔をあげずにいた。
 言葉をかけようにもどうしようもない……シェリーとセイラはどうしていいのかわからず、その場に立ち尽くす。
「撃?」
シェリーがたまらずに声をかけた。その声に、やっと気づいたのか、彼は顔を上げる。
「あ……ごめん」
「大丈夫?」
「……うん」
ジェイスとセイラは互いの顔を見合わせた。
 撃の今の気持ち。
 ギャバンからの報告が、どれだけ彼の心を揺さぶったのだろう。何か言葉を探しているのは確かだったが、しかし、それを口にするには、心の整理がすぐにつくものではないことも想像できる。
 少し考えてから、ジェイスが言った。
「僕たちができることからやっていこう。撃くん、シェリー?セイラも僕も、今回の事件をおさらいすると同時に、この先を考えなくちゃいけないからね」
ぽんっと撃の肩を叩いて、ジェイスは言った。
「せっかくのチャンスかもしれないよ?」
「そうですね……ええ」
ジェイスの顔を見て、撃は頷いた。


 新型宇宙船の居住区にある、自分の部屋の窓から外を眺めていた撃は、ずっと……自分自身の左腕を撫でていた。この左腕は「過去に起こったことを二度と忘れないためのもの」になっている。特に人に言うこともないが。
 窓の外は、満天の星空。
「まだ……東京の近くでも、こんなに星が見えるところがあったんだな」
新型宇宙船は、東京郊外の山奥に着陸させていた。周囲は山に囲まれ、静かなものだ。
 地球に戻ってきたのは久しぶりだった。シャトルの事故以来、地球には戻ってきていない。前に、ジェイスにも話した通りだ。だが、今回、アクシデントとは言えど、こうして戻ってきたのは、何かの暗示だったのだろうか。
(誰か……自分を知っている人はいるのかな……いや、もうあの事故のことは意外と……忘れられているのかもしれない)
時の流れは早いのだから……
 自身の左腕が、少しだけ疼く。
「待ってろよ……絶対に見つけてやる……」
思っていたよりも早く、その時が来るのかもしれない。

 胸元の青いペンダントヘッドが……月明かりに照らされ、キラリと光った。


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 東京・町田の某所にある、最上家。
 真は自分の部屋に戻って、子供たちからの「手書きのメッセージ」を読んでいる。しばらく仕事を休んでいたこともあって、塾の子供たちがとても心配しているということをセイラや最上わかばから聞いた時、申し訳ないと思いながらも、とてもうれしい気持ちもあった。
「みんなに心配ばっかりかけているなぁ……」
自分自身の「本当のこと」を話せないが故の「ジレンマ」。仕方ないとは言っても、やはり若干のジレンマを感じる。
 時代が違うとはいっても、父……ギャバンはどうしていたのだろうか。
 父の子供好きはよく知っている。前に子供たちと一緒に出掛けたとき、父も一緒だったのだが、その時の様子を思い返すと本当によくわかるのだ。少しだけ聞いた話だが、ギャバンは自分自身のことを幼少のころの最上わかばや、弟の陽一には話したことはないという。結局、最後まで自分の正体は言わずじまいだったとのことだ。
 今も、わかばはギャバン……烈の本当のことを「知らない」。もちろん、真も自分のことを特に話しているわけではない。いつか、わかってしまう日、または話さなければならない日が来るだろうとは思うが……
「……真おにいちゃん?」
と、ドアの向こうから声がする。振り返ると、ドアの向こうからちょこんと顔を出しているのは、最上家の末っ子・春香だった。
「お、どうした?春香ちゃん」
「入ってもいい?」
「どうぞ」
春香がひとりで真のところへ顔を出すのはめずらしいことだ。
 シンプルな部屋の中を見てから、春香は真のそばに来て言った。
「もう、大丈夫?」
「え?なにが?」
「怪我……真おにいちゃん、怪我していたでしょ?」
「ああ、大丈夫だよ。でも、なんで僕が怪我をしたっていうの、わかるんだい?」
「んー」
なにか言いづらいのか、言葉を濁らせる。真は、春香の顔をまじっと見てから、笑った。
「なにかあったのかな?パパさんから聞いたとか?」
「ううん。あのね、おにいちゃんがおうちを飛び出していくところを見たんだ……ほら、この間の授業の途中で、いきなり飛び出していったから、ママが驚いて追いかけていったの」
「ああ……」
うっすらと思い出してくる。今回の「大けが」のモトになった「きっかけ」は、相模原市某所に現れた、謎の物体のことをセイラからの情報で知ったからだ。
 町田のとなり、神奈川県相模原市にある宇宙科学研究本部(JAXA)という場所へ急行した。ここは、前々からジェイスたちも気になっていた場所ではあったのだが、なんとなく後回しになっていたのは事実だ。
(いて……)
ズキッと頭の奥が痛む。なんだ、これ?
「それで……なんとなくだけど……んー、おにいちゃんが怪我をするんじゃないのかなって思っていたんだ、はるか、すごく心配だったの」
自分の頭の奥に聞こえてくる、春香の声に、真は現実に引き戻される。
 そして……気づいた。
 そうだった……春香の言葉に気づかされた。
 パパさんこと最上誠一の娘ってことは、少なからずとも、彼女にも「サイキック・トルーパー」の血が流れているってこと。それは、春香だけじゃない、兄である太一にもあることだ。彼女たちは気づいていないかもしれないが、超自然の能力がどこかで働いていても不思議ではない。意識していても、していなくても。
「すごく、怖かったの。真おにいちゃん、大丈夫かなって」
少し俯いて言葉を濁した春香。真は、ぽんっと春香の頭に手を載せた。
「ありがとう。心配してくれて。でも、大丈夫だから」
「ホント?」
「ああ」
真が笑うと、春香もやっと笑顔を見せてくれた。無邪気な子供の笑顔は、とても好きだ。真の「子供好き」は、やはり父親からの影響もあるのだろう。最上家で「学習塾の講師」をしているのも、ある意味、間違いではないのかもしれない。
作品名:Act.7 「Big Deal」~Kizuna~ 作家名:じゅん