図書館戦争 堂郁 あなたに逢いたい
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一日目の失敗を反省し、二日目は武蔵境から電車に乗り、新宿、渋谷、原宿・・・
一応観光客らしく見て廻ったが、奈何せん人が多すぎる・・・
二人ともグッタリとしたまま、客室に戻り時間を確認した
「まだ時間あるな・・どうする?図書館いくか?」
遙はシングルベットの上で、ゴロゴロしながら「うーん。お昼寝したい」と脚をバタバタさせている
「ん。じゃ俺行ってくる」
隆は再びホテルを出て、武蔵野第一図書館に向かった
図書館の外壁をグルッと廻っていると、奥から野太い男性の声が多数聞こえる
訓練中だろうか?外からでは中を伺うことは出来ない。
仮に敷地内に入ろうとしても、警衛係に門前払いされるのがオチだ
−−−見学してみたいなぁー
「あら?それじゃ案内するわよ」
声の先を振り返ると、柴崎がカメラを持ってにっこりと笑っている
隆は口元を抑え、え?え?と慌てていると
「ダダ漏れよ。あなた。」と言って、軽く隆の口元にある手を指さす
「そんなところも笠原に似てるのねぇー」
ニヤリとしながら「さ!行きましょ。時間ないから急ぐわよ」と隆の腕を掴みグイグイ引っ張り歩き始めた
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通用門を抜け、図書館を通り過ぎ、屋外訓練場まで連れてこられた
近くのトラックでは、数十人が重を小脇に抱え走っている
その中心で声を張り上げて指示を出している人物を見つけた
−−−あっ堂上さんだ
先頭集団と思われる中に、茶色い髪の線の細い人物が一生懸命に走っている
茫然と見入っていると、柴崎はカメラを構えシャッターを切った
「何を撮ってるんですか?」
「図書隊の広報で使用する写真を撮ってるのよ」
良化隊との抗争は銃火器を使用し、激しい攻防を繰り広げられている
特に図書特殊部隊は最前線へ駆り出される
”守るべきもの”を胸に抱き、己を鍛え切磋琢磨し続ける
だが、利用者の中には図書隊が銃器を扱うことを批判する声もある
広報誌はそんな利用者に向けたメッセージも含め、配布されている
「本田兄、シャッター切ってみる?」
はいと柴崎からカメラを渡され、ズーム機能やシャッタータイミングを確認する
隆はファインダーを覗き込み、スイッと堂上の方へ向けた
丁度走り込みが終わり、皆がグランド内でしゃがみこんでいる
堂上の近くに郁が近づき何やら小言を言われているのだろうか?
郁の頭がショボンと項垂れている
隆は思わずシャッターを切った
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柴崎にカメラを返した後、軽くお礼を言い立ち去ろうとすると、
「あれ?柴崎と隆くん、何してんの?」と郁が近づいてくる
「んー広報用の写真を撮ってたのよ。本田兄はさっき見つけて拉致してきたの」
拉致ってあんた・・と泥まみれの郁が柴崎を軽く睨みつける
「いえ。俺も興味があったので。見学できる機会なんて中々ありませんよ」
柴崎さんに感謝してます。とニコリと伝える
「それならいいけどさ、今日は遙ちゃん一緒じゃないの?」
「あーー午前中動き廻って、今ホテルで昼寝中です」
疲れちゃったんだね と郁が話していると、「笠原!集合だ!」と堂上の声が響く
「はい!」と答え「またね」と手を振りながら、郁は堂上の元へ戻って行った
「明日、堂上班は公休日なのよぉー」
へ?だから何ですか? 目をパチクリさせて柴崎の顔を見る
「笠原とデートしない?」
「ハァーー!?」
「明日帰るんでしょ?どうせなら記念にね。遙ちゃんは堂上教官とがいいかしら?」
うふふっと笑う表情は、魔女そのもの・・
あーー初対面の時に彼女に感じた危険察知は、曽祖父母から受け継いだのだろう
曽祖父母も苦労したんだなぁーーと他人事のように感心していた
「お膳立てはしてあげるわ」
そうね・・と指を顎に乗せ目をパチクリした後
「吉祥寺にある井の頭公園を案内するって言うのはどうかしら?
ジブリ美術館も近いし、デートには持って来いよぉー」
「・・・・・」
恐らく・・・いや絶対に!拒否権はないのだろう・・
隆はコクリと頷き「よろしくお願いします」と呟いた
*
待ち合わせの時間を確認し、隆は遙の待つビジネスホテルへ向かった
室内に入ると、遙が懐中時計を眺めながら溜め息を吐いていた
「どうした?」
「うん・・・明日帰るんだよね・・なんか寂しくてさ」
もう二度と逢うことはないんだよ?兄貴寂しくないの?と隆に掴みかかる勢いで話す
「元々俺達は”逢えなかった”んだ。それが”逢えた”だけでも幸せと思うしかないだろう?」
それにさ・・と話を続ける
「俺は沢山話が出来たし、年齢的にも俺らと変わらないだろ?
曽祖父母という観点からじゃなくて、本田隆個人として接触できて良かったと思うよ」
「そうかなぁーー」
まだグルグルと考えている遙を他所に、隆は思い出した!と声を上げる
「明日、俺達ダブルデートだ!」
「何それ?」
「俺と笠原さん、お前と堂上さん。井の頭公園でダブルデート」
何言ってんの?と遙は首を傾げる
「柴崎さんが計画してさ、俺達明日帰るから餞別代りらしいぞ」
ふーん・・でも郁ちゃんとのデートが良かったかも・・とブツブツ言うが
隆は無視し「飯行こうぜ!」と声を掛けた
作品名:図書館戦争 堂郁 あなたに逢いたい 作家名:jyoshico