【ヘタリア・腐】きっと見つかるGGm8!【西ロマ】
ウキウキで先程貰った装備を着れば、物理防御と魔法防御の数値がぐんと上がる。また強くなってしまったと笑みを浮かべ、ロマーノはフード付きマントのようなローブを翻した。
ふんわりと広がるそれは、白い厚みのある布地で出来ている。フードにはマニアに好かれる猫耳がついており、これが人気の秘密なのだと以前日本が笑っていたのを思い出した。
「これ被るのはちょっと恥ずかしいな……」
女の子キャラが装備しているのなら可愛らしいだろうが、生憎自分は大人の男キャラだ。人通りのある道に戻ると、人気の装備に人目が集まる。それは人気の装備に関してなのか、男キャラが装備していることへの好奇の視線なのか分からず、羞恥に震えるロマーノは不服ながらフードを深く被り顔を隠して歩くことにした。
「かっわかわえー!」
町を歩きながら、これからどうしようかと考える。この装備があるし、一人でクエストもいいかもしれない。そんな事を考えていると、背後から声を掛けられる。
聞き覚えのある台詞に思わず振り向けば、そこにはベルギーとオランダが立っていた。今日はどれだけ知り合いと会うのだろう。
「久しぶりだな。お前等もコレやってたのか」
ゲーム内でも一緒とは仲がいいことだ。自分とスペインのことは棚に上げ、ロマーノはこっそり胸を暖める。昔オランダがスペインから独立した時のことは今も心の傷となっているようで、口にしなくとも兄のように思っていたオランダが今も自分達と関わってくれることが嬉しい。
その一番の原因であるベルギーに感謝しながらも顔には出さず、ロマーノはいつものように呆れたような表情をしてみせた。
「その装備かわええ~、ほんまかわええ~」
「猫耳やのうてウサギ装備せーま」
「……会話のキャッチボールしろよ、お前等」
挨拶も無いとはどういうことだ。変わっていないようで嬉しいが、また自分が突っ込み役かと肩が落ちる。
(大体ボケ多すぎじゃねーのか?)
アメリカはボケ、シーランドもボケに近い。スウェーデンも何処かズレてるし、ノルウェーには期待していたもののボケにボケを被せるタイプだった。
勿論ベルギーは天然で、オランダはベルギーと一緒に居る時のみボケを被せてくる。それは身内に気を許しているということなのだろうが、ロマーノにとって貴重な突っ込み役が減るのは非常に困る事態だった。
一度イギリスに会い全て一任するという楽を覚えてしまったせいか、また全部を突っ込むのかと思うと気が重い。面倒な仕事に溜息をつきつつ、それでも兄達に会えたのは嬉しいので逃げ出すことは無かった。
「えーなぁ、スペインに貰ったん?」
「そういやスペインの姿が見えんな」
二人同時に同じ人物の名前を口にする。お決まりになった台詞だが、新しい装備で少し浮かれているロマーノは怒ることなく説明した。
「スペインは仕事でいねーし、この装備は他の奴からの貰いもん」
「へー、そうなん~」
フードについた猫耳を触りつつ、ベルギーが可愛い可愛いと繰り返す。猫好きな姉のお気に召したのは嬉しいが、微笑ましいものを見るような周りの視線が恥ずかしいのでそろそろ止めて欲しい。
そこで彼女のストッパー・オランダに妹を止めろと視線を送ってみる。すると真面目な顔で頷き返し、ぎゅうぎゅうと抱きついていたベルギーをロマーノから引き剥がしてくれた。
「お兄ちゃんのけちー!」
「ロマーノが困っとるやざ」
一応機嫌を損ねたくないのか、文句を言いつつも離れてくれる。姉は可愛いのだが恥ずかしがり屋のロマーノには辛いことも多く、こうしてオランダが止めてくれるのは非常にありがたい。その行為をスペイン相手にもやってくれないだろうかと密かに考えていたりもするが、イチャイチャしたい時もあるので言い出せないでいたりもした。
「ロマーノ、これ」
「? 何だ?」
ぽこぽこと怒りながらも己の腕に抱きつくベルギーを放置し、オランダがロマーノにアイテムを差し出す。柔らかい茶色の毛並みのそれは、装備品のようだった。
「頭装備……か?」
装備箇所には「頭」と入っている。毛皮の帽子か何かだろうか。アイテムの説明文には『ふっかふか』としか書かれておらず、効果もパラメーターも分からない仕様だった。
(呪いのアイテム、じゃねーよな)
オランダがスペインにはともかく自分にそういうアイテムを渡すとは思えず、ロマーノは特に気にせず装備してみる。するとステータス表示が目まぐるしく変化し、画面の視線がぐっと下がった。
「かっ……かわええええええ!」
目の前でベルギーが歓喜の声を上げる。だが混乱するロマーノの耳には届かなかった。
先程までベルギーの頭頂を覗けた自分の視線が、何故か彼女の腰よりも下になっている。これは一体何だとパニックを起こしていると、ぐいっと持ち上げられ体が中に浮いた。
「……予想以上にちぇーな」
ぽんぽんと背中をあやすように叩かれ、驚きで固まった顔を動かす。すぐ近くに兄の顔が見え、オランダに抱き上げられたのだと気付いた。
「な、なんっ……」
何が起きたんだと動かした自分の手の小ささに、思わず顔が引きつる。視線を下げればぷらぷらと浮いている足も小さく、ステータスを確認すれば「小人」という状態異常を示すアイコンが灯っていた。
「これは状態異常・小人になる代わりに、魔法威力と詠唱スピードが上がる装備やざ」
「先に言えよコノヤロー!」
怖かったじゃねーかと怒り、小さくなった手でオランダの顔をペチペチと叩く。とはいえ確認した魔力はいつもの一・五倍ほどに上がっており、更に詠唱スピードが上がるというなら中々いい装備だ。小人のステータス異常は物理攻撃のダメージが二倍というものだが、元々当たったら死ぬという物理防御の低さなのでそこまでマイナスではない。
ロマーノが頭から伸びている謎の二本の毛皮を触りつつオランダからアイテムの説明を受けていると、じっとこちらを見つめていたベルギーが堪えるように唇を噛んだ。
「かわええけど……でもっ、駄目えっ!」
オランダに抱かれたままのロマーノに頬擦りをし、その装備を外してくれと懇願する。日頃のほほんとしている彼女の懇願にぽかんとしていると、ベルギーはオランダにキッとした顔で向き直り文句をつけた。
「それ装備したら、猫耳フード被れないやろ」
「ならもっと別のええケープをやるわ」
猫耳に拘るベルギーの苦情に、オランダはしれっと別装備を勧める。
猫耳は恥ずかしいので、別にいい装備が貰えるのならそっちがいい。オランダはレアアイテムを結構所持しているので、かなりいい物が貰えるだろう。
そんな事を考えていると、ベルギーはロマーノの頭から出ている毛皮を引っ張り、ぽこぽこと怒った。
「お兄ちゃんはロマーノに兎耳装備させたいだけやん!」
……今、何と言ったのか。
摘まれていないもう一方の毛皮を触り、画面の視点を一人称視点から背後からのカメラ目線に切り替える。そこに映っているのは、オランダの腕に抱かれる垂れた兎耳の帽子を被った幼子だった。
(こ、これは……)
作品名:【ヘタリア・腐】きっと見つかるGGm8!【西ロマ】 作家名:あやもり