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【デジ無印 番外】 危機

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草花の女王と呼ばれる薔薇の様な姿をした妖精型デジモン。胸元には永遠の美しさと強さを約束された証である宝玉「ティファレト」を身に着けている。
必殺技は電気を帯びた棘の鞭でどんなに狂暴なデジモンでも手なずけてしまうソーンウィップや鞭の切っ先で敵を仕留めるローゼスレイピア。
無数のバラの花に包まれて破壊されるロゼモンの究極にして禁断の誘惑、フォービドゥンテンプテイションだ!』
「すごい。究極体に進化した!」
「かっこいい~!」
「これが、ゴマモンたちの究極体!?でもなんで究極体に進化したんだ?」
「わかりません。もしかすると、太一さんたちが力をくれたおかげかもしれません!」
唐突に現れた四体の究極体を前にして、敵は低く唸る。
そして、グレイソードを一番近くにいたプレシオモンに突き立てようとした。
「ソローブルー。」
瞬間、辺り一帯を深い悲しみが襲った。その深さに、オメガモンの必殺技を操る敵でさえも、動くことができなかった。
そしてプレシオモンの上から現れたホウオウモンが大きく羽ばたき、強大な炎を飛ばす。
「クリムゾンフレア!!」
この攻撃で、初めて敵が倒れた。攻撃は続く。
「ハイメガブラスター!!」「ローゼスレイピア!!」
この二撃をうけ、確実にダメージをくらっているのがわかった。だが、それで倒せたわけではない。猛攻が始まる。
アポカリプス、アルティメットストリーム、サンダークラウド、インファニティーアロー、セブンズヘブンズ。もはや使えない必殺技はないかのようだ。しかし、四体の究極体デジモンはやられない。子供たちが諦めていない以上、負けることはない。
(う・・・ゥウぅ・・うウ。)
「?」
(鵜ウうぅぅ卯うゥゥうぅゥぅゥ雨ぅ。)
「!?なんだ?この呻き声は。」
「この声、コイツが出てきた時にも聞こえた・・・。」
(クる死居・・・く羅イ、化名しイ、クっ手やル。膳ブ苦ッテやル)
「何か、喋ってる?」
(来ッテ死前ば、狂シく鳴クなる)
「苦しい?何がそんなに苦しいんだ?」
(ゼんブ、句ッ手殺ル!)
悲痛な叫びだった。なぜこのデジモンがそんな苦しみを抱いているのかわからないが、その苦しみの大きさは知ることができた。
突然、視界が暗転した。と思ったら今度は白く染まった。
「な、なんだァ!?」
「もしかして、あたしたち食べられちゃったの!?」
「いや、そんなことはないはずだよ。」
「せや、わてらはまだ負けておまへん。それなのに飲み込むということは無理でっしゃろ。」
「じゃあ、一体ここはなんなのかしら?」
「ここは、あのデジモンの心の中よ。」
「心の中?」
「あのデジモンの心の中にある悲痛な思いが具現化し、私たちを取り囲んだのです。」
「なるほど、それでさっきあんな声が・・・」
「納得している場合じゃないよ。どうやってここを抜け出すのさ?」
濃霧のような白い世界に取り囲まれた子供たちとデジモンたち。やがて、霧が晴れたように視界が開けた。
「ここは・・・」
「はじまりの町?」
そう、それはファイル島にあった、はじまりの町であるようだった。
「でも、なんか違う。」
「ええ。なんか、とても暗くて寂しいわ。」
「なんか、気味悪いところだなぁ。」
そして地面に降り立った。やはり、そこははじまりの町であるようで、はじまりの町ではない場所だった。
「ここは、一体どこなんでしょう。」
「ホウオウモンたちはここがどこかわかる?」
「いえ。私たちにもここがどこかまではわかりません。」
「ただ、ここの空気はものすごく寂しさに満ち溢れているわ。」
「寂しさ?」
「さっきあのデジモンから伝わってきた寂しさと同じものだよ。」
「となると、あのデジモンはここから生まれてきたのでしょうか?」
「多分そうやと思いますわ。」
辺りを見回すと、デジたまが落ちている。本当に、はじまりの町そっくりだ。近くに落ちていたデジたまの一つにヒビが入った。
「見て、生まれるわ。」
そして卵が孵った。デジモンアナライザーで調べた光子郎が話す。
「あれは、ププモンですね。」
「ほかにも生まれるみたいだ。」
そして、たくさんの幼年期デジモンが生まれてきた。すると、遠くから地響きが聞こえてきた。
「見て!」
「あいつ!」
「ダークティラノモンだ!」
ダークティラノモンは、まっすぐこちらに向かってくる。そして、生まれたばかりの幼年期デジモンが次々と踏み潰されていく。
「ひどい・・・!!」
「なんてことを。」
「おい、やめろ!!」
「無理だよ。ここは、あいつの心の中の景色なんだ。」
「そんな・・・」
「やっぱりここは、あの謎のデジモンが生まれてきた場所・・・なんでしょうか。」
突然、周囲の景色がめまぐるしく変わる。昼から夜へ、夜から昼へ。生まれたてのデジモンが、デジたまが。幾日も幾日も同じような光景は繰り広げられた。時には、ワルもんざえモンが加わっていることもあった。
子供たちがその光景に耐え切れなくなりそうになった時、同じようなことが繰り返されていた日々に異変が起こった。
ダークティラノモンが、ワルもんざえモンが怯えている。その理由は誰の目にも明らかだった。
あいつがついに生まれてしまったのだ。あの呻き声のような音を立てながら突然現れ、これまで自分たちを殺してきた二体のデジモンを冷たく見下ろす。
逃げる間もなかった。背中を向けた瞬間、ダークティラノモンが飲み込まれてしまった。そして、命乞いらしき行為をしているワルもんざえモンも一飲みにされた。まさにあっという間の出来事だった。
その後、このはじまりの町はこのデジモンの手によって崩壊した。
「こういうことだったんだ。」
「え?」
「恐らく、あのデジモンはここで生まれて、そして殺されてしまったデジモンたちの怨念のようなものの集合体なんですよ。」
「怨念の集合体・・・」
「この町で理不尽に命を奪われたデジモンたちの魂が、縛られてひとつになって誕生してしまったんです。」
「かわいそう・・・」
「こんな話、前にも聞かなかったかしら・・・。」
「ああ、覚えているよ。アポカリモンだろ?」
「はい。あのデジモンも進化の過程で滅んでしまった怨念の集合体でした。でもこのデジモンは・・・」
「進化どころか、生きることすらできなかったデジモン・・・。」
「きっと、あのデジモンはアポカリモンのような復讐心はなく、ただ悲しくて苦しんでいるだけなのかもしれません。だって、はっきりとした思考を持つ前に死んでしまったのですから。」
「じゃあ、その衝動ですべてのデジモンを飲み込もうとしているのか?」
「きっとそうなのでしょう。」
「そんな・・・どうして・・・。」
あまりにもかわいそうだった。アポカリモンの言葉が頭の中に蘇る。
『なぜだ!?なんの権利があって我々の命はこの世界から葬り去られなけらばならい!?生きたかった!!』
この叫びに今は答えを出すことはできない。いや、もしかすると一生答えを出せないかもしれない。ただ、黙り込むことしかできなかった。
「倒さなきゃ・・・」
「ミミちゃん?」
「あのデジモンを倒さなきゃ!だって、魂が縛られてるってことは、新しく生まれ変わることもできないってことでしょ?」
「ええ。もしかすると、そうかもしれません。」