図書館戦争 堂郁 あなたに逢いたい
まずい!このままでは非常にまずい!!
遙を放置すれば、ボロが出て、何かしら問い詰められる可能性がある
一旦、離脱した方がいいだろう・・・
俺は「休憩時間、大丈夫ですか?」と切り出し、郁が「あ!もうこんな時間!教官!」と慌てて堂上の腕を引っ張る
堂上は「ああ」と答え伝票を持って立ちあがった
「あの!割り勘でお願いします!」と勢いよく立ちあがった俺は堂上に向かって告げると
右手を上げて「イヤ、構わん。犯人確保に協力してもらったからな」と言ってレジに向かっていった
会計が終わり、俺と遙は礼をすると、曽祖母さんは「教官、私の分払いますよ?」と財布を握りしめていた
「上官が部下に飯を奢っても問題ない」と告げると、「いつも奢ってもらってますから!」と引く気はないようだ
堂上は頭をポンポンと叩き、「次はお前に奢ってもらう」というと「・・・分かりました。絶対ですよ!」と
決着がついたようだ
*
4人は図書館入口で別れ、俺達は噴水前のベンチに腰掛けた
「郁ちゃん可愛いぃーお嫁さんに欲しい!」お持ち帰りできないかな?とまたもや物騒なことを言い出す
「アホか!大体お前は口が軽すぎるんだよ!」バレたらただじゃ済まないぞ!と遙に忠告する
あっそうか・・・と一旦遙は考え始め、手をポンと叩き、隆を見上げた
「ねぇ〜兄貴。もし郁ちゃんと堂上さんが一緒にならなかったら、私達って存在しなくなるのかな?」
過去が変わったら、未来の私達ってどうなるのかな?と今更不安になったみたいだ
「事前に説明があっただろ?
この時間軸で起きた出来事は少なくとも未来に影響する
ただ、根本的な事象は影響は出ないハズだと言っていただろ?」
隆は研究員の説明を思い出していた
『時間を飛躍する際は、身体に多少の付加がかかります』
『過去から未来への持ち込みは出来ません』
『過去に己の存在をあらわす類のモノは、決して残さないでください』
『基本的に、接触は控えてください』
『流石に出会った事実を記憶から消すことは出来ませんが、若干未来に影響することが考えられます』
『なるべく行動は控えて、極力問題を起こさないように行動してください』
運命を変えることは出来ない
もし仮に俺達と出会ったことによって、多少のズレが生じても
遠回りした結果、本来の道筋に辿りつく
「だから俺達が”存在しない”ことはない」
遙の頭をポンポンと叩き、「分かったか?」と聞くと、遙はコクリと頷いた後 うーんと唸り
話しを続ける
「でもさ、”接触は控えろ” ”問題は起こすな” って言われてたけど、これって既にヤバくない?
もう接触しちゃったし、捕り物しちゃったし、調書作成時に名前書いちゃったよね?
記録が残るってことじゃない?」
大丈夫なのかなぁーと心配し始めた
調書に記述した際の名前は本名だが、住所は事前に指定されていた場所を記述した
これは、何か問題が発生した際の手段として、指示を受けていた
「名前ぐらいは大丈夫だろ?住所だって指示された場所だ
戻ったら膝詰め説教を受ける覚悟は出来てる」
母さんに叱られるよりはマシだろう・・・
ふぅーと息を吐き「もういいだろ?」と言ってベンチから立ちあがり、遙に「寒いから中に入ろうぜ」と声を掛けると
先程リファレンスを申し出てくれた黒髪美女が「あら?」と近づいてきた
「捕り物兄妹はっけぇーん」と微笑みながら隆と遙の前に立ち「んーー」と右手の人差指を顎に添えて兄妹を見比べていた
「あのぉーー」と俺は声を掛けると、遙は「うわっ!美人さんだ!」と言って喜んでいる
「まぁありがとう。ところであなた達、今日笠原と一緒に昼食とったのよね?」
教官も一緒だったハズだけど・・と隆に向かって話し始めた
「はい。近くの喫茶店で。堂上さんにご馳走して頂きました」
「そう。私あなた達に少し興味があるのよねぇー」どう?今夜一緒に夕食でも?と突然のお誘いを受ける
遙は「きゃっ!嬉しい!兄貴行こうよ!」とノリノリだ・・・
俺の危険察知能力がフル稼働して赤ランプを点灯している
いや・・・まずいだろう・・これ以上の接触は・・・
大体、この女性さっきから俺達兄妹の顔をガン見している・・・
「えっと・・・折角のお誘いなのですが・・」と丁寧にやんわりと断ろうとしたところ
「図書館の入口に18時でいいわよね?」と言い残して「それじゃ」とスタスタ来た道を歩いて行った
オイ!俺の意見は無視か!
がっくりと肩を落とすと、遙が俺の腕をポンポン叩き、うんうんと頷く
俺は眉間に皺を寄せ、遙を睨みつけた
作品名:図書館戦争 堂郁 あなたに逢いたい 作家名:jyoshico