東方~宝涙仙~ <其の壱拾(10)~弐拾(20)>総集編
氷のビームは刀を直撃し、チルノの手から、刀を覆うまで、さらにその先の壁までを氷でを一直線状に凍りつかせた。完全に凍りついた刀は大ちゃんに届く寸前で止まった。
「大ちゃんを傷つけるな…。大ちゃんに手をだすな……。大ちゃんに怪我させたら、アタイがお前を殺してやる…」
にじんでいた涙が零れ落ちる。そして氷は一瞬にして儚く割れる。さすがに刀ごと割ることには失敗したものの、なんとか大ちゃんへの一撃を避けた。
「よく邪魔できたものだ。そこは褒めてやろう。ただ、動くと弾を飛ばす約束だったな。氷妖精、闇妖怪」
チルノとルーミアの側にあった白い線がバラバラに散らばり弾となった。チルノはすでに白い線の横にはいなかったが、ルーミアは白い線に囲まれていた為逃げれていなかった。
「闇妖怪にしか当たらんか、まあいい」
「南壁『ネパーレル・ローツェ』…」
ルーミアの周りに薄い結界が張られた。
「ありがとうかぼちゃん!」
覚えているだろうか、かぼちゃんがレミリアと戦った時に発動したあの結界を_
白い弾は薄い結界にあっさりと阻まれた。
「ハロウィンキサマまたしても…」
「ルーミアちゃん…この傷に2つのスペル使用は体に負担が…かかる…から……」
廊下の光は着実に消えかけていく。壁に光の弾が着いている間はスペルカードを使用しているという判定になるらしく、かぼちゃんにも限界が近づいてきていた。
やがて光は消え、元の廊下に戻る。
「かぼちゃん!大丈夫なのかー!?」
「う、うん…。命に別状は…。でも結界はもう……」
「もう結界なんか張らなくていいから、大丈夫だから!かぼちゃん無理しないで!」
「大ちゃん大丈夫か!?」
「大丈夫だよ。それより…ありがとうチルちゃん」
「大ちゃんに手を出す奴はアタイ例え友達でも許さない!」
2つのグループでそれぞれのやり取りが行われていた。4人とも命に別状はないものの、敵ネペルは暗闇に溶け込み再び絶影となった。
「お前ら4人を甘く見ていたな。殺す気はなかったがここまで絡んでしまうと後々厄介だ。殺させてもらう」
暗闇で姿を消した絶影がチルノ達に話しかけた。
「卑怯者!姿を現せろ!」
チルノが見えない敵に向かって怒鳴る。それに応じるように暗闇に赤い残光が現れた。
「いざ」
その合図とともに赤い残光は今までよりもはるかに速いスピードで左右に飛び跳ねる。赤い残光に加わり、先ほど同様の白い残光も残り、廊下には白の残光がスパイのアジトの赤外線レーザーのように張り巡らされた。
白い残光は躊躇うことなく弾幕へと変わり、チルノ達の方向へ飛び交った。
「ダメだ!この量はアタイのパーフェクトフリーズじゃ凍らせきれない!」
「私なんて敵の弾止めれないし…」
「ルーミアもだー…」
「私も…もう結界は……」
この時4人はすでに諦めていた。紅魔館に勝手に侵入した自分たちが悪い。みんなそう思い、白い弾を受け入れ当たる覚悟をとった。
廊下が一瞬だけ真白く光に包まれた。
チルノも、ルーミアも、大ちゃんも、かぼちゃんも、全員目を瞑っている。
「………」
「………え?」
「あ、あれ?弾…当たらないぞ?」
全員はおそるおそる目を開けた。そこには一面の暗闇しか広がらない。
「弾幕は!?弾幕はなんで消えたんだ!?」
チルノが辺りをきょろきょろと見渡す。
チルノの後ろには鳥の羽を生やした人影がひとつあった。
「綺麗な弾幕が撮れましたね。あやや?これはこれは珍しい、なんでこんな所に妖精が?」
▼其の壱七(17)へ続く
Touhou Houruisen episode17
「記念に1枚どうですか?」
ー紅魔館・廊下ー
「綺麗な弾幕が撮れましたね。あやや?これはこれは珍しい、なんでこんな所に妖精が?」
※射命丸 文(しゃめいまる あや)
二つ名:伝統の幻想ブン屋
能力:風を操る程度の能力
チルノの後ろに立つ影はブン屋こと、射命丸文だった。
「しゃ、射命丸さん!?」
思わず大声を上げて驚く大ちゃん。
「どうもどうもー、文々。(ぶんぶんまる)新聞の取材に来ました。射命丸です」
どうやら文は紅魔館爆発事件の取材の為誰かに聞き込みをしようと紅魔館に侵入したところ、チルノ達にたまたま出くわしたようだ。稀少な弾幕の撮影もできたとのことで満足げであるようだ。
「それより、なんでこんな所にいるんですか?」
「それが……」
4人は簡潔に文に今までの状況を説明した。
「なるほど…すなわちここにはまだ私には見えていない者が潜んでいる、と…」
「ええ、でも姿を消したっきりでてこなくなりました…」
「まさかアタイ達を置いて逃げたかー!」
「それはそれでいいじゃないチルちゃん」
「アイツは倒すまで許さない!」
チルノが興奮気味ではあるが、他は落ち着きを取り戻し始めた。文の登場は全員にとって心強いものとなる。
「とりあえずここは相手が現れないうちに引き下がりましょう」
文が指揮を取り4人に引き下がるように提案をする。チルノは悔しそうだが一応4人とも賛成し、やむを得ずここは退却することにした。
4人が先に退却したのを見送り、文は再びさきほどの弾幕の飛び交っていた方向を向いた。後ろからの奇襲がない事を確認すると、開けて4人を追い始めた。まるで通学する子供を見守る保護者のように。
4人に追いつきそうなところで文は立ち止まった。いや、後ろからの気配に止められたという感じだ。
「キサマ…さっきの発光した物はなんだ」
誰もいなかった暗闇の向こうから声が聞こえる。
「猫だましのアイテムか?」
その声は徐々に近づいてくる。
「あなたが大妖精さん達の言っていた…」
分は後ろを振り向き敵の姿を確認しようとした。しかしその姿を捉えれたれたのは一瞬だけで、例の赤い残光を残し敵は消えてしまっていた。
ガギンッ
という音が静寂な廊下にこだました。
「なっ!?」
「おぉ、早い早い」
やはり文に声をかけていたのはネペル・ダーブレイルだった。ネペルの刀の刃が文に向いている。だがその刀は落ち葉型の扇と交差し、攻撃を確実に防がれている。
「見切れたのかキサマ…」
「早いですねぇ、あなた」
「ちっ…」
赤い残光が後ろにバックステップを踏むように伸び、ネペルと文の距離が会いた。
「次は斬るぞ」
ネペルの挑発に文は反応を見せない。お互いが暗闇の中の相手の目を見つめあっているかのようなほどに緊張が走る。
そんな中先に攻撃をしかけたのはネペルだった。壁を蹴り左右に飛ぶことなく直線に残光が文を襲う。
「早いっ!」
ネペルの刀が振られ文を斬った。
しかし感触がない、手ごたえがない。
「……ですが、やはり私のほうが早いようですね」
文は迅速に間合いを詰めるネペルの後ろに回り込んでいた。
「そんなバカなっ!私より早く…早く動いただとッ!?」
作品名:東方~宝涙仙~ <其の壱拾(10)~弐拾(20)>総集編 作家名:きんとき