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こらぼでほすと 厳命7

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 言い辛いことを尋ねた。世界を憎んだのだろうとは思う。その原因が、独りになったことだとしたら、ライルのほうが対応を誤ったことになる。
 遠い目をして、実兄は 「世界が、ではなくて、人間が全て憎かった。・・・・だから、できたんだ。」 と、静かに口を開いた。人間の存在全てが憎くて堪らなかったから、人には言えない仕事ができた。殺すたびに、ざまぁみろ、と、思ったから仕事が辛いこともなかった。そこまでは口にしなかったが、ライルには通じる。
「俺が戻ってたら、ふたりして、ここにはいなかったな。」
「・・・いや、俺は、おまえが戻ったとしてもいなくなっただろう。だから、気にするな。」
 それぐらい人間というものを憎悪したのだと、ニールは内心で呟いた。ライルですら、それを止めることはできなかったはずだ。だから、ライルが悪いわけではない。どちらも子供だった。自分のことで精一杯だったのだから。
 ベッドに腰を下ろして、ニールの額にかかる前髪をかきあげてやる。そこには、ふたつのピーコックブルーの瞳があるが、ひとつは動かない。
「もう、独りで、どこにも行くなよ? 俺はいるんだからな。」
「もう、行けないな。俺には、たくさんの足枷がついてるよ。それを引き千切ってしまったら、俺じゃなくなる。」
 あの時にはなかったものが、ニールの足に枷としてついている。それを引き千切って逃亡したら、何が起こるのか想像するのも億劫になる。受け取ってしまったものが、ニールの枷となった。たぶん、逃亡しても捕まってしまうだろう。どこにも逃げ場がない。強力な枷だ。
 失くすのが残念だと思う気持ちがニールにもある。それぐらい、今の生活は普通で穏やかなものだ。
「それに、案外、俺は、この足枷が気に入ってるんだ。」
「そうかそうか、それはいいことだな。俺は、あんたを愛してる。これは手枷だ。外して逃亡したら、ただじゃ済まさない。」
 髪をかきあげて、ニールの両の瞳を覗き込む。心に刻みつけるように、言葉にする。そうすると、ニールはほんわりと口元を緩める。
「・・・はいはい、わかってるよ。」
「俺にも返事は? 」
「ライル、おまえのことを愛してるよ。だから、おまえもいなくなったら、ただじゃ済まさないからな。」
「了解、肝に銘じておくよ、兄さん。」
 独りで生きて壊れている兄が愛しいと思う。それぐらい情の深い人間なのだ。マイスターたちが慕っているのも、深い愛情を傾けていたからで、そこから溢れるものは受け取らなかったから、枷にはならなかった。だが、今は違う。受け取ることでできた枷があれば、一人で無茶をすることはない。そう思うと、ライルも安堵する。
「なあ、俺からも質問。刹那のボキャボラリーって、なんで、あんななのさ? 」
「・・・あいつ、最初の頃、スタンダードが上手く喋れなくてさ。元々、無口だったし・・・それで、俺が適当に気付いて世話してたら、あんなことに・・・」
「それ、改善策とかは? 」
「・・・うーん、ないような気がする。でも、目で訴えるから、それは慣れで解るぜ? 」
「慣れるのに、どのくらいかかった? 」
「三ヶ月くらいで、日常生活に支障はなかったと思う。」
「三ヶ月? どんだけいちゃいちゃしてたんだよ? 」
「あいつが実働部隊に馴染むまで、同室だったんだよ。訓練も、俺と組むことが多かったし。」
「それで、兄さんは刹那に手を出すとかは? 」
「ねぇーよ。俺はノンケだって常々、言ってるだろ。」
「でも、あんたさ、亭主持ちで間男がいて、さらに自称恋人までいるぜ? それで、ノンケって言うのもおかしかねぇ? 俺よりモテモテじゃんか。」
「・・・・モテてないと思う。」
「でも、ハイネって、兄さんとキスするよな? 」
「あれは冗談だ。だいたい、それで言うなら、俺、鷹さんにも虎さんにもキラにもやられてるよ。」
「なに? そのハーレム。」
「代わってやるよ、ライル。俺のフリして仕掛けて来い。」
「あははは・・・いいなあ。今度、やってくる。あ、なんなら、俺、レクチャーしようか? 男同士もいいもんなんだぜ? 」
「・・・・いらない。」
「双子なのに性癖が違うってのも、おかしなもんだよな。お義兄さんなんか、すっごくそそられるのにさ。」
「うちの亭主はやめとけ。殺される。」
「お惚気? 」
「本気で嫌いなんだよ、あの人は。・・・・そういや、あの人だけは枷にはならないな。」
「なんで? 」
「逃亡しても放置してくれるからさ。・・・・くくくく・・・ほんと、性別以外は、いい相手なんだけどなあ。」
「意味がわかりません、お兄様。」
「とりあえず、三蔵さんにはやるなよ。」
「へーへー。」
 ちょっと寝る、と、ニールが目を閉じると、ライルはベッドから離れる。だが、そのままソファに座って、クロスワードの続きに取り掛かる。この距離でいれば、寝られるのだと言うなら、付き合うしかない。小刻みな睡眠で、余計に疲れたらしいから、今日は部屋から出ないつもりをしている。暇を潰すものはあるし、床で出来るストレッチをやっていてもいい。刹那も、よくストレッチだのは、ニールの傍でやっていた。つまり、そういうことだったのだ。



 ヴェーダに無事、到着したキラたちは、ティエリアと合流し、システムの立ち上げを始めていた。連邦軍が接収に来る予定が判明した。ほぼ、それまでに隠すべき場所の改装は終わる手筈だ。
「新しい理論? 」
「ああ、イオリア・シュヘンベルグがブラックボックスに隠していたデータが公開された。それを元にしたMSの設計を始めている。さすがに、組織のほうで四機を作るのは時間が足りないから、俺の分は、ここのファクトリーで作成させる。」
「それ、電力供給量とかでバレない? 」
「隠した部分は、独立した電力を使用するから問題はない。旧いMSは、リペアして地球や、こちらのドックに配置する。」
「なるほど・・・どんどん進化しちゃうなあ。僕のも、そろそろ考えないといけないね。」
「きみのは、プラントとオーヴの合作だろ? キラ。あちらも、新しい理論は続々と展開されているから、俺たちのMSと同じように作り変えていけるはずだ。」
「そうだね。僕らのは動力が最大の武器だから、機動性を引き上げるだけでも、連邦のMSとは互角にはなるはずだ。」
「各システムをインストールして調整するなら、一週間もあれば可能だろう。」
「その後、刹那のところへ顔を出すつもりなんだけど、ティエリアは、どうするの? 」
「俺もドックへ戻る。刹那を直接に助けられないが、フォローはできる。・・・・キラ、おまえ、大丈夫なのか? 所在不明はマズイだろう? 」
「ああ、そっちは大丈夫。プラントにダミーを用意してるんだ。現在、キラ・ヤマトはプラントで活動中。」
 地球側は、キラの所在をきっちりとチェックしている。何かしら、こそこそと動かれたら厄介だから、監視はされている。ただ、プラントだと、その活動も制限されるから、キラがダミーと摺り替わっていても解りづらい状況になる。プラントは基本、コーディネーターしかいない。そこで地球側のナチュラルな人間が活動すれば、逆に監視されるのは連邦のエージェントのほうだ。
「でも、プラントのMSで来訪されると、トレースされる。」
作品名:こらぼでほすと 厳命7 作家名:篠義