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こらぼでほすと 厳命6

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「細胞異常の治療が終わるまでという期限付きで。その後は、お任せします。」
「そこからなら、ただの風邪とかぐらいだから、任せてくれ。」
 今回の症状に関してだけ、と、区切りはつける。細胞異常がなくなれば、そこからは普通の健常体だ。わざわざ、上司様にクスリを所望する必要はない。



 女房とドクターの話し合いなんぞに付き合うつもりのない宿六のほうは、喫煙できる場所に移動していた。地下の一角に、それ専用の部屋を用意している。喫煙者もいるからのことだ。過去、寺の女房が滞在している時に亭主が顔を出して、目の前でスパスパしたもんだから用意されたのだが、そこまでの傍若無人なのはいないので、喫煙者が集う憩いの場と化しつつある。そちらには、先客が居て、悟浄の顔を見て、「こんにちわ。」 と、挨拶はしてきた。
「ああ、そうか。おまえも喫煙者だったな。」
「それほど、ヘビーじゃないですけどね。お久しぶりです、悟浄さん。」
 紫煙を吐いてヘラヘラと笑っているのは、ニールの実弟だ。ここで吸ってもいい、と、実兄は勧めるのだが、ドクターからキツく注意されているから、遠征している。
「ママニャン、どうだ? 」
「見舞ってやってくださいよ。俺とじゃ会話もないし退屈してるみたいだから。」
「俺ともないぜ? 」
 悟浄だって、これといって会話はない。まあ、適当に天候の話ぐらいはするが、それぐらいだ。大人組は、それほど会話が弾むわけではない。
「俺よりはマシでしょ? 俺の顔を見たら、「遊びに行け」とか「休暇を楽しめ」 とかしか言わないんだから。」
 三日ばかり、滞在しているが、実兄が口にするのは、そんなことが多い。俺は邪魔なのか、と、邪推したくなるような言葉の連発で、どうにも進展がないから、適当に喫煙を理由に逃げ出している。
「そら、言われるだろうな。みんな、言われてるぞ、それ。」
 子猫たちにも、同じように勧めていた。自分のことに関わらず、休暇を楽しませたいからだ。
「それで? 」
「ま、実際、ママニャンが完全にダウンしてる時は、適当にキラたちが連れ出したりはしてたよ。せつニャンは拒否してたけど。」
 それでも刹那だってキラたちが連れ出してはいた。意識もはっきりしていない親猫の傍に居ても仕方がないという時だ。 ティエリアも同じようなものだった。
「俺も出かけたほうがいいんですか? 」
「好きにすればいいさ。別に、四六時中、付っきりの必要はないだろ? 」
 一日ぐらいの外出は、休暇なんだからすればいい。適当に顔を出して滞在するぐらいでいい、と、悟浄が説明すると、ロックオンは、ほっとした顔になった。
「なんだよ? ママニャンと一緒は息苦しいってか? 」
「はははは・・・ああ、まあ。いろいろとムカつくこともあるし・・・でも、今更な話だし・・・あっちも息苦しいんじゃないですか? 俺が居ると寝てばかりです。」
 ロックオンが部屋で映画を見るなり雑誌を捲っていると、実兄はクースカ寝ている。ここでタバコを吸って戻ると起きているから、そういうことなんだろうな、と、思っていた。だが、実際は違ったらしい。ああ、まあなあーと悟浄は苦笑する。
「そりゃ、寝るだろう。おまえがいるんだからさ。」
「え? 」
「なんだよ、知らないのか? あいつ、身内が傍に居ると安心して寝れるんだ。居ないと不眠症になるから、ハイネが同居してるぐらいだぜ? せつニャンたちが組織へ戻ったら、しばらくは眠りが浅くて寝不足になるから、年少組かハイネが同じ部屋で寝てるわけ。」
「あれって・・・うちのダーリンがくっついていたいからじゃ? 」
 寺で滞在している時は、ほとんど刹那は、ニールの隣りで寝ていた。それは、刹那が希望していると思っていたが、それも違うらしい。いやいやとニカニカと相手は左手を横に振る。
「それもあるんだろうけど。ママニャンが寝られないからもある。・・・だから、おまえが居て寝るのは当たり前。」
 かかかか・・・と笑って、悟浄は自分のタバコに火を点ける。悟浄は、ほとんど、その光景を目にしていないが、ハイネから聞き及んでいる。子猫たちが帰って数日間は、ハイネが、脇部屋から、ちょいと外へ出ていると、目を覚ますのだ。催眠導入剤を服用していても、眠れないからのことらしい。坊主は、清々しいくらいにスルーをするから、ハイネが同じ部屋で早寝させられていた。トダカは、適当に晩酌に付き合せて寝かせていたし、各人それぞれ、何かしらの対処はしていたのだ。なんだかんだと文句は言っているが、ハイネだって黙って付き合っている。じじいーずは、ニールが心配だからに他ならない。
「はい? 」
「だから、おまえの顔があれば、ゆっくり寝られるんだろう。今のところ、体力回復には寝てるのが一番らしいからな。」
「・・・寂しがり屋って、そういうこと? 」
 ロックオンは、へ? と、不可解だ、と、いう顔で首を傾げる。誰かが傍に居ると安心するなんて、どこの子供だよ? と、内心で実兄にツッコミだ。
「・・・・あいつ、どっか壊れたんだと思う。なんていうかさ、今までのことが全部パアァになっただろ? それも死んだと思ってたら生きてて、それで復帰は出来なくて・・・子猫たちは、また再始動が確定しててさ。それでも死ねないっていうのは、かなり精神的にしんどいじゃないか? グルグルして、しばらくはおかしかったこともあるし・・・だから、そういう寂しがり屋さんだ。」
「・・・あ・・そういうこと・・・」
 あの時に、ニールは、どこか心が壊れて、そのまま生きてきたのだろうと思っていた。それが、さらに悪化したらしい。そう考えれば、あの表情も受け入れられる。あれは、ライルを見て縋ろうとしたのだ。ただ、外面はいいから、素早く隠したのだと気付いたら、余計にムカッとはした。実弟に、なんの遠慮があるんだよ、とは思う。
「おまえのダーリンはコミュニケーションが不得手だけどさ。そういうことは説明しておけよ。なあ? ロックオン。」
「説明はしてくれてんだとは思う。おかんは寂しがり屋だから、傍を離れるなって何度も言ったからさ。」
 刹那なりの説明は、そういうものだったが、悟浄の説明で、ようやく辻褄が合う。ロックオンが見ていたニールは、外面のものだ。ここ三日間の様子からすると、どこか不可解なものは感じていた。それが、はっきりした。例えるなら、シャツのボタンをひとつずらして嵌めているような感じだ。当人からは、見えないが、他人からだとわかる。そんな感じの違和感だ。実弟のことを気にかけているのが外面のほうだ。実弟が居なくなると目が覚めて、途方に暮れているのが、内面のほうだとしたら、随分と細切れな睡眠を取らせていたことになる。トダカが言うのも、そういうものだ。甘えさせてやってくれ、というのは、態度で、どうこうするのではなくて、ただ傍に居てやればよかっただけだ。そんなこと、わかんねぇーよ、と、タバコを灰皿でもみ消して、たはぁーと息を吐く。
作品名:こらぼでほすと 厳命6 作家名:篠義